第240話 おチビたちよ、遊ぶぞう!
「はい、まずは、これはなにかなあ」
切り取った鼻をとっておチビたちに問い掛ける。
「おはな!」
1人のおチビが答える。
「そうだねえ! お鼻はお顔のどこにあるかな?」
「ここ、ここよ!」
おチビが自分のはなをさして答える。
「よくできました! よくできた可愛い子のおなまえは?」
「ルー」
「ルーちゃんね」
赤毛のちみっこちゃんは嬉しそうに笑った。
すると次々と主張が始まる。
「わたち、エリカ」
「ぼく、チャック」
「ジム」「シリ」「トム」「セリア」
「私はティティよ、よろしくね!」
よしよし。自己紹介はこれですんだな。
では、本格的に遊ぼう!
「じゃ、ルー? 院長先生のお鼻はどこにおいたらいいかな?」
絵をルーに近づけてやる。
「まんなか、おはなは、おかおのまんなかにあるの!」
「そうだね。じゃあ、このおはなをおいてみて。そうっとだよ」
「わかった!」
ルーは切り抜かれた鼻を顔の真ん中に置く。でも少し曲がってしまう。
「あら、ちょっと曲がっちゃったかな?」
「んん!」
ルーはまた鼻をとって、今度は慎重に鼻が切り抜かれた場所にはめる。
「うん!綺麗におけたね!すごいね、ルー!」
そう言って、ティティは頭をぐりぐりと撫でてやる。
「えへへへ」
ルーはそれはそれは嬉しそうに笑った。
「僕も! 僕もできる!」
「私も!」
そう言って、皆手を挙げる。
「はい! では、順番ね! 次は、これは何かな?」
片目を取り上げて、それを正解した子供に渡して、院長先生の顔を次々と完成させる。
完成したら、ばらす。そして、順繰りにまた顔を完成させる。
おチビたちはこの新しい遊びに夢中だ。
顔が完成する時間も、段々と早くなる。
「よーし。次はちょっと難しくするぞ~」
ティティは鞄から手ぬぐいを取り出すと、近くにいたルーを目隠しする。
「ん~?」
ルーは不思議そうに首を傾げる。
そのルーに鼻のパーツを渡す。
「さあ、ルーこれはお鼻だよ。さっきみたいにおかおの真ん中においてみな」
「めをかくしてるから、わからないよ?」
「そうだね。さあ、みんな、ルーがちゃんとお鼻を正しい位置におけるように、教えてあげて」
「「「わかった」」」
「ルーそのまま、まえにもってきて」
「あ、すこしずれたよ。みぎに」
そして目、口とつぎつぎみんなの誘導に従っておいていく。
「よーし。全部置き終わったね。目隠しをとって確かめてみようか」
ティティはルーの手ぬぐいを外してやる。
「キャハハ。いんちょ、へんなおかお!」
「へんなかお!」
「かお!」
みんな嬉しそうに笑う。
「さあ、次はだれが目隠しする?」
「ぼく!」
「わたし!」
子供たちは飽きることなく、遊んだ。
ティティはおチビたちが院長の顔を完成させるたびに、大げさなくらいに褒めてやる。
「ちゃんとぜんぶおかけたね!」
「えらいえらい!」
おチビたちにはとても重要な言葉。
おチビたちはティティにすっかり打ち解けた。
そうしてしばらく経つと子供たちがウトウトしだした。
新しいおもちゃに興奮しすぎたのかもしれない。
順番にベッドに寝かせる。
「ごめんね。この時間に寝かせて大丈夫?」
ティティが少し心配になって、マリに尋ねる。
夜寝なくなると大変だからな。
「うん。大丈夫です。きっと午後も遊べば、夜も寝てくれると思います」
「よかった」
夜寝てくれないと、年長組も困るからな。
「すごいな。こんな遊び道具があるのか」
ブリアが子供たちが遊んでいた、紙のパーツを手に取って眺める。
「遊び道具って、大げさですよ。お金がかからない、遊びですから」
ジオル時代の孤児院生活でも、チビたちに作ってやったのだ。
「マルティナさん、もし可能なら、これらを木で作り直すとよいと思います。紙だとすぐやぶけて遊べなくなってしまうので」
「わかりました。でも、こんなにうまく描ける人がいるか、わかりません」
「多少下手でも構わないと思います。裏にそのパーツの名称が書いてあるので、もう少し大きなおチビたちの勉強にもなると思います。遊びで文字も自然と覚えられてよいですよ。人でなくてもいいんですよ。動物をかたどったものを作ったりしてもよいです。遊び半分で、地面に覚えた文字を書いて遊ばせるのもいいですよ」
「そうですね! 木なら取って来られるし」
マリも字が覚えられるのは嬉しいようだ。
「ただ、ちゃんとやすりで丁寧につくってね。子供の手は柔らかいから。トゲが入ったら大変だからね」
「ええ。木工ができる子がいますので、大丈夫だと思います」
マルティナが力強く頷く。
「そう。よかった。それじゃ、私、おチビたちが寝ているうちに院長先生にちょっと聞きたい事があるから、行ってきます」
「子供たちの面倒を見るのを手伝ってもらってありがとうございました。助かりました」
マリが丁寧に頭をさげる。
「いえいえ。こんなのたいしたことないです」
本当そうだよ。毎日見てるの大変だよね。
お疲れさま。
そんなマリちゃんにもご褒美をあげたい。
よし、院長先生に早く聞きに行かねば!
単純な遊び道具でも、何もないよりも嬉しいものです。
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