第282話 さくさくっと登録して、次に行こう!
ロルフとの話し合いがまとまり、冒険者ギルドに到着である。
そして早速ティティたちは、ロルフの登録をしに、カウンターへと向かう。
「こんにちは、お姉さん。私はティティルナです! 今日は友達のロルフくんの登録に付き添いできました!」
「はい、丁寧なご挨拶ありがとうございます。ロキシといいます。以後お見知りおきを」
ロキシさんは緩やかなヴェーブが付いた長い金髪が悩ましい、美人な職員さんだ。
よいね。和むね。
横では驚愕の表情を浮かべてロルフが叫ぶ。
「えっ! ティティルナって、おまえ、女だったのか!? それに友達って?!」
ふふ。ロルフの反応いいね! 黙ってたかいがあったね!
お嬢様を偽装する場合以外は、危険を避ける為に、男子用の服を身に着けているティティである。
加え、中身もまだまだ前世を引きずっているから、女子には見えなかったのだろう。
<悪趣味な奴だな>
なんとでも言うがいい。この反応をみるのはいつでも愉快なのである。
「ロルフは8歳です。登録は大丈夫ですよね?」
とはいえ、時間は有限である。驚くロルフをおいて、ティティはさくさくと進めていく。
「はい。大丈夫ですよ。それでは登録致しますね」
「お願いします!あ、先に登録料を払いますね!」
登録料は大銀貨2枚。このハードルを越えるのが貧乏人にはなかなかできないのだ。
「ロルフ、字は書ける?」
「ああ、もちろん」
もちろんか。やっぱロルフは貧困層での生まれじゃないね。
どのような経緯で落ちる事になってしまったのか。
そこは突っ込まないよ。聞かれたくない事もあるだろうしね。
重要なのはその日暮らしを抜け出すことさ。
「それでは、ロルフ様、こちらに記入をお願い致します」
ロキシが紙を差し出す。
「わかりました。ロルフが記入していく」
うん。綺麗な字だ。
「ロルフは字もある程度は読めるの?」
「ああ、大丈夫だと思う」
記入しながら、ロルフは答える。
「ロキシお姉さん、新人は最初は薬草採集からだと思うんだけど、その知識がロルフにはないと思うんだよね。勉強できないかな?」
「それなら、2階に書庫があります。そこにこのあたりの薬草などが載っている書籍や図鑑などあります」
「ありがとうございます。無料で読めますか?」
「はい。ギルドカードを入り口で提示してもらえれば、大丈夫ですよ」
「それと、ロルフはまだ8歳なので、色々と教えてやってください」
「ふふ。ティティルナ様はまるでお姉さんみたいですね」
「私のほうが年下ですけど、冒険者としては先輩ですから同じようなものかもしれませんね」
ロルフからは荒事に慣れている匂いがしない。きっと冒険者になっても苦労するだろう。私がずっとついている訳にも行かないからさ、色々便宜を図ってもらいたいなあって思うんだよね。
「記入し終わりました」
ロキシに紙を渡す。
「はい。お預かりします」
ロキシが登録の手続きをきびきびと済ませる。
ほどなくして、赤胴色のギルドカードがロルフに手渡された。
「ようこそ。冒険者ギルドへ。私たちは貴方をギルドの一員として歓迎します」
「歓迎」
その言葉に、ロルフはぼろりと一つ涙を零した。
はっとして慌てて、袖でふき取ると、急いで頭を下げた。
「よろしくお願いします」
何を思っての涙だったのかはわからない。
でも、うんうん。よかったね。
ロキシの言葉で、淀んだ心の澱が少しでも薄れたならいいな。
「ロルフ、感激するのはまだ早いよ。君への報酬はこんなもんじゃないんだから」
そしてロキシに向き直ると尋ねる。
「ロキシお姉さん、この辺で手ごろな武器が買えるお店はないかな?」
「そうですね。安さで選ぶなら、冒険者ギルドの横のお店ですね。少しお金に余裕があるなら、武器屋街まで足を伸ばされたほうがよろしいかと思います」
そう武器。武器を持ってないと危険だからね。
「わかりました。行ってみます」
「行こう。ロルフ」
「あ、ああ」
ロルフは素直にティティに手を引っ張られるままに、冒険者ギルドを出る。
尖ったロルフがどっか行っちゃったね。
ふいにこぼれた涙。ロルフ、ファイト。
そしてそして。
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