第204話 話し合いは、慎重に
ティティはしばし考える。
うん。どう考えても話せる部分が少ない。
ティティの前世がジオルであること、またスヴァの前世が魔王であることを前提で国守との話し合いは勧められたからね。
しょっぱなから話せない内容である。
それにノアのこと。ノアが精霊のいたずらにあって、このままでは長く生きられないこと、そうならないために国守さまが調整してくれること。
これもアウトな内容が多い。
精霊のいたずらの部分、そして国守さまの調整、それは加護になるのかもしれない。
これはできれば、ヒースとブリアはともかく、東の辺境伯の息子であるルミエールには隠しておきたい内容だ。
ブルコワさまにはよくして頂いているが、ノアが精霊の加護持ちであるとバレたら取り込みを図られるかもしれない。
あわよくばティティまでも。
考えたくはないが、ブルコワさまは領主であり、貴族である。
そしてルミエールも領主の息子だ。
領地の利益を第一に考えるだろう。
今は国守さまのご威光があるから、取り込まれていないが、いつどうなるかわからない。
なるべく話せずに済むなら話したくない。
とすると、話せることは非常に少ない。
国守さまに、ゴルデバで助けてもらったお礼を言って、お土産を渡して終わりましたでは納得してくれないだろうか?
してくれないよなあ。
うーむ。
ティティは皆が見守るなか、やっと口を開いた。
「国守さまと会った時に、まずはお礼を言いました。ほら、ガンデールさまに誤解されて危機に陥った時に助けてくれたでしょう?」
「ああ、そうですね。そのお礼でこちらを訪問したのですから、そうでしょう。それから、どうしました?」
ルミエールは少しそこで気おくれしてくれるかと思ったが、全くなし。
すごいな。メンタル強いよ。
「それから久しぶりにお会いしたので、どうしていたかなど話したよ」
これも嘘ではない。ただ、前世のジオル時代からの振り返りを話していた。
主に七年前の魔法討伐時の話だったけどね。
「そうですか」
そこは深く突っ込んでこない。
親に捨てられたところを突いて、私がギャン泣きして切れて、国守さまの怒りを買ったんだから当たり前か。
よしよし。
「後は、ノアのこと」
そこで3人が居住まいを正す。
あっ。そんなに構えないで欲しい。
端折ってしか話せないから。
「ノアの身体が弱いのを国守さまは不憫に思ってくれてね、少し生きやすいようにしてくれるって。その為に少し時間がかかるので、私が西の辺境に行って帰って来るまで、国守さまが預かるって言ってくれました」
<随分省略したが、それでよいだろう>
スヴァが頷いている。
だよね。精霊が関係しているなんて話さなくてもいいよね。
「ノアにそこまでするほど、貴女は気に入られているのですね」
ルミエールがじっとティティを見つめ、感慨深げに頷いた。
「はい。ありがたいことです」
確かに。身体の弱い子は、国中にたくさんいる。精霊のいたずらを受けた子供だって、中にはいるだろう。その子一人一人を国守さまが目をかけてくれる訳ではない。
ティティの弟だからだ。
そう思うと国守さまには感謝しかない。
しかし、そこまで国守さまに気に入られてるのはなぜかは不明だ。
私なんか特別なことしたかな?
心当たりないなあ。
と、思考がずれた。
いけない、いけない。
さて、話すのは後1つ。
慎重に慎重にとっ。
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