第265話 薬草♪ 薬草♪ お金の種♪ ひょっ?!
薬草♪ 薬草♪ お金の種だよ♪
<おい、ティティ>
ティティについて庭に来ていたスヴァが心話で話しかけてくる。
<なんだよ。お前も手伝ってくれよっ! 美味しいものを買う為のお金を稼げるんだぞ!>
さっさと採らないと踏み荒らされてしまうだろう!
スヴァには目もくれずに、せっせと薬草を摘む。
急げ! 急げ!
そんなティティにスヴァが爆弾を落とす。
<視てるぞ>
スヴァがポツリと告げる。
<見てる? ああ、ルミエール様か? 顔顰めてるかもしんないけど、こっちは飯の種だからな。物理的に止められない限り、私は採りまくるぞ!>
<違う。家の中から視てる>
<へ?>
<窓にへばりついて、お前が薬草を採るのを睨んでるぞ>
<だ、誰が?>
<おそらく元家人の薬師じゃないか>
ぎぎぎと音がするほどぎこちなく、ティティは首をスヴァが示した窓に向ける。
何も見えない。薄暗い部屋がぼんやりと見えるだけだ。
本当いるのか?
<スヴァって、ゴースト視えるの? うっすい奴でも?>
<当たり前だろう。視えないわけなかろう。我を誰だと思っている?>
スヴァが憤慨したようにティティを睨む。
そうだな。元魔王さまだもんな。視えない筈ないな。
<赤い目を吊り上げて、怒り狂ってるぞ。お主、敵認定されたのではないか?>
スヴァのその言葉にティティはびょんと身体を起こすと、ぴゅーっと庭の外へと飛び出した。
「ティティ?!」
ブリアが突然薬草を採るのをやめたティティに戸惑い、追いかけてくる。
ティティはルミエールの後ろに隠れて、そっと顔を出して先程の窓を見るが、全く見えない。
けど、そこにいるらしい。
こええ。こええよう。
<お主、ゴーストを視たいのではなかったのか?>
ティティの様子を見て、スヴァは不思議そうにしている。
<そりゃ、視てみたかったけれどもっ。私がゴーストに見られたくはなかったというか>
いや、反射的にぞぞっーっとなってしまったんだよっ。
<スヴァ、まだこっち見てんのか?>
<見てるな。ちなみに増えてる>
「ひょっ!?」
「小さいレディ? どうしたんだい? 震えてるじゃないか」
ヒースがティティの横に来て、心配そうに顔を覗き込む。
「い、いるんです」
ティティはガタガタする顎を必死に動かし、訴える。
「いる?」
「ゴーストが窓から私を睨んでるんです! 私が、薬草を採ったから!」
「「「「!」」」」
刹那、その場の空気ががらっと変わった。
「それは本当ですか?」
ルミエールが自分の前にティティを引っ張りだして聞いてくる。
やめてやめて。見つかっちゃう。
<もう見つかってるだろう>
スヴァ! 冷静な突っ込みいらないから!
「ティティ! どうなんですか?!」
「いるいるいますよ!! 死んだ薬師さん、怒り狂ってて!」
なんだよ! もう君は調合できないんだから、分けてくれてもいいだろうがよ。
もう死んでるんだから、薬草は諦めてよう。
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