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第277話 スヴァの手柄は私の手柄♪ で、いいの?!

「さて、ではそろそろ今日の昼の出来事について話をしようか」

 テーブルに着いている皆にお茶が配られたところで、ヘクタがそう口火を切った。

 それはかまわないけど、ブライト夕飯はいいの?

 それにブライトの分のお茶がないけど大丈夫?

<お主は、会談に集中しろ>

 スヴァから注意が飛ぶ。

 そのスヴァも声がよく聞こえるようにか、ティティの足元に歩み寄って来た。

 ちなみに今席に着いているのは、上座から西の領主であるヘクタ、ルミエール、ヒース、ブリア、そしてティテ ィである。

 お茶を出した後、執事やメイド、そして護衛までもが部屋から出て行ってしまった。

 ううむ。まさに重大な話し合いをしますよって感じだ。

 そこに私がいるのが、場違いだね。

<何を言っている。今日の話し合いの中心はお主ぞ>

<え、マジ>

<街中でのゴースト発見といい、貴重な薬草入手といい、どちらもお主が関わっておるだろう>

<それはたまたまだろ?>

<ゴースト情報はたまたまだとしても、薬草を手に入れられたのは、お主がいたからだ。愛し子であるお主がいなかったなら、手に入らなかったであろう>

<愛し子っていうのやめろ! なんかスヴァに言われるとくすぐったいぞ!>

<何をいまさら。ほら、領主が口を開くぞ>

「元薬師の家にてのゴーストの発見、そして退治については先に帰還した者に話は聞いている。ゴーストの第一発見者はティティルナ殿であったとか」

 ヘクタ様、私見てるよね? これは私が発言してもいいのかな?

 ルミエールをちらりと見ると、頷いている。

 いいんだね?

「いやあ、お庭で薬草を採ろうとしたら、ゴーストが窓からこちらを睨んでいたんですよ。たまたま見つけられたんです。ははは」

 視たのはスヴァですけどね。私にはゴーストはこれっぽちも視えなかったよ。私はただの伝言しただけです。

「ご謙遜を。なんでも微弱なゴーストであったとか。我が領の手の者でも見切れなかったものを見抜くとは、ティティルナ殿はよい目をお持ちなのですね。流石御使い様の愛し子であられる」

「本当っ! たまたまですから!」

 そこは軽く、軽ーく済ませたいところだよ!

 それに視つけたのはスヴァだから! 言えないけどね!

<よいではないか。我はお主の従魔なのであろう? 従魔の手柄はお主の手柄で>

<そっか? なんか、横取りしたようで、やなんだけど、スヴァがそういうなら>

<お主も変なところで真面目よの>

 スヴァはティティの足元で顔を洗っている。

 今日埃っぽいところに行ったからな。汚れたか。

 また洗うか?

 そして言いたいヘクタ様!

 真顔で愛し子って呼ぶのやめて!

 恥ずかしいから。

「これでようやく東の書状の疑問が解けました。東でもティティルナ様にご助力いただいたのですね?」

 ルミエールに顔を向けて、ヘクタが問いかける。

「はい。今回の件のように、ティティの知識に大いに助けられたのです。その知がなければ、我が領地は今も苦しんでいたことでしょう」

「それほどですか}

「はい。彼女の知識はまさに偉大なる力でありましょう」

 やめて。顔が赤くなるからっ。

「だからこそ。その存在を隠匿する必要があるのです。心無い者に利用されないように」

 ルミエールが念を押すようにヘクタに告げる。

「ええ。わかっております。ティティルナ殿が御使いさまの愛し子であることは誰にも申しません」

「はい。ティティが望まぬのですから。それは守られるべきです。そうしないと、御使い様の怒りに触れます」

 そこでぶるっとルミエールが身を震わせた。

 ヒースとブリアの顔もちょっと悪い。

 あー。確かに国守さまの雷こわかったもんね。

 私は、びっくりしただけだけど。

<お主は肝が据わってるな。>

<違うよ。国守さまが私に何かするわけないって思ってるからだよ>

<そこまで全幅の信頼をしてるのか>

<あ、私同じくらいスヴァも信じているから、すねないでね?>

<すねるか。そういう話ではない。他の者をそこまで信頼するのはどうかと思っただけだ>

 だって国守さまだよ?

 信じないってなくない?

<はあ。お主は。だから愛し子なのかもしれぬな>

 何1人で納得してんだよ。

 ルミエールたちの顔色をみて、もう一度頷いて見せる。

「ええ。ブライトと私の二人の胸だけでおさめておきます」

 そこで一旦間をおいてから、ヘクタは話を進めた。

「その愛し子の知のお陰で、多大な益を受けられるのですから、なおさらです」

 ヘクタは再びティティの方を向いた。

「ゴーストを倒した後、ティティルナ殿のお力で、貴重な薬草を手に入れられたとか。それは今ここで拝見することは可能ですか?」

 その言葉にちらりとスヴァを見やる。

 スヴァは首を振る。

<やめておいたほうがいいだろう。薬草を調べ、ポーションを作れる段階になってから、収納袋から出した方がよい。どうしてもというのなら、時を止める収納袋を用意し、すみやかに移す時にちらりと見るくらいにいておかねば、劣化が進むぞ>

 だよね。

 ティティはスヴァに聞いた話を、口にした。

「今回採取に成功した薬草は、ハッカサユリ草と言って、とても儚く短命な花です。生を受けて枯れるまで本当に短いのです。この花で作ったポーションは強力なアンデッドでも一瞬で浄化してしまえます。作り方も繊細なようなので、迅速に行わなければならないでしょう」

「ハッカサユリ草ですか。聞いた事のないですね」

 ヘクタが呟く。

 帰ってくる途中にルミエールたちにも聞いたけど、知らなかったよ。

<そうであろうな。早々手に入るものでもないしな>

 そうだね。誰かが、恥ずかしい思いをしなきゃならないものだしねっ。

<いや、聖力、あるいは聖力に類する力を持った者がいなければ、発芽しないからだ。発芽条件が厳しいからという意味だぞ>

<踊る立場から言わせると、気持ちが一番重要だよっ>

 ティティは口を尖らせる。

 誰でも踊りが上手いと思うなよ。

<いいから続きを話せ>

 わかったよ。

「幸い時が止まる収納袋を持っていたので、今のところ枯れる心配はありません。こちらの魔導士の方々、もしくは薬師の方、あるいは錬金術師の方々が薬草の性質やポーションの作り方を早急に調べたうえで、お渡しした方がよろしいかと」

「ああ、しかし、それほどレアな薬草であると、すぐに作れるというものでもないと思う。ならば、時の進みを止める収納袋は私も持っている。そこに分けてもらえないだろうか」

 うん。それならいいよね。

 スヴァも頷いてるし。

 そっか。そうだよね。すぐに調べられるものでもないか。

「おまちください」

 おっと。ルミエールから待ったが入った。

 なんで?

 事前に分けようって話してたもんね。

 まさか。分けないなんてないよね?

 

スヴァは名誉なんて欲しくないんだろうなあ。ましてや、出世したいなどなさそうですね。

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