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第222話 日頃の行いがものをいう

 やっべやっべ。

 余計なこと言わないようにしないと!

 大人組から逃げて、しばらくヘクタ夫人のご自慢の庭園を散策する。

 すぐに戻ったら、やばい気がするから、大人組からできるだけ離れて、スヴァとゆっくりと見てまわる。

「いいなあ。このところせかせかしてたから、こうして花を見てると癒されるね。なんかお腹が空いてきたなあ。これで食べられるお花や木の実があったら、最高だねっ」

 鑑賞よりも食優先のティティである。

 こっそり鞄を通して亜空間から木の実を取り出して、食べながら歩く。

 スヴァも前足で催促する。

「ティティちゃーん、お昼にするから戻っておいで~」

「了解です~!」

 ブライトの呼び声に、すぐに曲がれ右をして、だだだだっと彼の元に馳せ参じるティティ。

<ちょろいな>

<ばっか。ご飯はなにものにも優先されるんだよ>

 そうスヴァに諭しながら、スヴァの口調がちょっと気になる。

 だんだん荒くなっているような気がする。気のせいか?

 人間界に馴染んだとポジティブにとらえたほうがいいのか。

 それとも悪影響ととらえたほうがいいのか?

 せっかく可愛いんだから、丁寧な言葉遣いのほうがいい。

 ノアにも悪影響があるかもしれないしな。

 うむ。これからは私がちゃんと気を付けていないとだめだな。

 ともあれ、目下の最重要事項は昼食である。

「もうそんな時間なんですね! 今度はどこで食べるのですか? まだ決まってないなら、魔法士の使う食堂に行きたいです!」

 そして甘味を食べるのだ。

 ブライト、ヒース、ブリアがなんかむかつく顔している。

 なんだってんだよ。

「そうだね。ティティちゃんのご要望通り、魔法士の使う食堂に行こうか」

 ブライトがニコニコしながら、頷く。

「やったあ」

 ティティがぴょんと跳ねる。

「ふふ、よかったね、小さなレディ」

「楽しそうでよかったわ」

 ルミエールは通常運転だけど、他のみんなの顔が気持ち悪いぞ。

 なんだよ!みんなだって甘いもの食いたいだろ?

 にやにや笑ってないで、さっさと食堂へ行こうぜ!


 そしてやってきました、魔法士食堂。

 言っちゃ悪いが、むささが騎士の使う食堂よりも半減している気がする。

 やっぱ、騎士よりは女子率が多いからだろうか。それとも騎士よりもムキムキしてないからだろうか。

「騎士がこちらの食堂を使ってはいけないという決まりはないんですよね?」

 ティティはブライトに尋ねる。

「ないよ。どちらの食堂を使っても、基本問題ないね」

「そうなんですね」

 うんうん。私はむささも気にならないから、気分によってどっちも使用したいけど、女子なら、断然、魔法士食堂を利用するかもね。

 けど、女騎士さんの姿はない。

 やっぱり騎士と魔法士の仲が悪いからだろうか。

 それで食堂まで分かれてるんだから、相当なのかなあ。

 仲の悪さで二つに分かれた食堂だが、逆にそれを利用して両方のメニューを楽しんだらいいのにねっ。   もったいないな。

 騎士の方々損してるよ! 

 魔法士食堂はデザートが充実しているんだから!

 仲良くして食べに来たらいいよ!

 そんなことを考えつつ、食堂の中を進む。

 昼時で、配膳カウンターの前には長い列が出来てる。

 ティティはお盆を取ると、すかさずその列の最後尾に並ぶ。

「ふふ。ティティったら、素早いわね。そんなに楽しみなのかしら?」

 ブリアがティティの後ろに並ぶ。

「だって、こっちではデザートがつくって言ってたでしょ! ブリアは楽しみじゃないの?」

 ブリアの研究室で食べたクッキーはとても甘くておいしかった。

 きっとブリアだって甘いものが好きに違いない。

「そうね。私も楽しみだわ。うちの領ではないデザートが出るといいわね」

「ええ!? なんですかそれ?! ブリア食べたことあるの?!」

「ええ。ご当地ならではの甘味をいただいたことがあるわ」

 なにそれなにそれ! すごい気になる!

 7年前より新しい甘味が増えたかもしれない。

 甘いものの進化も日進月歩だ! ぜひとも味わいたい!

「あー、でも最新のお菓子がこの食堂で出るとは限らないですよね」

 だって、きっと予算があるはずで、その中でお菓子の種類にどのくらい重要度をおいているのか?疲れを取るための甘味なら、定番のものしかないかもしれない。

 だって、ここはいわば職場である。そんな珍しいデザートなんてでるわけない。

 ティティはちょっとしょんぼりする。

「ふふ。それがね、私が知ってるそのデザートはこの食堂で食べたものよ」

「ええ!?」

「小さなレディ、君はやっぱり幸運の女神がついているらしいね。今日は今ブリアが言ったデザートの日のようだよ」

 ブリアの後ろに並んでたヒースが指をカウンターの上を指さす。

 ティティはそちらにぐりんと首を向けると、丁度ティティーの順番が回ってきたところだった。

「やったあ!!」

 日頃の行いの良さがここで運を呼び寄せたねっ!

甘味。素敵な響きだ。

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