第261話 アンデッド講座
「ふーんふん♪」
ティティは超ご機嫌である。
なぜなら、言わなくてもわかるだろうが、敢えて言わせていただく。
今まさに、馬車に乗り込み、問題の薬師の家に向かっている最中だからである。
直前で止められることもなく、無事に馬車に乗りこめて、ホッホッホッと高笑いしたぐらいである。
やったら、ルミエールにつまみ出されそうなので、やらんけどな。
随行者はいつものメンバーと騎士が10人と魔法士が5人である。
過剰すぎる人数ではないかと思うのだが、やはりルミエールという領主の息子がいるからだろう。
仕方ないね。
「楽しそうですね」
ブライトが向かい側から恨めしそうな目で、ティティを見て来る。
「そうだね! だってさ、こんな機会滅多にないよ。安全に守られながら、アンデッドの討伐に立ち会えるなんて」
残念なのは、冒険者ギルドの依頼として受けていないので、ランクアップと報酬につながらないことだ。
しかし、珍しい薬草を入手できれば、買取のお金も弾んでもらえるだろうし、もしくはランクアップの評価につながるかもしれない。
なんと言っても、薬師の庭だ。期待していいだろう。
「ティティちゃん、少しも悪びれないんだから。いいよ、もう」
ブライトが諦めたように呟いた。
そう? ならば質問しちゃおうかな。
「はい! ならば、ブライトさん、質問していいですか?」
「遠慮まったくしなくなったね」
うん。もうしなくていいかなっと。
「いいよ。どうぞ」
「アンデッドって、どうやって倒すんですか?」
「ブライト殿はお疲れのようだ。それならば、小さなレディの問いに、私が答えようではないか。よろしいですか、ルミエール様?」
ルミエールもいるし、護衛という立場から大人しかったヒースがそこで主張してきた。
黙ってるのに、飽きたかな。
「いいでしょう」
ルミエールさま、真正面からそんなに睨まなくても。
「よろしいですか? 私どうしてかもう疲れを感じてまして、お願いします」
ブライト、言葉にとげがあるよ。
任せられるところは任せてしまえって感じですか。
昨日から手配とか連絡とかで忙しかったですもんね。
ま、答えを聞けるなら、ブライトでもヒースからでもどちらでもかまわないよ。私は心が広いからね。
<心が広いというより、図太いのだろう>
足元にちょこりと座るスヴァが心話で突っ込みを入れてくる。
<失礼な。気持ちがおおらかと言って欲しいな>
<それは違うぞ>
「ヒースさん、教えてください!」
「いいとも! 小さなレディ! アンデッドを倒すには大きく分けて二通りの方法がある。その一つは聖女さまや聖人様が魔法をかけて、浄化してしてしまう方法だ」
「なんでも、一瞬で消滅してしまうらしいわ」
ティティの横に座るブリアが補足する。
「うわあ。すごいですね」
聖女や聖人がいたら、大陸の魔素や呪素も少なくなるんじゃね?
<残念ながら、効果が望めるほどに、そやつらの人数はいないな。局所的には有効でも全体からみると微々たるものだ。だから、我ら魔族が必要なのだ>
<そっか。残念だな>
一つ目の方法は万人向きじゃないね。
次の方法に期待しようかな。
私もいずれアンデッドに会うかもしれないからね。
ちゃんと対処方法覚えておかないと!
ブライトさん、お疲れです。そしてティティも遠慮なし。




