第233話 地元めし、美味しいね
7年前のお店でがっつりと買い物した後、夕飯を食べるには程よい時間になっていた。
「昼食が少し早めでしたから、お2人ともお腹すきすぎたのではないですか? すいません、買い物まで付き合ってもらって」
「なんの! 魔法の訓練をするのに比べたら、全く問題ないとも!」
ヒースのテンション変わらず、軽やかに答えてくれる。
「貴方の場合、訓練自体さぼりぎみだから、いつも問題ないのではなくて?」
ブリアの鋭い突っ込みとセット。うん、2人ともまだスタミナ余裕だね。
今ティティたちがいるところは、ブリアが一度入った事があり、割と美味しかったというお店だ。
従魔も入店オーケーということで、決まったお店、ノアット。
「まあまあ、お2人とも、今日はお疲れさまでした! まずは乾杯しましょう!」
「そうだね! 食事は楽しくないと!」
「ええ」
「それでは、僭越ながら、私が」
ごほんと、喉を整えてっと。
「今日一日、視察兼、私にお付き合いありがとうございました! 明日もよろしくお願いします! 乾杯!」
「「乾杯!」」
私は果実水、2人はエールだ。
2人は最初お酒はと渋ったが、一杯だけとティティが押し切った。
2人は私が国守さまの愛し子だと知ってるから、用心しているが、そのことは殆どの人が知らないのだ。お酒を控えるほど、用心する事はないと思う。
「おまたせしました~!!」
元気な店員のお姉さんの声とともに、頼んだものが、テーブルに並べられた。
このお店では大皿に盛られたおかずを、それぞれ小皿で各自取り分ける形式のようだ。
スヴァを入れて四人分と頼んだので、結構ボリュームがある。
「ではいただこうか」
そのヒースの合図で食事が始まる。
「スヴァ、おまたせ」
彼のマイ食器に取り分けてから、次に自分の分も取り分ける。
まずは一番気になる黒い粒粒が載っている茹でた葉物野菜から。
この黒い粒粒、何っ?
小さなそれを、1つフォークに突き刺して食べてみる。
「甘い!」
見た目に反して、甘かった。その甘さは砂糖のような甘さではなく、野菜の甘さ。
そしてプチリとした感触がくせになる。
「ふふ。それは黒もろこしよ。通常は黄色いのだけど、ここで採れるものはなぜか黒くなるらしいわ。そして他で採れるよりも甘いみたい。気に入ったなら、茹で黒モロコシを食べてみる?」
「はい! おねえさ~ん、茹で黒モロコシお願いします!」
「おすすめの肉の串焼きも頼む! 山盛りでな!」
ヒースも便乗して追加を頼む。
おっ! いいね! そうだよな。やっぱ、串焼きは外せないよな。男子なだけに。
黒モロコシ入りの茹で野菜で、お腹を整え、さあ次だ!
スプーンで炒め物をすくって、小皿に盛る。
「肉とブロコと玉ねぎとニジンかな」
まずはごろりとした肉をっと。
「ん?」
塩味かと思ったら、ほんのり甘い。
これはこれで美味しい。
なんだろう。甘じょっぱい?
野菜と肉とうまくマッチしていて、美味しい。
「独特ですけど、美味しいですねえ」
「ふふ。口に合ってよかったわ。この地方は黒とうきびが名産だから、結構甘めの味付けなのよね」
「そうなんですね。じゃあ、このカボチも期待できるかな?」
カボチは皮が緑、仲が濃い黄色の野菜で、茹でるとほくほくして美味しいのだ。
甘く煮たら美味しいのだが、いかんせん砂糖が高いため、中途半端な甘さになる場合が多いのだ。
「どれどれ」
ティティはカボチの煮物を大口でぱくりと頬張る。
「んん~!! ねっとりで甘々だあ!」
思わず頬が緩む。疲れた体に染みわたる甘さ! いいね!
<おい。我にもカボチをもうすこしくれ>
スヴァも気に入ったようだ。
<了解、了解>
空のお皿に盛ってやる。
「お待たせしました~」
串焼き、黒モロコシ、とろみのついたスープ。それとパンが一気に来た。
スヴァにそれぞれを取り分けて。
自分の分も急いでとる。
串焼きをがぶり。
「うまい!」
固めの肉だけど、歯ごたえがあって噛むと肉汁がじわりと出る。
この肉をよく知っている味付けだ。
黒パンは例のごとく、スープに浸しておく。
その間に、頼んだ黒モロコシを手に取る。
「これはね、こう食べるの」
ブリアが見本を見せてくれる。歯を使って実だけを綺麗に嚙みとっていく。
「ふおおお!」
私もまねてみよう。
がぶり。
「おいし~!」
ぷちりぷちりとした歯ごたえの後、くせになる甘さが口に広がる。
あっという間に一本食べてしまった。
結構お腹いっぱいになった。
パンは余計だったかなって思ったけど、残さないよ!
さっぱりしたスープにひたひたやわやわパンもおいしかったです。
ブリアとヒースはまだ、食べてるね。
やはり魔法士も身体が資本だもんね。
私は果実水を飲んで、これでご馳走様でした!




