第332話 ティティ、ボルトに怯える
「今、なんて?」
「は?」
「今、なんておっしゃいました?」
どうやら、口から願いがもれていたらしい。
「ええと、とてもよくできているので、これに色をつけたら、更に完成度があがるだろうなあって思っただけです」
なんかボルトの顔が恐いよ!
私なんかまずいこと言った?!
<言ったといえば言ったな>
スヴァが足元でそう表する。
なにそれ。どういうこと!?
私にわかるように言ってよ!
「まさにそうですね! これから作る商品は色を付けましょう!」
ティティの心情を置いてきぼりに、ボルトのテンションは上がっていく。
ちょっ!
「いえ! 待ってください! 塗料って結構しますよね? 色を塗る事に寄って、値段が上がってしまうのでは?! それは避けたいです!」
「そうですね。そうなりますか」
ボルトはそこで顎をさする。
値段があがって、平民が安易に買えなくなったら、いやだよ!
「なので、そう、できれば、色がないものと、色付きと両方作ったら、いいかなと! 裕福な方たちはきっと、見目も気にすると思うので」
苦し紛れにひらめいたことをそのまま口にする。
「なるほど! わかりました!」
ほっ。よかった。私としては、平民の子供たちに遊んでもらいたいんだよ。
「後、何かお気づきになったことはございますか?」
ずいっと身を乗り出すボルトが恐い。
後? そう言われてもなあ。
「そうですね~」
急に言われたってすぐにアイデアなんてでないよ!
そんなに期待するような目で見ないでよ!
「うーん。どうせだったら、立体的なものを作っても面白いかもですよ?」
「というと?」
うーん。平面なパーツ遊びから発展させて。
「例えば小さなお家を作って、更にそこにミニチュアの家具をつくって、好きなように配置して遊ぶとか。女の子とか好きそうです。もちろん、ちゃんと文字でその家具の名称を小さくてもいれてください。そうしないと勉強になりませんからね」
遊びのなかに学びをいれるのだ。読み書きを覚えれば、仕事が増える。
「素晴らしい! そのアイデアもらいます!」
諾の返事をしようとしたところで、ブリアからの待ったが入った。
「お待ちください。それは商業ギルドの新たな登録か、もしくは既存の登録の修正が必要になるかと思います。ティティの保護者であるルミエールもいない今、ここで取り決めることは難しいかと存じます」
一瞬ボルトがちっという顔をした。
<お主は学ばぬのう。商人の前で、むやみに考えを垂れ流すでない>
面目ない。
「今お話ししたことは持ち帰らせてください。よく検討してから、お返事致します」
「‥‥かしこまりました。お返事お待ちしております」
これ以上ここにいると、更にへまをしそうなので、引き上げよう。
商品の代金を支払って、早々にお暇する。
ボルトは未練たらたらだったが、何とか振り切った。
商人怖いなあ。
ティティは相変わらず、アイデアダダ洩れです(笑)




