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第297話 気分転換に肉っ! うまっ!

短めです。

 ライアン少年よ。

 君はどうしてしまったんだい?

 7年前の君は、はにかみながらも、(ジオル)を慕ってくれていた、あの可愛い君はどこに行ってしまったのか?

 その片鱗が見えたのは、英雄と呼ぶなと叫んで出て行った瞬間だったね。

 ぷうっと怒ってすねた時の11歳の時の君の顔と重なったよ。

 ぐさっと肉にフォークを差しつつ、7年ぶりの再会をティティは振り返る。

 今ティティたちがいるのは、マクベス砦の食堂だ。

 気まずい雰囲気を引きづりつつ、大人組3人とティティとスヴァが食堂の一角に落ち着いたところである。

<お主、殺気を含んだあの男の眼差しをそのように見えるとは、驚きよの。恐くはなかったのか>

<全然。だってライアンだよ? 彼はむやみに人を傷つけたりしないさ>

<7年という月日の流れで、変わってしまったやもしれぬぞ>

<それっぽっちで本質が変わるもんか。彼はいい子だよ>

<お主、先程と言ってることが違うぞ>

<さ、悩むのは後にして、まずはマクベス砦の夕食を堪能しよっかなっと>

 ティティはあんむりと肉を口に放り込む。

<やれやれ。まあ、そうだな。7年など一瞬よの。それに我に言わせれば、お主もあやつもそれほどかわらぬよ>

 そりゃそうだ。元魔王さまは長い長い月日を生きてきているのだ。スヴァからみれば、へたしたら、ブライトやブリア、ヒースはおろかブルコワやヘクタでさえ、同列に若造もしくは洟垂れ小僧なのかもしれない。

 にしてもこの肉うまいなあ。

 とり肉っぽい感触だ。

「この肉おいしいね」

 ぼそりと洩らしたその呟きを、ブライトは素早く拾い上げた。

「ああ、それはピョンという鹿系の動物だよ」

「へえ。魔物じゃないんですね」

「うん。めずらしいよね。この辺の草は魔素を多く含んでいるからこの辺に生息できる普通の動物は殆どいないんだよ。ピョンはその希少な動物のうちの一種だね。このピョンは繁殖力がすごいんだ。一説では植物から取り込まれた魔素がその繁殖力に多大な影響を与えているんじゃないかと言われてたりするんだ」

「へえ。じゃ、貴重な食材ですね」

「うん。けど、このピョンはすごいすばしっこいから剣では倒せない。もっぱら弓で仕留めなくてはならないんだ。騎士の弓の訓練に、ちょうどいい標的になってるね」

 ブライトの説明を聞きながら、もう一口食べる。

 肉から染み出る油がさらりとしているがうまい。ハーブとの組み合わせもいい。

 魔物ではなく動物なら私でも取れるかと思ったけど、騎士でも苦戦するほどすばしっこいなら無理っぽいなあ。

<身体が小さく、力も弱い今のお主なら、短剣より弓のほうが獲物は取りやすいのではないか?>

 皿から顔を上げて、スヴァが提案してくる。

<そうだね。剣より危険は少ないか>

 うん、一考の余地ありだね。

肉ばっかりなので、お魚も食べさせてあげたいなあ。

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