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第2話 なぜ俺はここにいるの?

続けて投稿します。

 ガルマニア歴2338年。

 ジオルこと、ジオルリア=アカレは、魔王討伐に向かう一団になぜだか、加わっていた。

 魔王討伐。テイマーであるジオルには縁がない筈の依頼内容である。

 本来魔王討伐隊が編成される場合、勇者が軸となり、強者が招集される。

 しかし今回、魔王の狂化が近いというのに、勇者が生まれなかった。

 いや、生まれているのかもしれないが、名乗り出ないばかりか、ガルマニア大陸全土を捜しても見つからなかったのである。

 勇者不在。それでも魔王狂化は止まらない。魔王討伐は絶対である。なさねば、人間は滅びてしまう。

 やむなく各国は、様々なスキルを持った者たちが集められた。

 要は勇者が不在な為、とりあえず何が役に立つかわからないが集めて送り出そうという国々の意向である。

 かくいうジオルの住むグロシルバ王国もそれに倣った。

 それで討伐できれば、儲けもの。というか、打てる手はそのくらいしかなかったというべきか。

 そういった訳で、普段絶対お呼びがかからないであろうジオルも魔王討伐部隊に招集されてしまったのである。

 ジオルはテイマーである。

 テイムの方法は、そのテイマーによって異なる。エサで手懐ける方法、テイムする相手を痛めつけて屈服させる、命令して縛ってしまう方法など様々だ。

 ジオルのテイム方法は、テイムしたい動物の意識を自身の肉体に取り込み、そこで動物と意志の疎通を図り、相手に納得してもらいテイムするのである。少し変わったやり方だとは思うが、されどテイマーである。魔王討伐に役に立つとは思えない。

 なのに、なぜか国からお呼びがかかってしまった。

 この能力が一体魔王討伐に役に立つのか全くわからなかったが、報酬がよかったし、拒否権も実質なかった為、魔王討伐隊に加わったのである。

 きっと自分には出番はない。あぶない賭けだが、報酬はいい。テイマーといっても自分もそこそこ剣も使える。隊の端で、小物の魔物を相手にしていれば大丈夫だろう。魔王を倒すのは化物級の腕の立つ方々に任せておけばいい。と、思っていたのである。

 が。

「なんだよ! どうすんだよ! 誰も魔王に勝てないってか!? こんなところで死にたくないっての!」

 運がいいのか悪いのか。

 ジオルは死ぬ事もなく、上手くその場その場を切り抜け、魔王がいる魔王城の本丸まで進んできた。

 しかし、前方で戦う、歴戦の強者たちでも、魔王を前にして、全く歯が立たないのである。

「考えてみりゃあ、魔王を退治できるのは、勇者だけだって、言われてたもんなあ。やっぱ、勇者だけしか倒せねえだな」

 この場で改めて実感しても、もう遅い。上手い話は早々転がってないって話だ。

 魔王は人間の攻撃に怒り狂ってる。

 もう逃げ出すことも難しそうだ。

「ああ。思えば短い人生だったな」

 剣を構えつつ、ジオルは嘆息した。

「まだ17だっつーのによ」

 しかし、この場にはジオルよりもなお幼少の者がいる。

 キングスリー公爵家の嫡男、11歳の少年である。

 最初はなんとも貴族のお坊ちゃまらしく堅苦しくて、とっつきにくかった。

 その為、一行のなかで孤立していた少年をジオルは放っておけなくて、つい構っているうちに懐かれた。懐かれたといっても、他よりも話すようになったぐらいだが。

 11歳。まだ死ぬには自分よりもはるかに早すぎる。

 自分(ジオル)は親を亡くして、早くから冒険者として好き勝手気ままにやってきた。

 だから、ちょいと早いかもしれないが、まあしょうがないといえるだろう。

 だが、公爵家の少年はこの遠征が初陣だと言っていた。家から初めて遠出して死ぬなんてあまりにも不憫すぎる。

 せめて少年だけでも、助けたい。

 ジオルは狂化がはじまった魔王をねめつけた。

「説得すんのは、難しいかもしんねえけど、魔王の意識を一時的にテイムの要領で内に引き入れることができるかもしれねえ」

 魔王も魔物も同じ魔だ。できると思えばできる。きっと多分?

 ジオルはその旨を隊のリーダーに告げた。

 ジオルが魔王の意識を取り込む。そして合図をしたら、魔王を攻撃してくれと。

 けれど、ジオルだって死にたくはない。せめて説得する時間だけは欲しい。必ず合図までまってくれと。

 これで魔王を説得できたら、儲けもの。死なずに済む。

 できなければ。

 合図を送って自分ごと魔王を倒してもらうしかない。

 意識をジオルの体内に入れたらきっと魔王だとて、防御はできなくなる。そこをつくのだ。

 果たして。

 魔王にぎりぎり近くまで、仲間の援護をうけながら近づいて、魔王をテイムしようと己の体内に魔王の意識を取り込んだのだ。

 第一段階は成功だった。

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