第304話 ティティ、英雄に付きまとう。
「ラーイライライライアーン様~♪ なぜにそんなに頑ななの~♪」
かくて、翌日もライアン青年付きまとい作戦は発動された。
相手が根負けして、柔らかくなるまで頑張るぞ。
ティティは決意も新たに行動を開始した。
朝ご飯食べたら、彼を探し、昼食を食べたら、夕食まで彼に付いて歩く。
ティティの後ろにはブリアと、横にはスヴァがお供で付き合ってくれている。
ヒースとブリアに彼と仲良くなることが最優先だとぶっちゃけたので、ティティは心置きなく、本来の目的に邁進する毎日である。
彼に会うまでは、一目会えればいい、元気にしてる姿を見れればそれでOKと思っていたが、ぼっち状態の彼をそのままにしておけない。
それにだ。そんな状態の彼を見て、確信したのだ。
国守さまが示した迷える魂の一人は間違いなくライアンであろう。
この解決なくして、可愛い弟の待つアーリデアルトの森に帰ることはできないのである。
その迷える魂も、もう一つあるのだ。
ま、そのもう一つの魂はロフルの可能性があるのだけれども。
しかしだ、確信が持てない以上、さくさくとライアンの件を片付けていかないといつになっても弟と会えない。
その為、ブライトを通してこの砦の司令官であるシリンジャーにも自由に砦を動き回る許可をもらった。立ち入り禁止の場所を覗いてであるが。
自由に動けないと、ライアンについていけないからね。
ティティが何をやりたいのか薄々気づいての許可だと思う。
シリンジャーにしても、ライアンが今のままではいけないと思っていたのだろう。
ティティの存在が、改善のきっかけになるのならと許可をしてくれたのではないか。
英雄であるライアンにはシリンジャーには命令権がない。
客人扱いだからである。
とはいえ、この砦を守る一員であるライアンを気にかけていただろう。
ったく。あの坊主は周りの心配をちっともわかっちゃいないんだから。
<いや、あ奴もそうさせる何かを抱えているのだろう>
スヴァが隣を歩きながら、心話で呟く。
<俺も大概だけど、スヴァもある意味すげえよな。7年前、あいつに殺されたのに、なんも思わないのか?>
<我は勇者に倒される運命であったのだ。それがあの者に倒されることになっただけのことよ。あ奴に何を思うことがあろうか>
<そうなのか?>
<うむ。むしろ苦しみからの解放されるとほっとしたくらいか>
そっか。魔素、呪素をたらふくため込んで狂化した状態で、苦しくない訳がない。
消滅は苦しみからの解放か。
なんかせつないな。
<何を落ち込んでおる。我は消滅せずにこうしておる。それは我にとって至上の幸運であるぞ。喜びこそあれ、お主が落ち込む必要などないのだ>
<そっか?>
<うむ。ほれ、落ち込んでおる暇があったら、今のあ奴の現状をなんとかしてみせよ。それ、前方に見えるはあ奴ではないか?>
「あ、本当だ! よっしゃ! 行くぞ! ライアン様~~!!」
ティティはライアンめがけて駆け出した。
すっごい嫌がられながらも、ティティは構わず話しかけていく。
そしていつも通り逃げられた。
くそっ!
なんの進展もないまま、2日が経過。
ははっ。なんか懐かしいなあ。7年前もこんな感じだったな。
それでも諦めず構い倒して、徐々にライアンが根負けして、親しくなっていったのである。
今回は子供の彼ではなく、成人したライアン相手だ。少し苦戦するかもしれない。
本日、この付きまとい作戦に参加しているはティティとブリアの2人だけだ。
スヴァはというと、図書室に読んだことのない本を発見したらしく、ティティに本を借りさせて、ティティに割り当てられた部屋に籠って読書三昧である。
なんだよう。付き合ってくれないのかようと文句を言ったところ、
<我がついても進展はなかろうよ>
とすげなく断れた。
読みたい本がなければ、付き合ってくれただろう。
ティティの助太刀よりも、自分の欲求をとるのかっと、不満に思ったけれども。
スヴァのやりたいことがあるなら、好きにさせるべきだろう。
今まで我儘言わないで付き合ってくれてたのだから。
寂しいけどっ。
それにしてもこれだけ付きまとっていたら、7年前はそろそろあきらめムードが漂っていたのに、全く変化が見られない。
もしかしてこの7年の間に、この手の行為に耐性ができてしまったのだろうか。
諦める気はさらさらないが、時間的に制限があるのが確かで。
「よし! 今日はもっと気合を入れるぞ!」
待っておれ! ライアンよ!
朝食を食べ終わってそう気合を入れた矢先、警鐘が大きく鳴り響いた。
は?
何事っ?!
ティティってメンタルタフだ。




