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第323話 ティティ、一旦は気楽な旅を諦める

「なんで、それで俺についてくるってなるんだよ!」

 ここで頑張って友達を作って、楽しめばいいだろ?

「そうだな。まずは一番の目的は、お主への罪滅ぼしをしたいからだろうな。それをするにはお主の傍に居らねばならぬ」

「罪滅ぼし? いらねっつの!」

「第2はさっき申した通り、お主の命を守る為だろう」

「それがわからんつの。人生楽しむのになぜ俺について来る!」

「7年前にお主と過ごした日々は、あ奴にとって殊の外楽しい日々であったのではないか?」

「はあ? 魔王討伐がか?」

「厳密にいえば、我を倒しに魔王城に来るまでに、お主と過ごした日々がだ」

「なんでそんなことがわかるんだよ」

「7年も引きずっておったのだぞ。其方に一方ならぬ思いを抱いていたのではないか?」

「あー‥」

「7年前、あ奴はまだ成人前の幼い子供だったのだろう。それが魔王討伐にひっぱりだされて気丈にも頑張っている。そんな子供をお主がほっとく訳がなかろう。きっと随分と気にかけてやったのではないか?」

「気にかけたっていうか。構い倒した記憶がある」

 うむ。それは後悔していない。おチビが頑張ってるの、ほっとけるか。

「それが、嬉しく、楽しかったのであろうよ」

 スヴァが髭を前足で撫でる。

「人生を楽しめ、それ即ちお主とともにあることにつながったのではないか?」

 貴族でもなく、ただの子供として、私利私欲なく接してくれた初めての存在。

「また共にありたい。行きたいと思っても不思議ではあるまい?」

「あー、そう言われるとな」

「あくまで、我の推測だがな」

「あー。うん」

「あ奴は7年前から成長を止めてしまった、まだ子供だ。それの原因が我らにあるのなら、ついて来たいと言うあ奴の希望を無下にはできまい」

 ティティは頭をソファの背に預け、天上を見上げた。

 なんだよ。そんなん言われたら、断れないじゃんか。

 自分を可愛がってくれた人間を、自分の手で殺してしまった。

 その上、自分はその人の功績を奪い、自分が英雄になってしまった。

 自分は楽しんではいけない。

 できるだけ厳しい環境で生き、死なねばならないと思っていたのかもしれない。

 だから、魔王領の最前線に身をおいた。

「悪いことしたなあ」

 勇者の剣がライアンしか使えなかったとはいえ、嬉し恥ずかし楽しい10代を無駄にさせてしまった。

 望むなら、あいつの好きにさせるしかないか。

「スヴァはあいつがついて来てもいいのか?」

「構わぬ。先ほど言った通り、我にも責任があるからな」

「責任って。スヴァは殺されたんだぞ」

「あ奴に殺されずとも、いずれ現れたであろう勇者もしくは神に屠られただろう。我は死ぬ運命であったのだから、私恨はない」

「あーそー‥」

 なんかさ、スヴァも、ライアンも、運命過酷じゃね。

 それを突っついてもしょうがないけどな。

 これは俺が人生の楽しみを教えて、これから面白おかしいことを体験させてやらねばならんな。

 私も覚悟を決めるか。

 さらば、気ままな旅よ。

「なら、ライの決心が変わんなくて、かつここの領主さんがいいって言ったら、連れてくか」

「うむ。ところで、そうなった場合、我の存在は知らせるのか?」

「あー‥当分はなしだろう。あいつの性格が少し柔らかくなったらかなあ。今はごりごりに固いっしょ。それに7年ブランクがあるから、まだまだ性格を掴み切れてないしな」

 それに、ジオルはライアンの年上だったとはいえ、今はティティだ。11歳の年上の男にこれからどう接するかも問題である。

「あー、なんかめんどいことになって来たな。頭使うの苦手だっての」

「そうも言ってられぬだろう。女魔法士が帰って来る前に、もう少し今の状況を整理把握しておかねば」

「そっだなー」

 ここにも堅物真面目がいたよ。

 なんだよ。私の周りは真面目ちゃんだらけかよ。

いつもお読みいただきありがとうございます!

少しでもおもしろいっと思っていただけましたら、ブクマ、評価をどうかよろしくお願い致します。

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