第250話 そんなにっ?!
今回はお城のあてがわれた部屋に紙や筆やインクがあったので、石板ではなく、予め紙に書いて来たのだ。その紙も存分にあったので、別バージョンも考えてみた。
自前の紙はなるべく使わないよ。くふん。
「昨日は即席で作ったので、紙で作ったのですが、何回も遊ぶなら、しっかりした素材で作ったほうがよいだろうと思いまして。」
まずは見せたのは、昨日の基本バージョンだ。院長先生をかたどりながらも、顔はのっぺらぼうだ。そこに一つ一つの目、鼻、口、眉などをそれぞれ作る」
そして遊び方も簡単に説明する。
「ほほう!これは興味深いですな!」
「ありがとうございます。私に作っていただきたいのは、孤児院の院長先生と、職員1人と年長組の1人のバージョンです」
そうして、作ってもらおうと思っている3人の似顔絵を追加で見せる。
「おお!これはティティルナ様が描かれたのですか?」
「はい」
「素晴らしい。師事をお受けになられたのですかな?」
「いいえ、落書きの延長です」
前も今も、私は親なしだぞ。んなわけあるか。
へへ。絵は得意なのだ。ジオル時代に孤児院のチビたちに色々描いてやってたからな。
褒められると、少し得意になちゃうよ。
「作ってもらうなら、馴染のあるお顔のほうが子供たちも喜ぶと思いますので」
「そうですな。店で販売するなら、そうもいかんでしょうが、注文を受けてから作るのなら、それができますな」
なんか私の言葉で、商売につなげてるらしい。
「それと、どうせ、作ってもらうならと、もう一つお願いしたいと思いまして」
もう一つ取り出したのは一枚の風景画を9等分した紙のパーツだ。
「これは?」
「はい。院長たちの似顔絵を描きながら、少し発想を飛ばしてみました。このばらけたパーツをちゃんと一枚の絵になるように、並べ替えるという遊びです」
そう説明しながら、ティティは並び変えて一枚の絵にしていく。
「これは小さな子供対象なので、パーツも四角で統一して、9等分と大きくしてますが、もう少し年齢が上の対象であれば、パーツはもっと細かく、そして不揃いなものにしていけば、難易度があがると思います。これも子供が喜びそうな絵で作って欲しいのですが。後はそうですね」
ティティは顎に手をあてつつ、考える。
「その絵の題材も、たとえば国の名所などにすると、子供たちも無理なく国内の地名や地理を覚えられるんじゃないでしょうか?」
勉強って子供はやがるし、飽きちゃうからな。これなら楽しんで学べるだろうと思う。
無理なく自然と、国の在り方を学ぶ前段階に使えるとよいのではないかなあ。
「どうでしょう? 作ってもらえますか?」
な、なんだ。周りの大人たちがティティの作ったものを食い入るようにみて、誰も言葉を発しない。
こわっ!こわいよ!
ティティはたらりと汗を流した。
やっぱ、商品になんないから、がっかりしたとか?
そこはそれ、子供作ったものだし、大目にみてよ。
せめて、孤児院用だけにでも作って欲しい。
「あの~。作れないですか?」
「すばらしいい!!」
「わあああ!」
いきなりカンバスさん大声あげないでよ!
「ティティさま! これは素晴らしい玩具、いえ!勉強の教材になりうるでしょう!」
「はは、そうですか?」
「そうですとも! これは売れます! それも様々な応用ができます!」
「よ、よかったです。では作ってもらえますか?」
「ええ、ええ! 喜んで作らせていただきますとも! すぐにうち職人に作らせましょう」
「ありがとうございます」
なんか、カンバスさんの目が爛々と輝いて怖い。
「それで、こちら2つを商人ギルドに登録したいという話ですな。基本形は2つかもしれませんが、これは後から色々と登録が増えそうですな」
カンバスがぶつぶつと呟いて怖い。
「それは、ティティルナ様のお名前でですな?」
「は、はい。私も商業ギルドに属しておりますので、スムーズに手続きできるかと思います」
「ほう? そうなのですか」
カンバスの目がきらりと光ったように見えた。なんか怖い。
そこまで黙って聞いていたルミエールが口を開く。
「ティティルナは、私の領の恩人でもあり、こちらの領主の大事な客人でもあります。そこをよく踏まえて話を進めてください」
「はっ。心得ましてございます」
なんだ? カンバスの怖い雰囲気が消えたぞ。
<東の息子は牽制してくれたのだ。お主がこの商会に囲い込まれないように>
スヴァがルミエールの言葉を解説してくれた。
<囲いこまれるって?>
<お主の今後出るであろう商品アイデアを独占する為、カンバスは商会に取り込もうと考えたのだ。それを阻止してくれたのだ>
<げっ!こわっ!>
冗談じゃない。やっぱ、言動には気を付けないとな。
<そう言いつつ、毎回、ぽろぽろやらかすな>
うん。ごめんなさい。反省してます。
でもそれほどのものかなあ。
<お主は無自覚でやらかすな>
<なんだよ、それ>
ティティは口を尖らす。
まあ、助けてくれたんだから、後でルミエールにお礼を言わないと。
そうスヴァとやりとりしているうちに、ルミエールとカンバス、そしてブライトで、商談はまとまったらしい。
商品は出来上がったら、城に知らせをよこしてくれるらしい。
商業ギルドに登録はそれが出来上がったらでいいんじゃないか?
そう思ったら、大人組全員に首を振られた。
えっ! それじゃ遅いって!?
今すぐ行くの?!
うえええ!
商業ギルド苦手だよう。
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