第328話 ティティ、自分の手は小さいと自覚する
そんなこんなで、馬車にはヒース、ブリア、ティティ、ライアンと満員だ。
詰めれば、ティティが小さいから、ブライトも乗れるが、彼は笑顔で断り、御者台だ。
まあ、スヴァも、テルミニーネもいるし、これでブライトまで中に乗ったらきついか。
「少し、相談したかったのになあ」
城へと引き返す道すがら、ブラックシュガー畑を眺めながら、ぽつりとつぶやく。
「スラムのチビたちがここで働けるようなアイデア、考える暇なかったから、ブライトに相談も何もないか」
ライアンの件で結構時間をとってしまった為、ブラックシュガーの砂糖工場の見学は見送りになってしまった。
「ティティ、貴女の身体は一つしかないのだから、仕方がないわ」
「そうさ、小さなレディ。それにスラム街の子供たちのことは、この地の領主様が考えるべき問題だ。もちろん、よいアイデアがあったなら、進言するのはよいと思うけどね。無理はいけないよ」
ブリア、ヒースが、そう気遣ってくれる。
「はい。わかってはいるのですが、どうもああいうおチビたちを見ると放っておけなくて」
なんかできればと思ってしまう。
<それはお主のよいところではあるが、すぎるとよくない。見極めが肝心ぞ>
スヴァもティティの膝の上で戒める。
<今できなくても、将来できる時に、すればよいのだ。其方はまだ先があるのだからな>
<そうだな。わかったよ>
そうだ。ここに来るのが最後ではない。その時に改善してなければ、またその時に。
自分の手は小さいから。
自分ができる範囲で頑張る、しかないんだよなあ。うん。
でもなあ。いつまたここに来れるかわからないよなあ。
来れたとしても、砂糖工場見学できるかわからないし。
ティティは、馬車の窓の外のブラックシュガー畑を未練たらしく見つめてしまう。
「小さなレディは、頑張りすぎだ」
「そうですかね?」
自分ではそうは思わないが。
とはいえ、そう見えるなら、その忠告はありがたく受け取る。
「わかりました。またここに来た時までの宿題にしておきます」
「宿題ね。ティティらしいわ」
「宿題。忌まわしい言葉だ。小さなレディ、君はまだ7歳なのだから、もっとのんびりのびのびしてよいと思うよ。私みたいにね!」
「貴方はのびのびし過ぎでしょ。ちゃんと、マクベス砦の視察の報告書はまとめたのかしら?」
「うっ。はは。目下鋭意努力しているところだよ!」
「終わってないのね」
じとりとブリアがヒースを見る。
うん。2人ともいつも通りだ。
ちょっと和んだところで、スヴァからの鋭い突っ込みが入る。
<その宿題、忘れぬとよいがな>
<うっ。それは自信がないな>
目の前のことにいっぱいになって、ころっと忘れる自信がある。
<けど、ここに戻ってくれば、絶対思い出すさ>
そして戻って来る時には、自分は今より成長している筈。
そうすれば、よいアイデアが出る筈。今考えるよりももっと。
<成長すればな>
うるさいよ。スヴァ。
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