第256話 情報収集は二の次っ!
馬車は貧民街から少し離れたところにとめてもらった。
ティティとスヴァはそこで降りると、てくてくと徒歩で進む。
それからちらりと後ろを振り返ると、ティティが思っているよりも近い位置でぞろぞろついてくる。
ティティは顔を顰め、身振り手振りでそれを追い払う。
「もっともーっと離れて! 隠れてついてきてくださいっ!」
最後に小声で指示を出した。
まったく素人か。
憤慨しながらも、更に進む。
昼間でも薄暗く、道や家屋が薄汚れた様相になっていく。
後ろをちらりとみやると、ヒースたちの影なし。
どうやら、やっとわかってくれたようである。
ティティは更に進み、貧民街の中央の通りから一本中へと入ってみる。
そこできょろりと辺りを見回す。
一本裏へと入っただけで、危険度は倍増する。
油断禁物である。
「チビたちが居そうなところ」
ちんたら歩いてたら、変な奴らに絡まれてしまう。
今のティティの格好でも、ここらへんでは綺麗な部類で、外から来たことが丸わかりだからである。
やはり、少し服を汚してくるべきだったか。
それはそれで危険もある。
どちらにしも来てしまったのだがら、このまま進むしかない。
と、少し開けたところに、子供が3人石投げをして遊んでいた。
年のころはティティより1つ、2つ下くらいか。
「こんにちは」
ティティは迷わず近づいていく。
「誰だ!」
一番年上であろう子供が警戒心を露わに叫ぶ。
「ああ、怖がらないで。僕はこの街に来たばかりの冒険者なんだ。この街のことを少し知りたいなあと思ったんだ。ちょっと話を聞かせてくれないか」
「話?」
年長の少年の後ろに隠れていた2人のおチビも顔を出す。
「ただでとは言わないよ。少し話をきかせてくれたら、これあげるよ」
そう言って、肉の串焼きをみせた。
すると3人の目が串焼きに釘付けになる。
「どうかな?」
「話したら、それくれるのか?」
「うん」
「わかった」
「よし。じゃあ、近づいていいかな?」
「いいぜ」
年長少年の了解を得たので、ティティは近づいて行く。
「それで? 何を聞きたいんだ?」
「うん。僕が聞きたいのは、君が最近、もしくは少し前でもいいけど、珍しいものを見たり聞いたりしてないか? もしくはこれしたら、得したなんてことなかったか?かな?」
「なんだそれ?」
「そうだな。例えば、ここらへんで見ない動物をみたとか、変わった格好した人をみたとか」
「わたしみた! おみずがびゅーっとうえにでてるところで、おうたをうたってるひとをみた! すごいきれいなこえだった」
おチビ女子が、一生懸命話す。
「へえ。それは珍しいね。どんな内容の歌だった?」
「えいゆうさまのおうた。あくのまおうをたおしたってうたってたよ」
「へえ。そうなんだ」
残念。倒された魔王様、今まだここにいます。私の足元にね。
「よく教えてくれたね。はいこれ」
おチビ女子に串焼きを渡す。
「わあ!」
「ゆっくり食べてね。その串焼きは君だけのものだから」
おチビ女子はこくこく頷きながらも、口はせわしなく動いている。
「お、俺も教えることあるぞ!」
「ぼ、僕も!」
年長少年とおチビ男子の2人もよだれを垂らさんばかりに、叫ぶ。
「うん。順番に教えてね」
そうして2人に話をきいて、串焼きを渡していく。
「ありがとう。助かったよ。またね」
「「「うん、ありがとう」」」
ちゃんとお礼が言えるなんて、ちゃんとしてるほうだ。
「いいんだよ。串焼きはお仕事の報酬なんだからね。自慢していいんだよ」
「お仕事?」
「そう、立派なお仕事さ」
「へへ。わかった」
3人の自慢げな顔に手を振りつつ、ティティはそこを後にする。
さてサクサク行こう。せっかく沢山串焼きを焼いてもらったのだ。
できれば、全部配ってしまいたいからねっ。
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