第298話 英雄ライアンさまの周りの印象は
「ティティちゃん、申し訳なかった」
向かい側に座っていたブライトがいきなり頭を下げて来た。
ほえ。なんだ?
「僕が他人任せにせず、ちゃんとライアン様への注意事項を伝えておけばよかったよ。そうすれば、もっと柔らかな会合が出来たかもしれない」
おや、私がスヴァとばかり心話で話してたから、不機嫌にだんまりを決めていたと思われたかな。
違うよ。でもそうだよ。君がちゃんと教えといてくれれば、少しは違っていたからもしれないね。
和やかな会合になったかは不明だけどね。
伝達確認、大事だよ!
「私たちもうっかりしていたわ、ごめんなさいね、ティティ」
「すまない、小さなレディ」
ブリアもヒースも頭を下げる。
「わわっ。やめてください! 大げさですよ!」
「だけど、ショックだったでしょう? 憧れの英雄にあんな態度を取られて」
ブリアが眉をさげて、すまなそうに付け足す。
「憧れの英雄?」
「違うのかい? だから会いたかったのではないのかい?」
あ、そういえばそういう言い訳だったか。
「はは。そうですね。ちょっとショックかもですね。気に入らない呼ばれ方しただけで、ああいう態度は、ちょっと大人げないかなあと」
「ティティちゃんにそう言われたら、ライアン様も反論できないかもねえ」
ブライトが苦笑いする。
「本当にそうよ。ティティが粗相したとしても、まだこんな小さい子供なのだから、大目に見てもらいたかったわ」
「私も、小さなレディ相手にああいう態度をとるとは思わなかったから、彼が気難しい性格をしていると伝えなかったんだよね。思い込みはいけないね」
「もういいですよ! これ以上は悪口になってしまいますから」
しかし、ヒースにもライアン気難しいと思われてんのか。
おおらかな性格のヒースがそう判断するってのはよっぽどだぞ。
一体この7年で彼に何があったのか。
私は心配になってきたよ。
幸い数日はこの砦に滞在してもいいみたいだから、その理由はゆっくり探ろう。
<そうだな。あの司令官もそう言ってたな>
<うん>
「と、とにかくも、ライアン様にお会いしたいという目的は達成できたな。うむよかった。後はじっくりとこの砦を見てまわるとよかろう。ティティ殿は初めてであろう。魔物しかいないが、ゆっくりしていってくれ」
そう言ってシリンジャー様、慌ただしく席を立って行ってしまったんだよな。
気まずくさせてしまい申し訳なかった。
あの調子じゃ、もうライアンとのセッティングは望めないだろうなあ。
これは私自身でライアンをリサーチして、何か彼が問題を抱えてるなら、それを解決して憂いなくここを旅立ちたい。
<あーあ。7年前のまま、まっすぐ育ってくれれば、安心して旅立てたのになあ>
<人生ままならぬものよ>
カッコいい台詞吐いてるけど、口回り肉汁だらけだぞ。
スヴァの口を手ぬぐいでぬぐいつつ、明日から行動を考える。
これは食後、ミーティングが必要だねっ。
今は夕食に集中だっ。
あー、この肉厚のキノコ、うまっ!!
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