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第302話 ティティ、弟分を心配する。

 なぜ英雄と呼ばれることを拒絶するのか。

 それはわからない。

 ジオル(じぶん)が死んだ後、何かあったか。

 推測するしかないが、魔王討伐後の後処理が大変だったのかもしれない。

 自分の身に置き換えてみると、英雄と呼ばれるのは何もなくてもこっぱずかしいかも。

 どちらにしても、ライアンに嫌な思いをさせてしまったのは確かで。

 ここを発つ前にやっぱ、謝っとかないと思った。

 もう英雄様って呼ばないよ。だから謝らせてくれ。

 せっかく再会できたのだから、気まずくなったままで、別れたくない。

 それに何が彼をあんなに頑なにさせているのか、それも探らないと。

 昔の彼くらいには戻って欲しいのである。

 まずは謝ってとっかかりを作らないといけない。

 つーことで。

 ティティは次の日ブライト、ヒースに断りを入れて、フリーな時間をもらった。

 視察としてぞろぞろ動くと目立つし、謝りづらいからね。

 おまめなティティであるが、集団行動では事前に連絡、相談、許可は必要だよね。

 ライアンへの謝罪は視察とは全然関係ない案件なので、1人でもいいと言ったのであるが、ブリアが護衛についてくれることになった。

 謝罪を受け入れてもらい、その後和解してもらう。

 そしてその先、友達まで行けないまでも、ちょっと親しい知り合いまで行きたい。

 さてさて、彼はどこにいるのか?

 ブリアと2人、ライアン青年を探す。

 ブライト情報によると、ライアンは早朝、鍛錬をし、朝食を取った後は、図書室で過ごすことが多いとの事。その情報をもとに、今図書室へと向かっているところである。

<あれだけ怒らせたのに、気おくれせんのか?>

 スヴァが横を歩きつつ、心話で尋ねてくる。

 さきほど2人と言ったが、私とスヴァは相棒だからね。もちろん一緒さ。

<まったく。ずっと年下の少年の癇癪だぞ?>

 私の中ではライアンは年下のほっとけない少年なのだ。

 図体が大きくなってもそれはかわらないよ。

 とはいっても、ティティの姿は7歳。見た目は逆だけどね。

<うむ。お主はおおらかだな>

<だろ?>

<おおらかすぎるかもしれぬがな>

<なんだよ、それ>

 そんなやり取りをしている間に、図書室へと到着した。

 そっと中を覗くと、お目当てのライアン青年の姿があった。

「ブリアさん、ここで待っていてもらえますか」

 謝るのに、護衛はいらない。

「わかったわ」

 ブリアは扉の外で待ってくれることになった。

 さあ、いざいかん。

 図書室にはライアン青年以外誰もいない。

 心穏やかに過ごすにはよい時間と場所なのかもしれない。

 そんな思いを抱きつつ、ライアン青年に近づいて行った。

 その歩きの勢いに乗って一気に謝ってしまったほうがよい。

 おどおどして逃げられても面倒である。

 今度は呼びかけに気を付けてっと。

「マクドーニ様」

 とっくにティティの存在に気づいていただろうに、本からちっとも顔をあげなかった頑ななライアン青年だったが、ティティが声をかけたことで、やっとこちらを向いてくれたよ。

 もう。どうしてそんなに頑なになってしまったのだ。お兄さんは悲しいよ。

「昨日は、ご不快な思いをさせてしまい申し訳ありませんでした。せっかくお時間をとっていただいたのに」

 すこしよろしいでしょうか?とは聞かないぜ。

 それでいやだと言われたら、そこまでになってしまうからな。

 ライアン青年は、本を閉じると、ティティに向き直った。

「私も少し大人げなかった。気にしないでくれ」

 おっ。やっぱ。小さい子にここまでされたら、いじわるはしないか。

 よしよし。

「お許しいただけて、ほっといたしました」

 しーん。

 うーん。7年前初めてライアンと会った時を思い出すな。

 誰にも気を許していない。

 7年前も親に言われた責務を果たそうとすっげえ気を張っていた。

 それを構い倒したのはジオル(じぶん)で。

 すっげえ、やがられたっけなあ。最後は懐いてくれたけど。

 今は別の意味で神経が張り詰めているような。

 それにすっげえ疲れてるみたいだ。

 ぷつりと切れたら、あっけなく逝ってしまいそうな。

「なんだ?」

 じっと見つめすぎたのがいけなかったのか、ライアンが眉を顰める。

「あの、この砦で、楽しい事はありますか?」

 唐突すぎな質問だ。

 でも、ライアン青年の顔を見てたら、思わず出てしまったよ。

 だってさ、魔物退治も大事だけど、息抜きも大事だからな。

「ここは遊びに来るところではない。魔物を退治して、魔族を倒す、それだけだ」

 ライアンはそう言い捨てると、出て行ってしまった。

 おい。言い逃げかよ。

 そしてやることはそれだけかよっ! 真面目かよっ!

 ストイックすぎだろっ。

「ティティ大丈夫?」

 ライアン青年と入れ違いに、ブリアが心配そうに近づいて来た。

「はい。大丈夫です。ちゃんと謝れましたし」

 余計に心配になったけどな。

「そう。それで? 憧れの英雄様と少しはお話できたかしら?」

「はは。うーん。どうでしょうか?」

 あれを話とするか否か。微妙である。

 ライアンが机に置いて行った本に目を落とす。

 魔物、魔族の生態。

 だめだろ。読書が休息になってねえ。

 はあ。一体彼に何があったのか。

 これはもう少し仲良くなって、事情を聞かねばなるまい。

 昔みたいに魔王討伐という一つの目的の為に一緒に行動してる訳でもないからなあ。

 仲良くなるまでの時間が取れるか。

 これも相談かなあ。

 ったく。生まれ変わっても心配させるな。

 私の弟分はよ。

そしてライアンが読んだ本はティティが片付ける(笑)

そしてそして。

いつもお読みいただき、ありがとうございますv

もし少しでも続きが読みたいっと思っていただけましたら、☆をぽちりとお願いいたします!

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