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第231話 まだまだ修行が必要のようです

「かしこまりました」

 こっちが金額にビビってるのに、ナレル平然としてるよ、すげえな。

 やっぱ、少し偉い人なんかな?

「全額お持ち帰り致しますか?」

 ちょっ! ナレルってば、そんな訳ねえだろ!

 怖いよそんな大金を全部持ち歩くなんてよ!

「いえ! 金貨4枚と、金貨1枚分を銀貨で持ち帰ります。後は、口座に入れておいてください」

 それでもティティにとっては大金だから、怖いけど、ヒースとブリアがいるからね。大丈夫さ。

<我もいるぞ>

<はいはい、スヴァも頼りにしてるって>

 スヴァ、可愛い奴め。

「かしこまりました。それでティティさま、こちらの薬草はどちらで採集されたのですか?」

 少し探るようにナレルが問う。

 あーきいちゃう? 気になるよね? でも教えないよ!

「すいません、それはちょっと」

「失礼致しました。それを聞くのは、マナー違反でしたね」

 聞ければラッキー!くらいで聞いたのだろう。すっと引いてくれた。

「しかし、これだけのものですと、アーリデアルトの森あたりでないと揃わないような気がしますね」

 さりげなくナレルが呟く。

「はは。そうなんですかね?」

 ビンゴ! 後出しでいうなんて、意地が悪いね! 普通の7歳児だったら、顔色を変えるかもだけど、私には通じないよ! 

 アーリデアルトの森に入れるのは一部の人だけだ、これでそうですって言ったら、どうなるか。

 探りを入れたんだろうけど、残念でした!

<中身は成人した男だからな。それくらいでないとダメだろう>

<スヴァ、この頃私に厳しすぎないか?>

「それに、その小さな鞄によくこれだけの薬草が入りましたね? それもよい状態のままで」

 やあ、突っ込むなあ、ナレルさん。

 初来訪の冒険者の情報はとれるだけとるのが役割なのか。

 ん。でも大丈夫、これについては対策考えてきたからね!

 イリオーネさんの時に、失敗は体験済みだ!

<えばれることじゃないがな>

 もう! スヴァは黙っててくれ!

「実はこれ収納機能付き袋なんですよ! これは今回一緒に旅してるヒースにたまたま借りれたんです。ラッキーでした」

 よし! 完璧な説明だな。私は収納袋は持ってないし、アイテムボックスも使えませんからねえ。

「ああ、そうなのですね。よかったですね。一緒に旅するお仲間が優しい方々で」

「はい!」

「それではお金を用意して参りますので、少々お待ちください」

「はい!あっ!」

「何か?」

 やっぱきりのいいほうがいいよな。

 ティティから手ごろな薬草をもう10本出す。

「これも買い取りお願いしたら、大金貨7枚になりますか?」

 立ち上がったナレルが座り直し、薬草を裁定する。

「全部で大金貨8枚になります」

「ぷひょ!」

 鼻から変な音がでてしまった。

「ティティさま、まだ十分に薬草をお持ちなようですねえ? どうでしょう! お手持ちを全部見せてもらえませんか!」

 ナレルの目がマジだ。

 獲物を狙う、肉食獣のようである。

 目がぎらっと光ったよ。恐いっ。

「いえ! もうないかなあ?」

 ダリダリと汗を掻きつつ、目が泳ぐのを止められない。

「さようでございますか。ですが、また買取をご希望の場合は、このナレルを指名してくださいませ」

「はは。わかりました」

 いや、しないよ! そうっと売るよ!

「それではご用意して参ります。少々お待ちください」

「はい!」

 やれやれ。なんとか無事にやりとげたぜ。

 無難に乗り切れただろう。

<無難。どの口が言うか>

<なんだよ、スヴァ。厳しいな。どこがダメだったつーんだよ>

<レアな薬草を出しすぎだ。駆け出しの冒険者とは扱われないだろうな>

<えっ。そんなにか? ジオルん時はそんなでもなかったぞ>

<考えてもみろ。前世は成人した男子だっただろう。それに子供の冒険者に護衛がついているってのも十分興味をひいただろうよ。それも冒険者に見えない2人だ>

<ぐお!やっぱ護衛だって、バレバレ?>

<バレないはずなかろうな。頭が回る者なら、ギルドカードからどこから来たか割り出して、ゴルデバの冒険者ギルドに問い合わせたりするかもしれぬな>

<だけど、そこは不可抗力だろう? 第一守秘義務があるだろう?> 

<冒険者ギルド内でもか? 必要であれば、各地のギルド同士で情報を共有するのではないか?>

<ぐお! そうかも>

<まだあるぞ>

<な、なんだよ>

 何言われるかと身構えてしまう。

 髭をいじりながら、スヴァは更に続ける。

<最後に更にレアな薬草を出すなんて、愚かな事をしたものよ>

<だって、なんか中途半端じゃなくて、切りのいい金額がよくねえ?>

<それでつられるかと設定した金額だったのかもしれぬぞ?>

<えっ? マジ?>

<その可能性はあるな>

<うええ。私まんまとひっかかっちゃった? でも、それでなんの得があるの?>

<借りているとはいえ、収納袋を持っていて、薬草を信じられないほど豊富に持ち、知識もある。その年では考えられないほどにな。これで気にならない奴はいなかろう>

<ちなみに、私の今回の対応は及第点もらえたりする?>

<否。精進せよ>

 ダメダメだったらしい。

 一縷の望みをかけて、ヒースとブリアを振り返った。

 2人とも、困ったような顔をしている。

「小さいレディは素直ないい子だね」

「せっかく私たちがいるのだから、ふりでもいいから、相談したていをとったほうがよかったかな」

 2人の目から見てもダメだったらしい。

 なんだよ!普通って難しいな、おい!

 自信をなくすぞ!

交渉って難しいですよね。

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