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第258話 働いたからね、ご褒美は欲しいです

 ティティはロルフと別れた後、一旦引き上げる事にした。

 後ろについて来てくれるだろう、みんなにわかるように少し大きめに声を上げる。

「さて、そろそろ帰ろうかな」

 これで後ろの大人組も併せて引き返しくれるはずだ。

 ティティは踵を返すとゆっくり歩き始めた。

 それからほどなく、先程と同じ場所に止まっている馬車を見つけると、乗り込んだ。

「あれ? 誰もいない」

 なんで?

 私よりも馬車の近くにいたのに。

<先に帰ってきたら、お主の護衛ができぬだろう>

 スヴァが心話で呆れたように呟く。

<そんな心配することないのにな。私は一人で帰れるよ?>

<そういう問題ではない>

 スヴァとそんな問答をしていると、馬車の扉が開いて4人がほどなくして入ってきた。

「おかえりなさい」

 にっこり笑って出迎える。

「はいよ」

「小さなレディ、けがはなかったかな?」

「ティティ、お疲れ様」

 ブライト、ヒース、ブリアは三人三様にに挨拶を返してくれた。

 が、1人返しがないルミエールをじっと見つめる。

 無視かいッ。

 まあ、期待はしてなかったけれど。

 しかし、大人組が全員入って来たから、馬車の中は少し窮屈だ。

 まあ、ティティ自体やせっぽちだから、端によれば、ぎりぎり5人座れるけどね。

 席順としては、ルミエールとヒース、向かい側にティティ、ブリア、ブライトの順だ。

「いやあ、あんなやり方があるんだね。参考になったよ」

 皆が座り終わると、早速ブライトが口を開いた。

「そうですか?」

 私なんか変わったことしたかな?

「我々が住人の意見を聞くとしたら、何か困った事がないかダイレクトに聞くだけだからね」

「それが正当じゃないでしょうか? 私は私がそう聞いたところで、彼らの要望に応える事は100パーできませんからね。ならば、自分の助けになりそうなことを聞いただけですから」

 それに、私の第一の目的はおチビたちにお肉をあげることだっただから、情報は二の次だからさ。

「それでも、それはまた彼らがどういった視点を持っているか、わかった」」

 なんだ、ルミエール喋れたのかよ。

 そんな皮肉を飲み込み、彼に応える。

「おチビたちの視点ですよ? 役に立ちますか?」

「小さなレディ、街の人間の声はすべて貴重さ。それにやり方もね」

「ありがとうございます。ヒースさん」

 ヒースの言葉なら、素直に頷ける。

 ルミエールよ、人徳の差だぞ。

<お主も気を付けよ>

<黙って、スヴァ>

 前足で顔を洗いながら、言われても説得力ないから。

「それにしても、私たちの会話すべて聞こえてたんですか?」

「いや、すべてではないよ。最初のほうだけだ。僕が近づいて、少し聞き耳を立てただけ。おチビちゃんたちが逃げ出したら、困るからね」

「そうですか」

 確かにね。貧民街に暮らすおチビたちは一応に大人に言い含められているだろうからな。

 けど、おチビだから、ちょっと油断して攫われたする。

 それも厳しい現実である。

「それで? 君が欲しい情報は聞けましたか?」

 ルミエールよ。私が欲しい情報って何? 私はおチビたちにはたいして期待してなかったよ。

 街の雰囲気を感じられたのが一番の収穫かな。

「どの子も一生懸命教えてくれましたが、ほとんどは雑談に毛が生えた情報でしたね」

「小さなレディ、その表現はどうかな?」

 ヒースが顔を顰める。

 おっと少し、表現が悪かったかな。

「あ、でも1つ、面白い情報が聞けました」

 そうそう、ロルフの情報は超お役立ち情報じゃね。私にとって。

「ほう。どんな情報だい?」

 ブライトが少しこちらに身を乗り出して尋ねる。

 ちょ、狭いから、あまり動くなて。

「えっと、この貧民街の隅っこの空き家にゴーストがいるって情報です」

 途端、ブライトの顔が引き締まる。

「ティティちゃん、それ本当かい?」

「えっ? 確かめてはないですけど、その情報をくれた子が見たって言うから、おそらく本当じゃないかと。えっ、何か問題でも?」

「問題大ありだよ。街で魔物を発見した場合、即座に冒険者ギルドか城に通報しなくちゃいけないんだ」

「そうなんですか? ゴルデバの街の冒険者ギルドではそんな話聞きませんでしたけど」

 王都だって、街にゴースト住み着いてたよ。それに通報義務はなかった筈。

「そうだね。通報義務があるのは、ここだけだよ」

「えっ。そんなローカルルールがあるんですか?」

「そう。ここは魔王領に最も近い街だから。魔物が街で暴れられたり、増殖したりして、街が壊滅状態になったりしたら、魔王領に飲み込まれてしまう可能性があるだろう?」

 なるほど、そういう危険性があるのか。

「子供たちはそんなルールがあるなんて知らなかったと思います。罰を受けたりしないですよね?」

「ああ、大丈夫。うまく処理しておくから」

「お願いします」

 私がブライトに話したせいで、ロルフが罰を受けたら、申し訳なさすぎるよ。

「うん。でも今後抜けがないように周知徹底をしないと」

 ブライトが考え込みながら、呟く。

「それにしてもアンデッドか。一番まずいな」

「そうなんですか?」

 ブライトが顔を顰めるなんて珍しい。いっつもへらへらしてるのに。

「ああ、アンデッドはここでは増殖しやすいんだ」

「あ、魔王領が近いから?」

「原因ははっきりとはわからないけどね。影響はあると思うよ。城に報告して、すぐに調査をしなくてはならないね。そして、本当にいたなら、すぐに殲滅する必要がある」

「小さなレディ、お手柄だね!」

「本当よ!城へ急ぎましょう」

「早く馬車を出しなさい」

 ヒース、ブリアありがとう。

 ルミエール、誉め言葉なしかいっ。

 あ、ブライトに庭の薬草採ってもいいか、聞いとかないとっ。

 ご褒美としてお願いしてみよっと。

いつもお読みいただきありがとうございます!

少しでもおもしろいっと思っていただけましたら、ブクマ、評価をどうかよろしくお願い致します。

励みになります~。

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