第198話 くそ! それってのろいだろっ! 責任者でてこーい!
やれやれ、お話一段落してよかったよ。
また険悪ムードになる前に、話を切り替えよう。
「国守さま、スヴァはともかく、ノアまでお傍に寄ることを許してくれてありがとうございます」
スヴァは知り合いだったから、入れてくれたのかもしれないけど、ノアまでお傍に来られてよかった。でなければ、ノア、ギャン泣きしてたかもしれない。
よかったよ。本当。
「うむ。そこな弟は、精霊のいたずらを受けていたのでな。放っておけなかったのじゃ。其方の弟であるからな」
「精霊のいたずら?」
なにそれ? 私知らないぞ。知らない事はスヴァに聞くに限る。
「スヴァ、それってなんだ?」
「精霊のいたずらか。確か、妊娠中の女人の腹に、精霊が祝福を授けることだったと思うが」
「そうなんだ」
スヴァ、流石だ。生き字引だ。すらっと出てくるのがすごい。
国守さまも頷く。
「そうじゃの。されど、祝福といえば聞こえはいいが、それをされた赤子は、お主がいうところの聖素だったか、それを取り込みすぎて、弱って長生きできぬのがほとんどでの」
「ええ!? それって祝福じゃなくて、呪いの間違いじゃないか!」
だから、ノアは身体が弱いのか!
病弱ではなかった。いや大きな枠で考えれば病気に入るのか?
「うむ。魔素病みたいなものか」
スヴァが前足でひげを撫でる。
「なんだよ、スヴァ魔素病って」
次から次へとわからん単語がぽんぽん出て来る。詳しく説明しろ!
「魔素病とは、身の丈に合わないほどの魔素を取り込んでしまい、死んでしまうことだ。通常、魔素の取り込みは本能的な実の危険を身体が察知して、無意識にコントロールされるんだが、それが出来ない状況に陥る事を魔素病と言う」
「そう、それと類似しておる。精霊に祝福された身体は聖素のなじみがけた違いによくなるから起こる症状だ。そのうえ」
「ええ。まだ何かあるんですか?!」
国守さま勘弁してください!
「うむ、生まれてきた赤子は親に似ずに、大変見目麗しい姿で生まれてくるから、親に疎まれることも多く、更に長く生きられぬ」
「なんですか! それ! 男親に自分の子じゃねえって思われて殺されたりすんですか?! やっぱ、呪いだろそれ!」
頭にきすぎて、敬語もすっとんじまったよ! ちくしょうめ!
くそ! だから、ティティとはまったく似てなく、美幼児なのかよっ!
「だが、それらの困難を乗り越え、己が力で聖素の取り込みを成長に合わせて自在に操れれば、癒しの力や魔素を消滅させる力も振るうことが可能になるの」
「ええっ!! もしかして聖女さまって!」
「精霊にいたずらされて、生き残った精鋭であるな」
「うわあ。聖女さまって、本当稀有な存在なんすね」
そんな過酷な道を生き残って来たなんて、聖女さますげええ。
「でも、癒しの力が使えるってことで、国に奉仕しなきゃならないなんて、聖女さま、可哀そうじゃないですか?」
「まあ、聖女となるものは早めに見つけ出されて、そう教育されるのもあるし、素直な性格なものも多いので、負担には思っておるまいて。仕事さえすれば、結構大事に扱われるからな。よい暮らしはできるな」
「そうなんすか」
俺だったら、やだな。自由に生きたい。
ノアにだって自由に生きてほしい。
「聖女、聖人として生きることは、天上におわすお方の意思と関係がありますか?」
ティティはおそるおそる国守さまに聞いてみる。そこが重要だよなっ。
「いや、ないな。先程も言うたであろう。元は精霊のいたずらよ。ほとんどの精霊は義務や使命などない。自由気ままに過ごす存在じゃ。その存在自体が自然の気、聖素を高める役割をしているだけだ。精霊のいたずらから発した聖女の存在は、イレギュラーな存在じゃ。妾たちにとっては助かる存在ではあるがの」
「そうなんですね。じゃあ、ノアは好きに生きても大丈夫なんですね」
「ああ。安心せい」
「よかったです」
「だが、そなたの弟は、このままでは長生きできぬ」
「ええ!?」
「言うたであろう。祝福を受けたものは長生きできぬものが大半だと」
確かにこの旅路でもノアは高熱をだした。
「其方が常に傍におれば、其方の身が代わりに弟の聖素を調整できるだろうが、それは今の幼き身までだ。こうして見てわかる。やがてお主では対応できなくなる。それほどに其方の弟が受けた祝福は強い」
なんで俺が調整できんだよ! ってそれは後でいいっ!
くそ!! どこの精霊だよ! 出てきやがれ!! ぶん殴ってやる!!
こんな可愛いノアが死ぬなんて!! 絶対いやだ!!
ティティ、カンカンです。




