第267話 薬師のお家の中はどんなかな?
ゴーストが本当にいると判明した後の対応は、早かった。
ブライトの指揮の元、あっけないほどに薬師のゴーストとその仲間たちは魔石を砕かれて、消滅してしまった。
私? ちょちょっと前に出ようとした途端に、ブリアに掴まって、最後方へと下げられてゴーストが退治されるまで家の玄関、いやお庭で薬草採取すら許されなかったよ。
ブリアから超怖い顔で、ダメ出しされちゃったよ。
私がゴーストになった薬師の家の中へ入るのを許されたのは、安全が確認されてからだった。
<お主、先程までゴーストを怖がっておったではないか>
<怖かったよ。恐かったけどもだ、薬草も重要だからさ>
恐怖に負けて、メシが食えるかってんだ。
<お主‥‥>
やめて。その呆れたような目で見つめるの。
それにどうやってゴーストを退治するか実際に見たかったのに。
今後もしゴーストに遭遇した時の参考にしたかったのにな。ちぇっ。
ぶうっと膨れながらも、ティティは薬師の家へと入る。
すると、正面にカウンターがあり、壁には背の高い棚があって、お店のような作りになっていた。
あれっ?他のお店に薬草を持ちこんでたってきいたけど。
元は、ここでも薬を販売していたのかもしれない。
その部屋を抜けて、スヴァを連れて、奥の部屋にも入る。
そこは調剤室だったらしく、壁際の棚には薬品が入った瓶が並んでおり、天井から枯れた薬草が釣り下がっていた。
中央にある机の上には、器材がキチンと整理され置かれていた。
あ、私が先頭で入った訳じゃないよ。大人組が先。
本当みんな過保護だよね。
<お主が、あやういからだろう>
<何をいう! 私ほど慎重な人間はいないよ!>
心話でそう主張した途端、スヴァに胡乱な視線を向けられた。
納得いかんぞ。
ここで言い争いしても仕方ないからね。
スルーしてあげる。
決して逃げじゃないからね。
気をとりなして、ティティは部屋を見回す。
「なんか、どんより空気が満ち満ちってません? この部屋?」
「どんより空気? おもしろい言い方だねえ。ティティちゃんの言いたい事はなんとなくわかるけど。締め切りだったからじゃないかな」
ブライトが答えてくれる。
「そうなんですかね」
それだけじゃないような気がするけど。
「結局ゴースト、何体くらいいたんですか?」
「人型が10体、四つ足が2体ですね」
「ふええ! 狭くはないけど、この家に何でそれだけのアンデッドがいたんでしょうか?」
それになんで見つからなかったの?
「それなんですよねえ。2階も確認しましたが、結構片付いていて、綺麗に掃除されてましたし。ゴーストが発生するような要素はなさそうなんですけどねえ。これなら、不動産屋が薬師の願いを聞いたのもわかる気がしますね」
そうだね。この部屋も片づけされてるよね。
「ぱっと見、問題ないように見えますものね」
ブリアも頷いている。
「ああっ! 私の出番がなかったのが残念だ! せっかく私の雄姿を小さなレディに見せる絶好の機会だったのに!」
ヒースが胸に手をあて、頭を振って嘆いている。
今回は地元チーム、それも魔法士抜きで対応が可能だったらしい。
「うう。にしてもやっぱりここ、息苦しいよ。窓開けていいですか?」
やっぱ、なんかみっちみっち感が半端ない。カーテンが閉まってて薄暗いからそう感じるのかな。
まだ、薬師が居そうな雰囲気がする。
なんでみんな平然としてるのかな。
<窓をあけるのは少し待て。少し気になることがある。それを確認してからにしてくれ>
えっ。なに?
安全は確認されてるはずだけど?
何かあるの?
うえー。でも確認は早くしてくれよ。なんかぐえってなりそうだからさ。
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