第232話 あるかな、あるかなあ? あった!
ナレルの胡散臭い営業用の笑顔に見送られながら、ティティは冒険者ギルドを後にした。
ふう。第一目標のお土産用のお金はゲットした。
付随したデメリットは考えないことにする。
次から気を付ければいいよねっ。
そう気を取り直して、ティティは後ろについて来てくれたヒースとブリアを見上げて、お礼をした。
「お2人とも、冒険者ギルドにお付き合い、ありがとうございました」
護衛とそしてきっとルミエールに監視も頼まれているんだろうけども、こうして付き合ってもらたんだから、お礼は言わないとね。
何のかんのと時間がかかり、気が付けば、日も傾きかけている。
ジオル時代に来たことがある土地とはいえ、今は子供、それも女児1人でこの時間帯、歩き回るのは心もとなかった。
2人がいるからこそ、この時間でも安心して出歩ける。
<我もいるぞ>
スヴァがふんと息を吐きつつ、そう主張する。
<はいはい。頼りにしてるって>
<わかれば、よいのだ>
この元魔王様、俺よりも数倍、いや下手すれば数十倍長生きした記憶がある筈なのに、へんなところで、幼いところがある。
可愛くてよし!
「いいのだよ。我が心の友よ! これくらいなんでもないとも!」
「まだ、その設定ひっぱりますか?」
「ごめんなさい。なんか、気に入ってしまったみたい。しばらくはこのままね」
ブリア、慣れてる。私もスルースキルを久しぶりに発動しないとか?
人前で言われるとこっぱずかしいが、この3人でなら、それほど気にならないかな。
<そうだな。こういった奴の言動は無視するに限るぞ>
なんかスヴァが遠い目をしている。
過去に経験があるのか?
「ところで、これからどうする? このまま、食事に行くかい?」
「あ、可能であれば、もう一か所行きたい店があるのですが」
「いいとも! どこかな?」
ヒース言葉も軽いがフットワークも軽い。
一発オーケーである。
ルミエールみたいにがんこちんでないから助かるわ。
ティティが行きたい場所。
それはジオル時代に行ったお手軽なお店である。
魔王領に乗り込む前に、一日自由時間を持つ事ができた。
勇者不在で魔王に挑むのだ、生きて帰れる保証はない。
その為、最後に楽しい一時を取る時間を与えられたのだった。
なんとも悲しい思い出である。
男どものほとんどは、歓楽街へと消えていったが、ジオルはどうもそういった気持ちが薄いのか、最後に美味しいもの食べたいっと、お店巡りをして見つけたお店である。
冒険者としてそれほど強くもなかったジオルの懐は寂しかった。
だから、店に入って豪勢に食べるなんてできることはできなくて。
安くて、美味しいものと探し当てたお店だ。
性欲真っ盛りの筈の10代でそれはどうよって自分でも思う。
あ、なんか2重で悲しくなってきた。
<ひとそれぞれよ>
ポンとスヴァがティティの足を軽く叩いた。
やめて。なんか余計に悲しくなるから。
やる気ヤル気じゃないジオルだったから、女子としてもすんなりやっていけてるのかな。
<やっていけてるか?>
<イケてるだろうよ。不自然に思われてないだろ?>
<ほかの不自然さが際立ってるから、そちらに目をむかないのではないか?>
<ああ、そういう?って、マジ?!>
<性格はまんま、お主だろう。ティティ要素はかけらもなし>
<げっ!ノアに嫌われちまうかな>
国守さまに預けてきた弟に嫌われるのはつらい。
ティティは結構大人しく控えめで真面目な感じだったからな。
<大丈夫なのではないか? なにか言われたら、親に捨てられて、弟を守る為に強くなったと言えば、問題有るまい>
<なるほど!それでいこう!>
<お主の性格は変わらぬであろうからな。それで押し通せ>
<その台詞、いる? 私だって成長するぞ!>。
<そうか?>
そんなやりとりをしている間に、記憶を頼りに辿った道の先。
「お店あったよ!」
よかった。7年の経ってるからなあ。無くなってたら、どうしようと思ってたからよかったぜ。
ティティは意気揚々と店へと入った。
資金は十分! がっつり買っとかないとな!
自分の気に入っていたお店がなくなると寂しいですよね。
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