第247話 商人の顔、顔出した。
うー。ブリアじっと見つめないでくれ。
くっ。しょうがない。んっと。そうだなあ。
「後は、畑仕事をしてる子に、おやつを差し入れしたんです。その時に年長組は小さな子に優しかったし、自分のおやつを分けようとさえしてました。小さい子たちもおやつを1人じめすることなく、ちゃんとしてました。少なくとも、ひっ迫しての飢えはないし、まともに育ってるなあって思いました」
そうだよ。飢えてると人にやる気持ちがなくなるからな。
「あ、後、玩具が少なかったですね」
やっぱ、いっとこ。改善されれば儲けもんだ。
しかしこれはしょうがないよな。
一番重要なのは、子供を飢えさせないことだ。
次に重要なのは、よい就職先見つけてやることか。
その為には、チビの時から、遊びから色々学んでいくといいと思うんだよな。
ジオル時代、苦労したしな。知識があるのとないのとじゃ、仕事に就くのに差が偉い違うからな。
だから、遊びの中に、学びを取り入れるのがベストなんだよな。
今日は、紙で即席の玩具作ってやったけど、すぐにダメになっちまうだろうな。
「どうしたの?ティティ、急に考え込んで」
ブリアがそれに気づいて尋ねてくる。
「あ、すいません。お話の途中で」
「かまいません。何を考えていたのですか?」
ルミエールが促す。
「あ、えっと、小さな子と遊ぼうと思った時に、玩具がなかったので、即席で作ったものがあったんです」
「ああ、あの顔の?」
「どういったものですか?」
「ティティが紙に院長の顔を大きく描いて、それを顔のパーツごとに切り取って、その切り取ったパーツを子供たちにもとの顔になるように、置かせたんです」
ブリアが説明する。
「その切り取ったパーツの後ろにそのパーツの名前を書いておくんです。そうすると言葉と一緒に字も覚えられます。更に大きな子たちが遊ぶなら、目隠しをして、パーツを置かせると面白い顔になって結構楽しいんですよ」
「子供たち楽しそうだったわよね」
ブリアが感心したように言う。
「はい。でも、紙で作ったので、すぐにダメになってしまうと思うんですよね。今度行くときに木材か何かで作った、もっとしっかりしたのを持って行きたいなって。でも、私この街に来たばかりで、職人の知り合いもいないし」
冒険者ギルドにでも聞いてみるか。
「それなら、私が職人を紹介しますよ」
それまで黙ってきいていたブライトが、ずいっと身を乗り出してきた。
「え、なんで」
「私の実家は商会をしてましてね。その関係で職人にもつてがありますから」
えっ、マジか? ラッキー!
「ありがとうございます」
「いえいえ。それで、もしよろしければ、その商品、うちで扱わせてもらえませんか? あ、もちろんお礼はしますから」
「え!? これも商品になるのですか?」
「なりますよ! 幼少教育の助けになりそうなものだし、きっと売れます!」
ブライトが目をきらきら、いやギラギラさせて言う。
「ああ、そうですか。私はべ‥」
「売上3割がティティルナの取り分だな」
「なんですか、ルミエール様」
ブライトが横から口出してきたルミエールに顔を顰める。
「お礼だけで、すまそうとしたな。商品化するなら、ちゃんと利益の配当をティティルナにしろ」
「やだな、もちろんそうしようとしてましたよ。ははは」
うそだな。きっとルミエールが言ってくれなければ、一過性のお礼だけですまされていたかも。
お金うんぬんではなく、そう言ったやり方は、好きじゃないな。
<それが商人というものだろう。主張しなければ、出さない。出し抜くという人種じゃないのか?>
<ああ、そうかもな。油断しちゃだめか>
つい、ヒースやブリアの優しい人間に囲まれていたから、隙があったかもしれない。
それに気づかせてくれたという意味ではブライトにお礼を言わねばならないか。
<お主は、それでもすぐに抜けるがな>
それは自覚ある。うん。
「ブライトさん、仕様書は紹介してくれる職人さんに頼みたいです」
「それは構わないよ。でも利益配分するなら、ティティちゃんも商業ギルドに登録しないとだめかもよ」
「ああ、大丈夫です。私すでに登録済みですから」
「あ、そうなんだ」
「それは、初耳ですね」
あ、ルミエールにまた情報与えちゃった?
いや、まあ、調べればわかるし。
<言ってる傍から>
スヴァがやれやれというように頭を振る。
うっ。次からだ。次から気を付ける。
くっ。
「ブライトさん! 玩具の販売、1つ貸しですから」
「ええ?! ティティちゃん、厳しいな!」
私を出し抜こうとしたんだから、そのくらい要求してよいでしょ!
決してやつあたりではないからっ。
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