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第278話 みんな仲良くね?

「ルミエール殿? 何か問題が?」

 ヘクタの目がきらりと光った。

 こわっ! 喧嘩はやめてね!

「いえ。お分けするのは問題はございません。けれど、ティティルナが採取方法というか、生育の方法を知っていましたので、貴重な薬草が手に入った訳です。つまりは、ティティルナがいなければ、薬草は手に入らず、ゴーストの討伐だけで、終わっていたでしょう。そのティティルナは現在我が領の視察団の一員です」

 おまめだけどね。

 ルミエールの目も怖い。なんで? わからんけど、穏便に行こうよ?

「それはティティルナ殿がその場にいたことは、我が領地の幸いとなりましたね。我が領地は何分、魔王領に一番近い領地。魔に対抗する為の手段は一つでも多い方がいい。それもアンデッドの浄化に役立つ薬草となれば、是非とも手に入れたいものです」

「ええ。そうでしょうね。こちらとしても、視察させていただいている身、お分けするのはやぶさかではありません」

「我が領地で採れた薬草です」

「取れた薬草はティティルナのものにしてもよいとの許可が出してもらっておりますから、薬草はティティルナのものです」

 ええっ!? ヘクタ様が許可したのは死んだ薬師が育てた薬草だよ?

 それを拡大解釈するっ?

「ほう、ではルミエール殿は薬草はいらぬと?」

「そうは申しておりません。先程も申しましたがティティルナは今現在わたくしどもの視察団の一員です。彼女はそこを十分弁えていると思いますから」

「そうか」

「そうです」

 そこで、2人の目が一斉に向いた。

「ひっ」

 こえーよ。2人の目がマジだ。

「「それで、ティティルナはどのように考えているのか」」

 なんでそんな圧をかけてくんの?

<領主は言わずもがな、東の領地の息子も薬草を欲しいんだろうよ>

 あ、ルミエールも欲しいんか。

<それはそうであろう。滅多に採取できないものぞ。我もこの姿でなければ、おのれで研究したいものである>

 あ、最後にスヴァの欲望がもれたよ。

 へー。やっぱ、領地のおえらいさんは部下を守るためにも必要なんだな。

 かくいう私も、お金を得る為に欲しいからね。

<お主、売り払うとは言わぬほうがいいぞ>

<なんで?>

<言えば、2人がその分を買い取らせて欲しいと言うだろうからな>

<それは困るよ! 冒険者ギルドに売ってこそ、評価につながるんだから!>

 早くランクを上げたいんだからっ。

<ならば、少なくともこの地を離れるまでは、売らぬほうがよいだろうな>

<む~! わかった! 自分の分をどうするかは後にする! 忠告ありがと!>

 ともあれ、独り占めするつもりはないから、安心して欲しい。

 だから、圧を掛けるのやめて!

 口で笑って、目で笑わないってのもやめて欲しい。恐いから。

「この薬草を手に入れられたのは皆様のお力があってこそです。なので、均等にわけようと思います」

 ルミエールも欲しいっていうなら、3等分すればいいだけだからさ。

「均等ですか?」

「はい。私が視察団について、ここに来なければ得られなかったですし、採れたところはブリストンですし、3等分に分ければいいのではないでしょうか?」

 みんな仲良く均等に。これで喧嘩はないよね。

「「うむ」」

 領主さまとルミエールはしばし考えた後に頷いた。

「配分感謝します」

「私もそれで構いません」

 なんか2人とも上から目線なんだよな。当たり前だけどさ。

 まあ、納得してくれたらいい。

「ブライト」

 ヘクタが呼びかけると、ブライトが収納袋を差し出した。

 やっぱ、領主さんだよね。

「ルミエール様はどうしますか?」

 ヘクタが尋ねる。

「私も持ち合わせています」

「えっ。ルミエール様の収納袋、時のとまるものだったの?」

「そうですが、何か?」

 そう睨まなくても。時が止まる収納袋って珍しいんじゃないの?

<視察で何かある場合の用心で持たされているのではないか?>

<そっか>

 今まさに役立ってるんだから、よかったねえ。

 そこまで考えて行動するなんて、疲れそうだけど。

 ルミエールもこうなることがわかっていたのか、この場に収納袋を持参していた。

 先々を考えての行動ってすげえな。

<少し考えればわかろうに>

 えっ。私には無理ですよ。

「ではここで分けてしまいましょう」

 そこで、私は素早く、2つの収納袋にハッカサユリ草を入れた。

 ちゃんと3等分したからね。

 全部出して、3等分する訳にはいかない。

 そんなことしたら、すぐに枯れてしまうかもしれないからね。

 だから私を信じてもらうしかないよ。

 私、ちゃんと3等分したよ。

<大丈夫だろう。ルミエールもブライトもあの場にいたのだ。大体の分量はわかっている筈だ>

<そっか。よかった>

「はあ」

 やっと面倒臭い交渉事が終わって、思わずため息が漏れてしまった。

「ティテルナ殿には面倒かけてしまいましたね」

 くすりと笑いながら、ヘクタがねぎらってくれる。

 さっきの顔とは違い、柔らかい笑顔だ。

 お貴族様って使い訳上手だね。

 ルミエールは安定の仏頂面だけど。

 そのルミエールが口を開いた。

「明日から私はこの城に残り、こちらの魔法士薬師と協力して、ハッカサユリのポーションの研究に専念します」

「え、明日からの視察はどうするんですか?」

 まさか。中止ってことはないよね?

 ないよね~!?

 

いつもお読みいただきありがとうございます!

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