第259話 んで、経過はどんな感じ?
街中にゴーストが発生した。
その情報は結構大事になった。
領主ヘクタには即報告され、領主からすぐに詳細を調べよとの命令が下った。
日を跨ぐことなく、その建物の管理している不動産屋が呼びつけられた。
一日の仕事を終えて、やれやれと思ってるところに呼びつけられて気の毒に、不動屋さん。
けど、ゴースト発生の通報をしなかったことを、咎められるよりはいいよね。
その問題のゴーストが出る家の現状はと言うと。
その家は長い間、貧困層で出会った少年、ロルフが語った通り、年老いた薬師が長い間住んでいたようで、その薬師は大変研究熱心だったらしい。その薬師が少し前に亡くなった。
その薬師は亡くなる前に、自分が亡くなって半年は誰にも売らないでくれと不動産屋に話したらしい。
城壁内の土地は基本、領主のものであるが、土地を所有する事はできる。最初に土地代と税を収めれば、取り上げられることもないのだ。
ちなみに魔王領に近いこの領は他と比べて比較的安いらしい。危険手当みたいなものかもしれない。
土地の管理は城からの審査をクリアした数人の不動産専門の商人が任されている。
その問題の土地と家は、相続する者もなく、領の規定により、税金が滞納されれば、領主に返還される。
今回のケースの場合、所有者死亡で相続人もいない為、税金うんぬん以前に、即刻領主に土地が返還され、新たな売り手を探すことになる。
が、一年分の税金が先に支払われた為、元の所有者の最後の願いを聞き届けられたらしい。
そこに金が動いたかどうかは不明だ。
けれど、その不動産屋はちゃんとした手続きをとっていた。
薬師が住んでいた家は経年劣化がかなり進んでおり、次の買い手によっては立て直しもありだと判断して、買い手を探すまでの間、放置されていた。
「でもだからって、ゴーストが出現しますか?」
翌日の昼、騎士用食堂で、ブライトから状況を聞いて、ティティは首を捻る。
あ、今日の定食もお肉中心で美味しかったです。
デザートがないのが、残念です。
でも、文句は言わないよ。
ブライトは朝から色々走り回っていて、朝食も馬車の中でだったらしい。
お疲れさまです。
私たちはというと、詳細がわかるまで、お城の自室で待機でした。
こちらにまで手がまわらないってね。
「いや、可能性は低いね。いくらこの領でも空き家にすぐゴーストが発生するなんてありえないよ。それだったら、街中がゴーストだらけになるよ」
「そうですよねえ。じゃなんで、ゴーストが出たのかなあ」
「ゴーストが発生する環境の必要条件としては、魔素の濃度ね」
ブリアが考え考え呟く。
「ああ、なんということだ。考えられるとしたら、その偉大な薬師殿が遥かなる高みに昇る前に、何かお土産を残して逝かれたのか」
ヒース、言い方が貴族的だなあ。似合うけどね。
「聞こうにも、本人はもう死んで墓の中っと」
「ええ、薬師の遺体は共同墓地に埋められたらしいです」
ブライトが書類を見ながら答える。
個別な墓ではなくて、合同墓地。
墓場のある一定のところにお金のない人たちが埋められるところだ。
遺体は放置しておくと、疫病が発生したり、魔物が寄ってきたりするので、埋められるのである。
まだ死んでから日にちが経ってないなら、薬師の遺体を掘り起こすのもできるかもしれないが、掘り起こしたところで話を聞けるわけではない。
私も共同墓地だろうなあ。まあ、死んだ後だから簡単でいっか。
あ、死んだ薬師もそう考えたのかな。
でも家賃を一年分払うなら、そのお金でもっと手厚い扱いをしてもらったほうがよかったのではないかなあ。
<あ、そういえば、ジオルの死体はどうなったのかな>
<おそらく、我とともに、消滅したであろうな。実際には大いなる深源たる河に取り込まれて、跡形もないだろうよ>
<そっか。よかった。そのまま放置されて腐っていくのも嫌だからさ>
<放置された場合は、もれなく魔物のえさになるだろう>
<それはそれで複雑だな>
自然の流れとはいえ、魔物に食われたくないな。
<そうか? 無駄に腐るよりいいと思うが>
元魔王様は割り切りがすごいな。
んん。話がズレた。
戻して戻して。
裏付けとるのって大変そうですね。




