第34話 歯は大事!
30分後。
目的の薬草を手に入れたティティはほくほくで、街へと引き返していた。
その前に、腹が減ったので、屋台で買った焼き鳥を食べた。続けて食べても飽きない。
また買おう。
「なんだ、もう帰るのか?」
「ああ、目的の物も手に入れたし、それに何より欲しかったイミルの葉を手に入れたからな。今日はもういいや」
「イミルの葉。ああ、口の中を清潔にしてくれる葉だな」
「そうそう。これを噛むと口の中がスーとしてさっぱりするし、虫歯になりにくいんだよ」
店でも売っているが、割とどこでも生えているので、自力で確保したかったのだ。
これも例にもれずに、前よりも探しにくかったが、何とか見つかった。
これで、今日からしばらくは、虫歯の心配はしなくてよいだろう。
「本当は歯ブラシが欲しいんだけど、結構するんだよなあ」
「我には経験がないが、虫歯とは激痛を伴うらしいな」
「そうなんだよ! すっげえ痛いんだよ!」
「ならば、値段にかかわらず、早めに手に入れたほうがいいのではないか?」
確かに。歯磨きをして、このイミルの葉と併用すれば、歯の安全は守られるだろう。
「そうだな。あの痛みは2度と体験したくねえからな。よし! 歯ブラシ買うか」
「余程の痛みなのだな。ならば、買うがよかろうよ」
歯ブラシは日用品なのに、少しお高めだ。
素材にこだわらなければ、安めの歯ブラシもあるのが、やはり馬の毛のものが一番良い。
もう一度言う、歯は大事なのだ。
「スヴァ、お前の分も買わないとな」
途端、スヴァが嫌な顔をする。
「なんだよ。しっかり磨いてやるぞ?」
「不要だ。自分でやる」
「できるのかよ。その身体で」
「その時だけ、人化する」
余程、ティティに世話になるのが、いやなようだ。
ティティは率先してやりたいのだが、本人の気持ちは尊重しなければならない。
「そんな無駄口を叩いてないで、急ぐぞ」
スヴァが先立って、走り出した。
「あ、待てよ」
どうやらこの話題は終わりらしい。
そんな話をしているうちに、街の入り口まですぐのところまで来ていた。
ハンクはどうやらいないようである。
ティティは冒険者ギルドカードを見せて、街へと帰って来た。
夕方というには早い時間だ。
薬草は亜空間に入れてあるから、しおれることはない。
冒険者ギルドに行くのは明日で構わないだろう。
今日薬草が早めに取れたら、元々早めに帰ってこようと思っていた。
なぜなら、リッシュの古着屋で、刺繍の材料を買おうと思っていたからである。
「よし、まずはリッシュの店に行ってから、歯ブラシを買いにステラの店にいくぞ!」
歯は大事です




