第281話 君が儲けさせてくれたからね
「ロルフ!」
濃い目の金髪に帽子をかぶったロルフがこちらを振り返った。
「ああ、串焼き配ってたちっこい奴か」
「ちっこいのは余計だよ!」
おチビなのは間違いないけどね。他人に言われると腹立つんだよ!
それに串焼き配ってた奴って、その覚え方どうなの?と文句を言いたいが名乗ってないから仕方がないか。
「覚えていてくれたんだ。よかった。この前の情報とても役にたったよ」
「そうか。よかったな」
「うわ。あっさりだね。もっとどうなったか聞きたくないの?」
「聞いたってどうなるものではないだろ? 情報料はもうもらったしな。それに俺がゴーストをどうこうできる訳じゃないし。金にもならないしな」
「潔いねえ」
「それで今日はどうしたんだ? また情報を聞きに来たのか?」
後ろに立つ大人3人組を気にしながら、ロルフが聞いてくる。
今日の大人3人組は騎士や魔法士の格好ではなく、冒険者風の格好をしている。
それでも下町に不似合いな雰囲気はぬぐえない。
仕方ないね。でも、少しは目立たないだろう。
「新しい有益な情報があるなら、買うけど、今日来たのは、この前の情報がすごい役だったんで、追加報酬をしたいと思って来たんだよ」
「本当か?!助かるぜ!」
そう言いつつ、手を出すロルフ。
「待ってくれ。今回の報酬は現物支給にしたいんだよ。それでそれを渡す前に確認だ」
ロルフの肩をがっしりと掴んで、顔を見つめる。
「おまえ、その日暮らしの生活から抜け出したいよな?」
「!」
ロルフが目じりを吊り上げて、バッとティティの手を振り払った。
「やばい話はお断りだ! 帰ってくれ!」
そう言い放ち、駆け出そうとするロルフの服をはしっと掴む。
「恩をあだで返すことなんてする訳ないだろっ! お前の気持ちを率直に聞きたかったんだよ!」
なおも言い募ろうとしたロルフがティティの思いのほか真剣な顔を見て、ふてくされたように呟く。
「当たり前だろ。誰が望んでこんな生活したいんだよ」
「そっか」
やっぱ、ロルフは芯まで落ちてなかったし、あがこうとする力がまだ残っていた。
「こんなくそみてえなとこ、居たくている奴はいないだろ」
「そっか。そうだよな。なら抜け出す為に、お前は何でもするか?」
「俺は悪い事はしないぞっ! いくら苦しくてもな!」
「さっきも言った! 悪いことはさせねえよ!」
そこでロルフの顔を覗き込んで、ティティは言った。
「私はお前を悪い道に誘おうしたんじゃないよ。悪かったな。誤解させて。まあ、危険っちゃ危険な仕事のお誘いではあるんだが。ロルフお前、冒険者になる気はないか?」
「冒険者?」
「うん。ロルフは何歳だ?」
「8歳だけど」
なんだよ! 私と1歳しか違わないのかよ! それで私をちっこい呼ばわりってひどくない?
「よかった。年齢は大丈夫だな」
「それよりなんだよ。冒険者になるって」
「うん。ロルフって、賢いから冒険者としてやってけるかなって思ってさ。ここから抜け出すには冒険者になるのが手っ取り早いからさ」
逆にここまで落ちてしまうと、這い上がるためには冒険者しか道はない。
冒険者になったとしても、賢くなければ、すぐに死んでしまうだろう。
ロルフならやっていける気がして、こんな提案をしたのだ。
「冒険者は賢く、用心深くなくちゃやってけない。ロルフならやれるかなって思ったら、ちょっとおせっかいをしたくなっちゃったんだよ」
それだけロルフの情報は私に稼がせてくれたからね。それにランクの評価もきっと上がる筈だ。
それに孤児院を視察した直後だったからかもしれない。
「ただ、死と常に隣り合わせな冒険者だから、覚悟がないとできない仕事だ。どうする?」
「やりたい! こんな先のない生活はもういやだ!」
そこでロルフは視線を落とす。
「けど、冒険者になるためにはまとまった金がいるだろ? 今の俺にはそれを出すのは難しい」
「それは心配ご無用! ロルフのくれた情報はお前を冒険者に登録できるくらいの有益な情報だったのさ」
「本当か?」
ロルフが疑り深く、こちらに視線を向ける。
「マジさ! それは後ろにいる3人が保証するよ!」
「ああ、私たちが証人だ! 君のおかげで、街の平安が保たれたのだからね!」
ヒースがずいっと前に出て、大きく手を広げ、ロルフを称える。
「本当なのか?」
なんか余計に疑り深い目になってしまった。
「ええ。貴方を冒険者にとの話は今聞いたけど、貴方の情報料にはそれでも安いかもしれないわね」
ブリアがフォローしてくれる。
「彼らは詳しくは言えないけど、お城の関係者でゴースト退治にかかわった人たちなんだよ?」
「ええっ!」
ロルフが目を見開く。
「あ、これは内緒な?」
ティティは口に指を突き立てて、お願いする。
「これで信じてくれただろ? じゃあ、これから冒険者ギルドに登録に行くぞ!」
「待ってくれよ! そんな急に!」
「こういうのは勢いが大事だ!即実行さ! ぐたぐだ言ってないで行くぞ!」
ティティはそう言い放つと、ロルフの手を引っ張って、歩き出した。
さあ、サクサクやらないと、日が暮れちまうってな!
いつもお読みいただき、ありがとうございますv
もし少しでも続きが読みたいっと思っていただけましたら、☆をぽちりとお願いいたします!
そして今日はもう一話投稿します!
そちらもぜひにお読みいただければ、嬉しいです(*^^*)




