第237話 お祈り、報告、おしゃべり?
マルティナちゃんに連れられて、一旦孤児院の外へ出てから、ブリアとスヴァとともに、ティティは隣にある教会の入り口に向かう。
祈るだけなら、喜捨はいらないだろうけど、おチビたちの食事の足しになるんだろうから、気持ちばかり、入口で係の人に渡す。
教会内は、真ん中に長い絨毯が引かれ、その両サイドに木の長椅子が並んでいる。
中は結構広いな。天上も高いし。
絨毯の先には国守様の像が両手に丸い珠を掲げている。その横には白い牛が付き従っている。
うん。美人さんだね、国守さまの像は。やっぱ、牛じゃないんだねえ。
ちなみに丸い珠は神様である。
神を直接見た人がいない為、抽象的な作りなんだろうなあ。
うん。メインは国守さまだね。
国守さまに神様について聞いたことはあるけど、圧倒的な存在との回答だった。
うん。わからんね。
でも、怒らせちゃいけないのはわかる。
けど、そう言った感情もないのかもしれない。
私ごときが近寄ってはいけない存在だろうな。
<その神の意志に抗った行為をしたのは、誰だったか>
隣のスヴァの心話による突っ込みが入る。
<えっ! してないよ!? 私はスヴァを助けたかっただけなんだから>
<それがアウトと見做されなくてよかったな>
<そっか。もしかしてぎりぎりだった? なら、もうしないよ、多分?>
<お主、凝りておらぬのか>
スヴァがあからさまに呆れたように首を振る。
なんだよ。もうそれはいいよ。
ティティは気を取り直して、長い絨毯の先、国守さまの像の前まで行って、跪く。
そして目を瞑り、両手を組んで、祈りを捧げる。
国守さま、どうか貴方様から言われた2つの魂を救えますように。
そして美味しいものがこの地で見つかりますように。
お土産、楽しみにしていてくださいねっ。
<後半が世俗的過ぎる>
<なんだよ!ってかスヴァ、私の思考読みすぎだぞ!>
<読んではおらぬ。自然に入ってくるのだ>
<私がうるさいってこと?>
<そうとも言う>
<なにおう!?ってか、私はスヴァの思考が全然わからないんすけど!>
<我はブロックしてるからな>
<何それ!? ずるくない!?>
<お主もすればよかろう?>
<するよ! てか、どうやるの!?>
<我との間に壁を作るイメージで思考を遮断すればいい>
わかんねえよ!
<ん! いいや! 別に私、スヴァに漏れてまずいことなんてないしっ>
<諦めるのが早すぎるだろう。今はいいのかもしれぬが、将来はまずいこともあるのではないか? 女性として>
<それじゃ、そん時考えるよ。さてと、じゃ、孤児院に行くか>
<お主は、まったく>
なんだよ!今困ってないならいいじゃんか。
膝をさっとはたいて立ち上がる。
「ティティ、随分と長く祈っていたわね」
ブリアが何やら尊敬のまなざしでこちらを見つめてくる。
やめて。流石愛し子だって目で見るの。
違うから! 国守さまに祈ってたのは、最初のほうだけだよっ。
後はスヴァの会話で終わってたの!
しかしブリアの眼差しに、言える雰囲気ではない。
「あは、あはは。すいません。長くて」
「いいのよ。構わないわ」
うわあ。ブリアの眼差しがつらい。
「ブリアさん、孤児院に引き返しましょう」
ティティはつっと汗を一筋たらし、そそくさと教会の出口へと向かった。
ひい。愛し子効果恐るべし。
ティティは無意識にやらかしてることが多い(笑)




