第246話 色々な視点、大事? でも私はあくまでおまけです
「今日は予定を変更させて、申し訳ありませんでした!」
チビたちの泣き顔に後ろ髪を引かれつつも、ティティは馬車に乗り込み、走り出した矢先に、向かい側に座るルミエールに頭を下げた。
まさか、チビたちの為に、予定を変更してくれるとは思わなかった。
案外いい奴なのかもな。
けど、予定変更させて、不便をかけたからには、やはり一発謝りを入れておかないとな。
「いや、いいです。逆に二手に分かれた事で、時間省略もできました」
「そうですか」
あ、もしかして、私抜きで行かなきゃいけないところがあったのかな。
うんうん。そうか。子供には見せられないところに行ったのかな。
ちぇ。気になるけど、聞いちゃいけないんだろうな。
うん。私は察することができる子なのだよ。
<いつもそうであって欲しいがな>
足元の君、静かに。
「それで、孤児院を視察してみて、どう思った?」
「子供たちが元気でよかったと思いました」
まずはそれが一番だろ。孤児院の存在意義だ。
「大事なことですが、他に気づいたことはないのですか?」
「他に、気づいたことですか?」
玩具が少ないなって思った。
これ言ったら、ダメな奴か。
私はおまめだろ。子供だし。あ、子供の視点からってことか?
残念。私中身は大人だからなあ。
むーんと考え込んだ、ティティに、ブリアが助け舟を出してくれた
「ティティ、孤児院で院長に会った時に、よかったって言ってたわよね。あれはどうして?」
「ああ、あれ?」
うーん。私としては普通な反応だったんだけどな。
「あれは、院長先生が太ってなかったからだよ、いえ、です」
やべっ。おチビたちと話していて、つい口調がジオル時代に戻っちまう。
「ここには私たちしかいないから、言葉遣いを気にしなくてもいいわ」
隣に座るブリアがルミエールをみると、頷いている。
「それより、院長の体形がそれほど気にするほどのことかしら?」
「だって、院長先生が太ってたら、やばいだろ。絶対あくどいことしてるに決まってる」
「どうしてそうなるのですか?」
ルミエールが眉を寄せて詰問してくる。
なんだよ。怖いな。
「だって、そうだろ。孤児院経営なんて、どこも子供たちに食わせるのにかつかつな筈だろ? それが院長が太ってるってありえなくない?」
「!」
馬車に乗ってる大人が皆息を飲む。
「子供たちは年中腹空かせてんだからさ。院長が自分だけ腹いっぱい食べられる筈ないだろ。だから太ってたら、すっげえ不自然なんだよ。絶対子供を食い物にしてるね」
「なるほど」
「まあ、そうとも言い切れないかもしれませんが」
うーん。いくらルミエールの許可があっても、言葉遣い雑すぎるな。
ここからは改めなくちゃ。
スヴァが心話で感心したように呟いた。
<お主も、鋭いところがあるのだな>
<鋭くなんかないだろ。当たり前の視点じゃね?>
<その当たり前の視点が、こやつらには盲点だったのではないか?>
その言葉に馬車の中を見回すと、大人たちが何やら考え込んでいる。
「そっか。飢えたことがないから、気づかないのかもしれない」
ティティの口からぽろっと言葉がこぼれ出た。
いけね。
「あ、あの! 別に嫌味とかじゃないですから! 飢えを知らないのはいい事ですし!」
「怒りませんよ。ただ、そう言った視点もあるのかと、気づかされました」
「ええ。そうですね。今後は、色々な立場の者を視察に取り入れるのも必要だと痛感しました」
ルミエールの隣に座るブライトが真面目な事を言った。
どうした、いつもの軽さが無くなってるぞ。
なんか私そんな大それたこと言ってないけど!
どうすんだよ。なんだよ。この重い雰囲気。
なんとかしてくれ。ブリア。いつも場を軽くしてくれるヒースは御者台だ。
だから頼みはブリアしかいない。
その願いを込めて、隣に座るブリアを見る。
「他に気づいた事はない?」
更に聞くか?!ここで!?
「ないです。私まだ子供ですから!」
「小さなことでもいいのよ」
おい。もう追求しないで欲しいのにっ。
ヒース御者台でのびのび(笑)
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