第242話 休憩に甘いもの、いいよねえ
ティティはチーを抱っこしつつ、先程見学した庭の畑に向かうと年長組が黙々と作業をしていた。
うん。真面目だね。みないい子だ。
「マルティナさん、休憩の合図をお願いします」
私は部外者である。偉そうに指図はできないだろう。
「わかりました。はーい。みんな、小休憩です。水を飲んで休んでください」
マルティナの声で、畑で作業をしていた子が皆、顔を上げた。
「なんだあ? 敬語なんて使って、気持ち悪ぃの」
その中で、いつものマルティナをばらす奴が1人。
「うっさいわね!」
マルティナはこちらをちらりと見ると、ずんずんと歩いて行って、余計な事を言った男子の頭をぱこんと殴った。
「いってえ。なんだよ! 本当のことだろうが」
「うん。いつものマルティナだね」
ぱこーん。
はい。横にいた余計な事いう男子2が、叩かれてます。合唱。
「余計なこと言ってないで、水を飲みなさいよ!」
頬を赤くしてわめくマルティナ、可愛い。
<お主、女子には甘いの>
スヴァが心話で話しかけてきた。
<ったりめーだ。女子は癒しだろうが>
<そうなのか?>
まったく元魔王様は、そこら辺わかってないな。
<女子はぽわんとして、やわっとして、いいだろうが>
<何を言ってるか、わからんな。が、そうするとお主もそうなのか?>
私がぽわんとして、やわっとしてるかって?
<ぐっ? そうかな?>
<なぜ、疑問形なのだ>
<それは、それ。なっ?>
自分じゃわからないよ。
<わからん>
深く突っ込まんでいんだよ! 本当探究心が強い、元魔王様だなっ。
<もういいよ! 菓子配って来る!>
スヴァとの不毛な会話を打ち切り、ティティは畑に近寄る。そしてチーを下ろす。
チーは嫌がるそぶりをしたが、それでも素直に下りた。
その後、ティティのスカートにべったりと張り付いたが。
よーし。腹から声を出す。
「初めまして、ティティルナと言います! ティティと呼んでください! 今日は孤児院の視察についてきました。よろしくお願いします」
そこでぺこり。
「皆さん、お疲れでしょう。少しですが、差し入れがあります。水分補給とともに、お食べください。今配ります!」
「「「「やたっ!」」」
すると、歓声があがる。
うんうん。わかるよ! いつもなら、きっと水だけだもんね。
少しでごめんね。
しかしここで問題が一つ。
年長組。畑仕事で、手が汚れてるよな。
そんな手で食べたら、雪菓子真っ黒になってしまう。
だから。チビたちここに来る途中に手を洗わせてから来たんだ。
ふふふ。私に抜かりはない。
<ぬかってばかりだと思うが>
スヴァ! うるさいよ!
ティティはしゃがんで年少組のおチビたちに指示を出す。
「よーし。いいか。今から重要なお仕事をしてもらうぞ! さっき食べた雪菓子をお兄ちゃん、お姉ちゃんたちのお口に入れてやってくれ。いいか。1つづつだ。2つ渡すからな。いっぺんに入れちゃだめだぞ」
ちびどもを見回しながら言う。
「わかった?」
「「「「「あい!」」」」」」
くう! 可愛いじゃないか!
「上手にできたら、ご褒美にまた雪菓子をやるぞ!」
「「「「きゃあ!」」」」
喜んどる、喜んどる。
「じゃ、並んで!」
「「「「「あい!」」」」」
そうしておチビたちは小さな紅葉の手のひらにそっと雪菓子を持って、畑へと駆け出そうとする。
すぐにティティが注意をする。
「ゆっくりでいい! そろそろ歩け」
「「「「あい!」」」」」
チビたちはそろりそろりと歩いて、年長組に辿り着く。
そこで、偉そうに命令する。
「マルクにいちゃ! しゃがんで!」
「おう!」
そばかすの浮かんだ、茶髪の男子が、素直に座る。
「おくち、あーんして」
「あーん」
そこにそろりと、雪菓子をトムがいれる。
「お! 甘い! うめえ!」
マルク少年は目をまんまるにして、頬を緩めた。
「にいちゃ、食べ終わった?」
「ああ、ありがとな」
「もう1つある。あーんして」
「いいよ。おまえが食べな」
そう言いつつ、マルク少年はトムチビの頭をぐりぐりする。
くう。マルク少年、優しい。将来モテるぞ。
「んん。大丈夫。ぼく、このお仕事したら、ティティねえがくれるから! だからあーんして」
マルク少年がこちらを見たので、大きく頷いた。
心置きなく食べてくれたまえ! 少年よ!
「わかった。あーん」
そうして、トムチビはそろりとマルク少年の口に雪菓子を入れた。
マルク少年は、頬を緩めた。
うん、甘いのうまいよね。
「トム、ありがとな!」
そうしてまたぐりぐり。
「うん!」
そうしてトムチビはこちらにまっしぐらに帰って来る。
「ぼく、お仕事ちゃんとできたよ!」
「うん。見てた! えらいねえ!」
そうしてトムチビを抱きしめて、いっぱい褒める。
「えへへ」
「ほら、約束通り、雪菓子だよ。お口をあけてみな」
トムチビはぱかりと口をあける。そこにポンと雪菓子を一つ。
すごい幸せそうな顔だ。
仕事を一つやり終えたきっと達成感と菓子の甘み。思い出になるといいな。
気づくと、トムチビの後ろにおチビたちが並んで、順番を待っていた。
「よーし! みんなもよくできました!えらいぞ!」
ティティはトムチビと同じように1人1人を抱きしめて、口に雪菓子を入れてやった。
「それじゃ、年長組さんのお仕事に邪魔になるから、部屋に帰ろうか」
「「「「「あい」」」」」
「ティー」
チーが当然のように両手を広げて、抱っこをせがむ。
「はいはい」
ティティは抱き上げてやりながら、年長組に挨拶である。
「それでは引き続き、がんばってください」
「「「「「おー!」」」」」
うん。ここの孤児院の子ノリがいい。貧乏でも明るいぜ。
院長先生がいい人なんだってすっげえわかる。
さて、次に行こう!
おチビたちの可愛さが伝わったらいいです。
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