第288話 くっさ! でも、笑顔だね!
それからブライトたちにも手伝ってもらいながら、マッドフロッグの左足を切り取り、腹を裂いて魔石がないか確認していった。魔石は小物魔物だとない場合もある。
そんな中、一匹のマッドフロッグの腹を裂いたところ、少し大きめの青い魔石が出てきた。
「ブライトさん! これ、ちょっと変わってません?」
「おっ! ティティ当たったな。そいつは水の魔法を使えるマッドフロッグだな。沼地に変えてたのもそいつだ」
「当たりって?」
「売れば、ちょっとした値段で売れるぞ」
「やたっ!」
これだけくっさい思いしてんだから、いいこともないと!
「小さい集団だから、ボスは一匹しかいないかもな」
大きな集団になると、何匹かいるらしい。
「ロルフ! 後で、山分けだ!」
「うん!」
こんな臭い思いをしたんだ、ランク評価だけでは寂しい。
5人で手分けしたので、割合早くに終わった。
その後、積み上げたマッドフロッグをブリアに魔法で焼いてもらって、処理は終了。
5人とも何とも生臭く、これ以上薬草採集を断念して、帰ることにした。
大人3人は分け前はいらないとのことで、ロルフとともに、冒険者ギルドに行って、キリング草とその他採れた薬草を渡して、それからマッドフロッグの報告、そして買い取りをお願いした。
思ったよりも、結構なお金になった。
「これなら、近いうちにスラムを出られる」
ロルフの顔は生臭い匂いを漂わせながらも、明るかった。
「ロルフ、油断するなよ。お前の金は常に狙われていると思って、用心深くな。そんな明るい顔してスラムに帰っちゃだめだぞ。すぐに狙われる。気を引き締めていけ。金は最小限、後はギルドに預けろよ。これだけ苦労した金をとられたらいやだろ」
「ああ」
「口うるさくして、悪いな。私もずっとこの街にいる訳じゃないし、明日からまた少し遠出するから、力になれるのは今日だけかもしれないからよ」
「いや、いいんだ。十分だよ。十分だ! ありがとな」
「ん」
「ティティちゃん、そろそろ帰るよ」
ブライトも冒険者ギルドの報告が終わったのか、ティティを呼ぶ。
「わかりました」
ブライトに頷いて見せてから、最後にもう一度ロルフに声をかける。
「ロルフ。私はしばらくしたら、また旅に出る。でも、もしどうしても私に連絡したいって思ったら、ギルドに伝言、もしくは手紙を託してくれ。そうすれば、私に届くから」
「わかった」
「て言っても、私に何かできるでもないけどな。でも、頼れる仲間がいるんだって思うだけでも、心強いだろ?」
「ああ」
ロルフって本当無駄口叩かないね。
ま、べらべらしゃべるよりいいか。
<お主のことか?>
スヴァ、遠慮ないね。私はまだ怒ってるぞ。
「じゃあね。ここでお別れだ。一人で帰れるよな?」
「ああ、大丈夫だ」
「よし! じゃあ、死ぬなよ! 新米冒険者!」
「おう!」
その返事にティティはにかっと笑って背を向けた。
「ティティ!」
呼ばれて振り返る。
「本当にありがとう!」
全開の笑顔で、ロルフが手を振る。
「ばっか! こちらこそだよ! 稼がせてくれてサンキューな!」
ティティはそう言ってもう一度背を向けた。今度は振り向かない。
大人3人組と合流して、冒険者ギルドを後にする。
<本当おせっかいだな、お主は。普通知り合ったばかりの者にここまでするか?>
スヴァが隣を歩きながら、心話で告げる。
<ああ、それで損することもあるな>
<だろうな。我と一緒に死ぬくらいだからな>
<はは。違いないな!>
<なぜそこまでする?>
<なぜって? そうすると気分がいいからさ>
<お主は本当馬鹿だな>
<そうかもな>
あー、すっげえ臭かったけど、楽しかったな。
それにあの草原、もっといろんな薬草がありそうだ。
半日じゃなくてもっとゆっくり見たかったな。
視察が終わったら、少しゆっくりここら辺で採集したいな。
<あ! 街の店巡りできなかった!>
てか、すっかり忘れてたよ。
<お主は目の前の事でいっぱいいっぱいになるからな。それにその匂いをさせながら、街を巡るつもりか。店側も嫌がるだろうな>
<そっか。そうだよな>
自分でもこの匂いキツイもんな。
<そうしょげるでない。また機会もあろう>
そうだよな!
あ、でもノアが待ってるから無理か。
<今後は先の計画を考えて行動することだ>
その通りです。とほほ。
でも! スヴァに言われたくないよ!
要領いいんだから!
<我は先を見据えて行動しているんだ>
くそ~。
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