表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
324/496

第322話 ティティ、爆弾を吟味する

 くそ! ライアンの奴、いきなり、爆弾を落としやがって。

 それでなくても、今日は色々ありすぎて、疲れたのに。

 いくら説得しても聞きやしねえ。

 もう面倒臭くなったティティは、その話は明日以降にと言って、強引にライアンを部屋から追い出した。

 今日はキャパオーバーだ。

 頭を整理して、この新たに降ってわいた難題に立ち向かいたい。

 それに腹が減った。

 そういえば、昼抜きだった。

 これは早急に何か食べなきゃやってらんねえ。

 ティティは亜空間から、肉の串焼きとアケカズラを取り出した。

「ほいよ」

 皿に串を抜き取った肉とアケカズラを盛るとスヴァの目の前に置いてやる。

「うむ」

 そうしてから、しばし黙々と食べる。

 気づいてしまえば、ものすごい空腹だったのだ。

 スヴァの追加の催促に、更に肉を置いてやりながら、自分も存分に食べる。

 この後の夕食まで待ってられるもんか。

 今食べなきゃ、頭も働かないっつの。

 そして最後の締めに、果実水を出してスヴァとともに、一服だ。

「はあ。やっとまともに考えられるな」

「おい。お主さっきから言葉が乱れすぎだぞ。気を付けよ」

「なんだよ! 今それどころじゃないだろ! どうすんだよ! ライが付いてきちまったら!」

「うむ。多少窮屈かもしれぬな」

「窮屈どころじゃねえよ! あいつお坊ちゃん育ちだし、超真面目じゃんよ!」

「お主はこの世に舞い戻って、あ奴のことを随分気にしていたというのに、あ奴がともに来たら、いやなのか?」

「いやじゃねえけど! やっとルミエールから解放されっかなと思ったのに。ちょっとのびのびしたいじゃんよ!」

「お主はいつでも構わず振舞っているように見えるが」

「うっせいよ!」

「言葉を整えよ」

 スヴァが顔を顰める。

 ちんまい動物顔だから、そう思えただけかもだけどな。

 しかし、お小言を聞いてると、平常に戻ったんかなあって思えるな。

 なんか落ち着いた。

「なあスヴァ、なんだって、あいつあんなこと言い出したと思う?」

 ティティはどさりと身体をソファに投げ出した。

 あー。このままテルミニーネと一緒に何も考えずひと眠りしたい。

 てか、ニーネ全然起きないな。気持ちよさそうにぐっすりだ。

 よきよき。って、話に集中しないと。

「そうだな。考えるに、お主に言われた通りにしようと思ったのではないか?」

 スヴァが向かい側の、今までライアンが座っていたソファに飛び乗って、香箱座りをする。

「どういうことだよ?」

「あ奴は、お主の話から察するに、7年前、知り合った当時でも、真面目だったのだろう?」

「違う。くそ真面目だ」

「下品なものいいはやめよ」

「けど、それがぴったりな表現なんだよ」

 ティティは口を尖らせる。

「今は見逃してくれよ。すげえ疲れてんだよ」

「む。仕方ない。話を続けるぞ。公爵家いえば、人間社会ではかなり地位が高いのだろう? ある程度、人間関係も制限されていたのではないか? そしてあの性格だ。地位に魅かれてよってきた輩などと友になれる筈もない。更に7年前の国王の対応で英雄に祭り上げられ、それに釣られた輩をたくさん見て、人との付き合いが嫌になってしまったのではないか?」

「あーありえるな。それで?」

「そんな心境で、新たに友もできなかっただろう。また既存の友がいたとて貴族だろうから、自分も含め貴族というのも嫌悪し、拒絶して来たのではないか?」

「つまりは友達がいないと。いたとしても、少なく、今は交友を絶っている可能性が高いと」

「うむ。長年、あの者の中にあった罪悪感からは、お主の転生で解放されたとはいえ、国王への不信、貴族への嫌悪は一朝一夕ではぬぐえぬだろう」

「そうか?」

「そうだろう。けれど、お主からは人生を楽しめという命を受けた」

「俺は命令なんてしてないぞ」

「したろう。お主が言葉の綾でそう言ったとしてもだ、あ奴は素直に命と受け取っただろう。いくら転生したとはいえ、あ奴がお主にとどめを刺したという事実や後ろめたさは、ずっとあ奴の中に残り続ける。その重さと同じくらい、お主の言は大きいのだ。」

「いやいや、何それ?! 後ろめたさなんて感じなくていいからっ! きれいさっぱり忘れろって! 俺の言葉なんて、木の葉一枚の重さと同じくらい軽く受け止めろよ!」

「お主がそう思ったところで、それはどうにもなるまい。真面目な奴なのだろう?」

「はあ。そうだな。で?」

「あ奴の中で、貴族や国王への嫌悪感は、他者への不信にまで発展しておるようにみられる。人生を楽しむどころか、友を作るのも現状難しかろう。けれど、お主の命には従いたい。ならば、お主について行くという結論に達したのでないか?」

「はあ? なんで、そうなるんだよ」

 全然わかんねえよ!

他人の心を推測するのは難儀です。


そしてそして。

いつもお読みいただきありがとうございます!

少しでもおもしろいっと思っていただけましたら、ブクマ、評価をどうかよろしくお願い致します。

励みになります~。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ