第334話 ティティ、ポコペの店を楽しむ
「こんにちは~」
と挨拶しながら入ったのは、この前にも来たお店、ポコペの店だ。
思ったよりも安かったので、絶対また来ようと思っていたのだ。
「はい、いらっしゃい」
おっとりと答えてくれたのは、白髪を頭のてっぺんでお団子にした、目が開いているかわからないほどの皺くちゃなおばあちゃんである。
にこにことした顔がキュートである。
このばあちゃんがポコペっていうのかな。少し面白い響きだけど、可愛いよなっ。
「この前ここで買ったお菓子、おチビたちがとても喜んでました」
「そうかい。それはよかったねえ」
「はい! 今日もおチビたちのお土産を買いに来ました。後、弟にも買って行こうと思って」
「そうかい。ゆっくりと見て行っておくれね」
ばあちゃんはそういうと、椅子に腰を掛けた。
この店のよいところは、催促されずゆっくりと見れるところである。
目的のものが決まっている時は、店員さんが聞いてくれると早く買い物が済んで助かるが、どれにしようか楽しく選んでいる時は、放っておいてほしいものだ。
その点、このばあちゃんはその見分けが上手い。
今日はゆっくり選びたいのを、わかってくれているようだ。
「さて、どうしようか」
スヴァは入り口のところで座ってついてこない。
食べ物を扱っているからだろう。
まったくよくできた相棒である。
テルミニーネは腕に絡んだまま微動だにしない。
どうやら寝ているようだ。
うん。自由だね。
注意もされないし、このまま見て回ろう。
ブリアは今回同じようにお菓子を吟味している。
今は私たち以外店にいないし、護衛は一旦中断してもよしだよっ。
自分用に買うのもよしっ。
あ、この前もブリアは、自分用にこっそり買っていたっけ。
そうだ、ブリアの部屋で食べたお菓子美味しかったな。
うん。お菓子は正義だっ。
うんうんと頷いていると、ブリアが尋ねて来た。
「ティティは今回はどんなものを買うの?」
「うーん。日持ちのするものですね。そして少しで甘く感じるもの」
長持ちする甘いもののほうが、院長先生もご褒美として使いやすかろう。
「難しいわね」
「ああ、それなら、こんなのはどうかねぇ?」
ティティたちの話をききつけたのか、ばあちゃんが候補を示してくれた。
出してくれたのは、砂糖菓子である。
半透明なでこぼこした砂糖を煮詰めたような小さな星のようなお菓子。
ほとんど白色だが、中にはピンクや緑の粒が交っている。
「わああ。可愛い」
「これはコンフェという砂糖菓子だよ」
「おいくらですか?」
「この瓶に一杯で銀貨3枚だね」
「安い!!」
結構大きな瓶に沢山入ってる。
これはおチビたちが喜びそうだ。
「ここ数年は、ブラックシュガーが豊作でね。安く作れるのさ」
そうか、魔王が討伐されて魔素の均衡が上手く行ってるんだな。
7年前にこの地に来た時は、あんなにわさわさブラックシュガーは育っていなかった。
魔素も濃くなりすぎると、成長するのが難しいのかも。
うん。私とスヴァの死は無駄じゃなかったとわかって嬉しいな。
「買いですね! くださいな!」
「はいはい、毎度」
これはばあちゃんに聞いちゃったほうが早いか?
「後、おすすめはないですか?」
「そうだねえ。これはどうだい?」
ばあちゃんがまた菓子を出してくれた。
「落甘と言ってね、豆を粉にして砂糖と煉り合せたものを乾燥させたものだよ」
「わあ! これも色々な形がありますねえ!」
「それが楽しいのさ」
花のもの。動物をかたどったもの。魔物か?って思うものもある。
「こちら50個でいくらになりますか?」
「おや、沢山買ってくれるんだね。本当なら銀貨5枚だけど、そうだね、銀貨4枚でいいよ」
「ありがとうございます。ではコンフェと落甘を4セットずつください!」
「おやまあ!」
ばあちゃんの目が一瞬まんまるになった。
それから嬉しそうに頷いた。
「すぐに用意するね」
「お願いします」
「たくさん買ったのね」
そういうブリアも、ばあちゃんに同じものを少量ずつ頼んでいたのを知っている。
「はい。もうここに来るのが当分ないかもしれないので。孤児院の分と、自分たちの分と、国守さまの分ですね」
他で砂糖菓子を買おうと思ったら、きっと倍以上する。
この前来た時も買ったし、後は焼き菓子を買えれば十分かな。
亜空間に入れておけば、重くないし。
少し出費が痛いけど、甘いものは癒しだからね!
今日は焼き菓子買いに行く暇はないから、絶対ここを発つ前に、絶対買う。
あ、砂糖自体も買っておくかな。
それはスローター商会に頼もうかな。
安くしてくれるとよいな。
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