表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
281/496

第279話 女児相手に、本気交渉しないでほしいよ

 困るよ。私の第一の目的はマクベス砦にいるライアンに会う事なんだからね。

「砦への視察はヒースに任せます」

「了解しました」

 なるほど。そういうことか。そうだよね。中止はないよね。ふう。

 にしても、ヒース返事はやっ。こうなるってわかってたのかな。

 それとも予めルミエールと話し合ってたとか。

<その可能性は高いな>

 スヴァが呟く。

 ルミエール、そんなにハッカサユリの研究したいのかな。

<その気持ちはわかるな。未知のものへの探究は非常に心躍るからな>

 へー。そんなもんかね。私は出来上がりを使うほうがいいけどっ。

「ヘクタ様、お許し願えますでしょうか?」

 ルミエールが頼んでるよ。頭は下げてないけど。

「こちらこそ、よろしくお願い致します。ルミエール様は薬草研究に精通しておられますから、是非ともそのお力をお貸しください」

 そうなんか。美麗な上に頭もいいって、反則だよなあ。

「それにしても、ティティルナ殿は貴重な収納袋も持っているとは。その年ですごいことです」

 おっとヘクタさま、いきなりこちらにジャブをむけないで欲しい。

「あ、えっと、これは借り物なんですよう。お仕事を頼まれた時に貸してもらってそれからずっと借りっぱなしというかあ~」

「ほう。それはそれは、随分と太っ腹な依頼人ですね」

 やめてこれ以上突っ込まないで。

「それで、ティティルナ殿の分の薬草はいかがするのです?」

 もちろん売るよ! でも言わないよ! スヴァに忠告されたからね。

「まだ検討中です」

「「ほう。そうですか」」

 ヘクタとルミエールの声が重なる。

 やめて。その獲物を見る目はやめて。

「あ、あの、マクベス砦に行く前に、街に行きたいんですけど」

 これは無理やり話題を変えよう。

「まだ、街に用事が? まさか冒険者ギルドにハッカサユリ草を売りに行くのではないでしょうね?」

 ルミエールが鋭く突っ込む。

「違います! 今日貴重な薬草を採取できたのは、貧困層で出会った少年のお陰なので、その少年に私からもう少しお礼をしたいと思いまして」

 うまく事が進めば、冒険者ギルドにも行く予定だけど、ここでは黙っておこう。

 ルミエールが少し考えてから頷いた。

「いいでしょう。では砦に向かうのは明後日にしましょう」 

「ありがとうございます!」

 よかった。お礼は早いほうがいいからね。

「ティティルナ殿、私からその少年にいくらか報償を出しましょう」

 ヘクタが穏やかに付け加える。

「えっ!? いいんですか? 報償はゴーストを視たことを通報しなかった分の罰と帳消しかと思ってました」

「それを差し引いても、その少年がいなければ、貴重な薬草を手にいれられなかったのは確かですからね。ティティルナ殿からお渡ししておいてください」

「ありがとうございます! きっと喜びます!」

 やったっ。お金はいくらあってもいいからね。

「ティティ、それなら貴女からのお礼は渡さなくてよいのではなくて?」

 ブリアが口添えをしてくる。

「いえ! やっぱり儲けはわけないとだめです。私の気がすまないし」

 そう儲けは独占しちゃだめなんだよ。ちゃんと配分しないと。 

 にしても、よかったなあ。ロルフ。

 ティティの顔がふにゃっと緩む。

「あ、ティティルナ殿? ついでに冒険者ギルドにハッカサユリを売ろうと少しでも考えているなら、私に売ってくださいね」

 ヘクタ様がその隙をつくように、さりげなく提案してくる。

 まだ売るとは言ってないのになあ。

<お主自身が薬を調合できない場合、売る一択だからな>

 そっか。私はまだ7歳の女児だ。薬の調合などできない可能性が高いからの提案か。

 バレバレだね。ならば、こちらも正直に言うか。

「おゆずりしたいのは山々ですが、冒険者ギルドに売る事に意義あるというか」

「珍しい薬草を売ると、ランクの評価につながるのです」

 ブリアが助け舟を出してくれる。

 そうそう。そうなのよう。

「そうか。そういう制度がありましたね」

 ヘクタさまは顎に手を当て考え込む。

「それならば、私が指名依頼を冒険者ギルドに出しましょう。それならば問題ないでしょう」

 ルミエールが自陣の領地の件で、冒険者ギルドについても勉強したのか、すかさず提案をしてくる。「ええっ。でも、私まだ低ランクですから、指名依頼ってできるんですかね?」

 ブルコワ様は領主権限発動して、依頼してくれたけど。

「私であれば、問題ないでしょう」

 ヘクタさまがすかさず乗ってくる。

「大変申し訳ないのですが、アイデアを出したのは、私です。ここは譲ってもらえませんか?」

 ルミエール全然申し訳なさそうじゃないよ。

「領主権限で指名依頼を出せるのは、私ですよ」

「私も東の領主の息子です。指名依頼を出せます。たとえ他の領地にある冒険者ギルドであってもです」

 うわあ。ヘクタさまとルミエールの視線がバチバチ音を立ててるようだよう。

 こわいよう。

「わかりました! 売る時は売る分の半分づつお売りするようにしましょう! 売るか否かは保留です!考えさせてください!」

 さっき検討中って言ったよね?!すぐには返事しないぞ!

 私もちょっとこの場の雰囲気にのまれてる。

 あぶない。あぶない。

<よい判断だ>

 でしょ? 私も学んでるよ。

「「わかりました」」

 はあ。お偉方との交渉は神経使うから、大変だよ。

<そうか。結構、ずばずばと言いたい事言ってるがな>

 そりゃそうだよ。無礼にならない程度に、こちらが損しないようにしないとね。

 恥ずかしい思いしたんだからそのくらい当然さ。

いつもお読みいただきありがとうございます!

少しでもおもしろいっと思っていただけましたら、ブクマ、評価をどうかよろしくお願い致します。

励みになります~。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ