第349話 ティティ、ライアンに提案する
翌日。
ティティは、ライアンとブライトと馬車に乗っていた。
ルミエール、ヒース、そしてブリアは薬草研究の為に、城に残っている。
ヒースはティティのお供をすると最後まで粘っていたが、ルミエールに首根っこを捕まえられて引きずられていった。
いよいよ領地に帰る日が近づいている為、ハッカサユリ草の研究にますます勤しむらしい。
もちろん自領に帰ってからも研究はされるのであろうが、違う領の研究者の視点も多くあったほうがいいということなのだろう。
ブリアも今日は研究に勤しむらしく、そちらに付いていった。
ブリアも超希少なハッカサユリ草の研究は気になってたよね。
ヒースと違って、研究好きそうだし。
私に付き合わせてごめんね。
それにしても。
帰る日にち決まったんだなあとぽつりと呟いたら、当初の予定よりも大幅に遅れているとルミエールに睨まれてしまった。
私?私のせいか?と、ちょっと首をすくめてしまった。
いや、それにしてもだ。
それだけ有意義な出来事がたくさんあったということだろう、うん。
<ものはいいようだな>
足元のスヴァが心話で呆れたように呟いた。
なんだよ。それも色々な視点って奴だろ?
今日のお出かけには、スヴァもテルミニーネもついて来ている。
スヴァは城に残って本を読みたいと言ったが、商会や商業ギルドとの交渉がある時には、ぜひついて来て欲しい。
的確なアドバイスが必要だからねっ。
私が余計な事を言わないように、とめて欲しいのだ。
<自制するつもりはないのか?>
<あるよ! あるけれども! つるって言ってしまった時に、フォローが必要かなっと>
<やれやれ>
そう呟きつつも、ついて来てくれるからスヴァ大好きだよっ!
テルミニーネは、腕に巻きついてこっくりこっくりと居眠りだ。
冬に向かいつつある季節だ。
眠いんだろうな。
温かい部屋に残っててもいいよって言ったけど、ついて来るってきっぱり言われてしまった。
<あるじさまと、いっしょにいたいのー>
そう言われたら、強くは言えないっしょ!
まったく可愛い奴め!
そんなわけで、3人と魔物2匹が本日の外出メンバーである。
ティティは向かい側に座ったライアンに目を向ける。
「ライアン様、ローブ着てきてくれたんですね」
「ええ。これでよかったでしょうか」
「バッチシです」
ティティの隣に座るブライトも頷いている。ローブの意味を分かってくれたらしい。
「最初、冒険者ギルドに行きましょう。その時に、ライアン様の冒険者登録をすませます」
「わかりました」
「それで相談なんですが、ライアン様のフルネームで登録は目立ってしまうので、避けたほうがいいと思うんです。行く先々で、騒ぎ立てられるのはいやでしょう?」
そう登録する名前については予め話し合っておかないとなっ。
ただでさえ、美人さんで目立つのに、英雄様ってばれたら、活動しにくいからなっ。
「ええ」
よし。了承得られたなっ。
「なら、ライで登録しませんか? ただのライなら、普通に過ごせると思います」
それでも美人さんだから、騒がれるとは思うけどなっ。
それは今日みたいにローブで誤魔化すしかないな。
「ただのライ」
あ、真顔で繰り返された。
言い方まずかったかな。
やっぱライだけじゃ、いかにも庶民ぽくてだめだったか?
フォローしようと思って口を開きかけたティティだったが、すぐに口を閉じる事になった。
なぜなら、にこっとライアンが笑ったからだ。
うお! 眩しい!!
「いいですね。私は、ただのライです」
「え、ええ」
不意打ちの攻撃はやめてほしいぜっ。でもいいもの見れた!
本人はこちらの反応に構わず腕を組んで、すごい納得したように頷いている。
なんだろうか。
何がそんなに嬉しいのか。
まあ、いいんならいいけど。
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