第310話 ティティ、ついにバレる
短めです。
「あー、えっと」
背中の汗が止まらない。
スヴァ助けてくれ。
<知らぬ>
そんな冷たいぞ。
「ジオルさん、なの?」
一歩一歩近づいて来たライアン。
その声はこの砦に来て以来聞いていた氷点下の声からは想像もつかないほどに頼りない声。
「あーっと。ニーネはそのジオルから引き取ったつーか?」
苦しいっ! 苦しい言い訳だ!
「ジオルさんなの?」
遥か上方から見下ろしてくるライアンの縋りつくような眼差し。
誤魔化すな。
誤魔化さないでくれ。
真実を。そう告げているようなライアンの眼差し。
これはだめだ。
誤魔化したら、傷つけてしまう。
今よりも落ちてしまいそうだ。
そして落ちたら、もう戻ってこない。
ティティは覚悟を決めた。
「あー、うん。そう」
ティティは頭を掻きつつ、白状した。
「よっ! 久しぶり! わあああ!」
ティティが軽く片手をあげた瞬間、すごい力で抱きしめられた。
「ぬおおおお!」
ちょっ! 内臓出ちゃうから!
もう少し腕の力緩めろっての!
思わず抗議の声を上げそうになったが、ライアンが震えながら、必死にしがみつくようにティティを抱きしめて来るのを見下ろして。
何もいえなくなったー。
まあ、いっか。
これで頑なライアン少年の心も少しは溶けるだろう。
それにバレてしまったからには、堂々ボッチ街道まっしぐらになった訳も聞ける。
うん。ポジティブに行こう。
なんかややこしくなりそうだと思ったりはしてない。
<だから、後先考えて行動しろというておろうに>
飽きれたようにため息をつく、スヴァなんて目に入らないんだからねっ。
短めですが、書きたかった場面です。




