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第197話 国守さまと元魔王さま初対談っ

長めです。

 しばしの見つめ合い(にらみあい)の末。

 国守さまはふんと息を吐きだすと、表情を少し改めた。

「こやつは歴代の魔王の中でも、自分の役割をよく心得ておった。もし人として生まれていたならば、良き導き手になったであろうな。だからこそ、自らの運命に抗う道もまた、かなり模索していたな。人を傷つけず、かつ魔族を救える道を」

 それはなんと気の遠くなる道だったろうか。

 神に定められた(うんめい)

 魔王や魔族は人の為に生き、人の為に死ぬように作られたようなもの。

 その運命を退ける道を見つようと考えるなんて無謀である。

 が、生物として生を受けた以上、あがくのは当たり前かもしれない。

 魔王、魔族にとって、己が運命は理不尽極まりないものに違いない。

 自分たちは何も悪いことはしていないのに、人間が汚した大気を正常化する為に、生を望まれたのだから。

 ふざんけんなよ!って思わないほうがおかしい。

 それなのに、その憎しみを人間に直接ぶつける事もできない。

 人間に比べて、あまりに制約が多く、かつ不平等を感じざるを得ないだろう。

 人間として、本当申し訳ない。

 なんとかできれば、いいのであるが、ちっぽけな7歳の幼女には何もできない。

 すまない、魔族よ。

「妾も初めてじゃな。魔王とこうして話すのは。加えて言うなら元魔王がこうして存在しているのを見るのが初めてじゃ」

 そらそうだ。大陸の大気を正常に保つ仕組みの要として作られた魔王。

 大気中に含まれる呪素、魔素を目一杯吸収して、勇者に打たれ、その体、魂ごと、大いなる河に取り込まれることによって、大気を綺麗にするいわば部品なのだ。魔王は。

 だから、魔王の魂が輪廻に帰ることはない。いやなかったというべきか。

「ジオルよ、いや今はティティか。お主も無茶をしたものじゃ。へたをすれば、其方の魂も輪廻から外れ、消滅していたところじゃ」

「いやあ、あの時は、もうそれしかなかったんで」

 そう、元魔王であるスヴァから魔王の在り方を聞いてしまっては、放っておけなかったよ。

「それどころか、世界を歪めていたかもしれぬのだぞ」

「えっ!?」

「もし、其方の試みが上手くいかなければ、そこな小魔王がため込んでいた、呪素、魔素が偉大なる河に流されず、大気に逆流していたかもしれぬ」

「げげっ!」

 そんなにやばいとこだったの?!

「さすれば、戦争や自然災害などが各国でおこり、人が多数いなくなっていたであろうな」

 わあ。こわい。

 今になって真っ青である。そこまでとは思わなかった。知らないって、こわい。

 そしてそれを淡々と話す国守さまもこわいっ。

 しかしここはまず謝罪だっ!

「ごめんなさい!」

 ティティはがばりと頭を下げた。

 今更だけどっ。謝らずにはいられないだろう!

「ふふ。よい。世界は保たれているのだからな。それに其方もその業を今背負っているのだから、妾から言うことは何もない」

「ありがとうございます」

 よかった。怒られなかったよ。ふう。でも業って何?

「ただ一言言うならば」

 はっ。やっぱりご立腹か!?

「其方にではなく、そこな小魔王にじゃな」

 私にではなく、スヴァにだったー!!

「よく己が役割を心得、受け入れていたように見えたが、最後でまさかしでかすとはの。久しぶりに冷や汗をかいたわ」

 そっか。それでスヴァに対して国守さまの風当たりが強かったのか。納得だね。納得か?

「うむ。我も驚きである」

 スヴァ、そこで頷いてるよっ。

 すげえな。

「そなたもわかっていたであろう。そなたは理性的な魔王筆頭であったからな。ため込んでいた呪素、魔素も歴代トップクラスだったのじゃ。それが逆流すればどうなるか」

「ああ。けれど、我も死にたくなかったと強く思ってしまったのだ。ここなティティ(ジオル)(りんねてんせい)への可能性を示されて」

「そなたも生にしがみつく生物であったということか」

「そのようだ」

「ジオルも罪作りよの」

「まったくである」

「ええ!?」

 何!? なんか最後は俺が悪いって流れになっているのはなんで!?

 思わず口を突き出してしまう。

「ふふ。まったく。そのような顔もまた可愛いのう。この件についてはもうしまいにするか。天上なるお方からも特に咎めのなかったのだからの」

 そっか。そうだ。国守さまは御使いさま。

 御使い様というのは、神の声を伝えるメッセンジャーなのである。

 御使い様は人の前に降臨されているが、国守さまがいう天上なるお方、あるいは意思と呼ばれる上位の存在は一度も降臨はされていないとてもあやふやな存在なのだ。

 だから人は降臨された御使い様を信仰する。

 御使い様が言われる天上なるお方は御使い様を通して敬われている。

 御使いさまは天上なる方の代行者なのだ。

 もし天上なるお方の意思に反しているならば、たとえジオルが国守さまに気に入られようとも、国守さまは容赦なく裁きを加えるだろう。

 それがないのであれば、許された、許容されたことにほかならないのだ。

 ちなみに天上なるお方と大いなる河の流れが一緒の存在かは不明である。

 それを尋ねることはできないし、スヴァも知らないらしい。

 それを突き詰めようとも思わない。

 だって、ティティは現世を面白おかしく長生きが第一目標なのだから。小難しいことはもっと頭のよい人にまかせればいいのである。

 人間知りたがりは身を滅ぼすのだっ。

 知らないが花だっ。

 前世で身に染みたよ。うん。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

少しでも続きが読みたいっと思っていただけましたら、☆をぽちりぽちりとお願い致します!!

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