第292話 魔王領に近づくスヴァの気持ちは?
短めです
「ここにはもう魔物は出ないんですか?」
シスピリア城とマクベス砦の間の元不毛地帯、今はブラックシュガー畑。見たところ、畑が魔物に荒らされている様子は見られない。
「小型の魔物は出てきますね。大型のはここまできませんね」
「飛行型の魔物はどうですか?」
「ここ数年は滅多に出現しませんね」
「そうなんですか」
だから飛行型の警戒が薄いのかな?
しかし7年経つとここまで変わるのかね。
<年数ではない。魔王の器とともに、大量の呪素と魔素が処理されたからだ。人間にとって当分は平和な時期が続くであろうよ>
スヴァが膝の上から、こちらを見上げて心話で、呟く。
そういえば、聞いた事がなかったな。
魔王領のまでは行かないが、その手前マクベス砦までは行く。
それはスヴァにとっては里帰りになるのではないか。
どう思っているのだろう。
<スヴァ、魔王領近くに帰って来た訳だけど、どうだ?>
<どうとは?>
<ほら、懐かしいとか、仲間に会いたいとか?>
うーん。会いたいって言って、実際魔族に会いに行かれたら、それはそれで困るのであるが。
<ないな>
きっぱり、さっぱりである。
<ド、ドライだな>
ドンびくくらい、バッサリである。
<我にはもう関係ない場所である。我がいるべきところは、お主の傍ぞ>
なにそれ、すっげえ可愛い答えだな。おい。
<へへ。そっか。そうだよな。生まれ変わったんだから、関係ないよな>
<うむ>
どうやら、心配し過ぎだったようだ。
ティティの肩から自然力が抜けた。
どうやら、少し緊張していたらしい。
「それにしても、小さなレディ、君はこの辺の状況に詳しいみたいだね? それも魔王討伐以前の状況に」
斜め前に座っていたヒースが不思議そうな顔で尋ねて来た。
「え? はは! えっと、詳しい人から聞いたっていうか?」
うわああ。なにそれ。思惑はないですよ、ただ疑問に思ったから聞いたよみたいな問いかけやめて。
余計に焦る。
「ああ、そうなのね」
ブリアが納得したように頷く。
きっとブリアの頭には国守さまが浮かんでいるのだろう。
ブライトも同じく納得顔。
ごめんね。実際この場の状況を見て経験しているからとは言えない。
あうあう。
うそは苦手だよ。これは話題を変えねば!




