第29話 デルコはティティに甘い
「デルおじぃ、おはよう!」
来店3回目、もう慣れたもので、ティティはずんずんと店の奥へと入って行く。
「なんじゃい! 昨日もそうだったが、敬称はなしか!」
デルコが店の奥から出て来て、すかさず文句をつける。
相変わらず、子供泣かせの面構えである。
「敬称なしは、親しみを感じてるっていうことで、ダメ?」
小首を傾げてきゅるんと尋ねる。
効果は果たしてどうか。
「ぐっ! 勝手にせい!」
十分に効果はあったようだ。ちょろい。
「デルおじ、それで頼んだものはできてる?」
「当たり前じゃ! ほれ!」
デルが差し出したのは、腰に巻くタイプのホルダーである。
「つけてみろ」
「うん」
ティティは素直に装着する。
ベルトのような作りになったそれは、ティティにピッタリだった。
「短剣とナイフを付けられるようにしてある」
「うん。すごい! これなら、すぐ取り出せるね!」
「じゃ、次はアンクルホルダーじゃ。足を出せ」
「うん」
素直に右足を差し出した。
デルコはしゃがむと、ティティの細い足首にそれを付けた。
「どうだ?」
「うん! こっちもぴったりだ! それに超かっこいい!」
「ふふん」
デルコが心持ち胸を張る。
なんか強くなった気がする。すげえテンション上がる。
「スヴァ! どうよ!」
ティティはスヴァに見せびらかした。
<うむ。いいのではないか? 武器は分けて持っておいた方がいいからな。よかったな>
「えへへ。デルおじ! ありがとう!」
にぱあっと自然笑顔がはじける。
「ふ、ふん! 少し足を動かしてみろ。動きにくくないか?」
デルコに言われて足を前後に動かしてみる。皮も柔らかく、特にあたる感じはしない。
「うん! 大丈夫みたい!」
嬉しくて、ぶんぶんと足を余計に動かしてしまう。
「デルおじ! 最高だよ! それでいくら?」
もう言い値で買っちゃうよ。それくらい気に入った。
「そうさな。2つで大銀貨1枚でいい」
「ええっ! そんな! こんないいものなのに、安すぎない?!」
それだと材料費だけで工賃が入ってないんじゃないか。
「昨日もおまけしてもらったし、デルおじちゃんと、お金請求してよ!」
「いいんじゃ! わしが大銀貨1枚と言ったら、それがその値段じゃ! 素直にとっとけ!」
「ありがとう! デルおじ! 私、大事にするから!」
「ふん。当たり前じゃ!」
「ふふ。もう、すっごい森に採集に行くのが楽しみになったよ!」
<単純な奴め>
スヴァが心話で突っ込む。
なんとでも言え! 男の子はこういう、皮製品が大好きなんだよ! あ、今は女この子だけど。
改めて思う。ジオルの対人能力って高い。羨ましい。




