第190話 まえぶれ、ごあいさつっ
奉納祭最終日の翌日。
奉納祭目当てで村を訪れていた観光客たちが次々と馬車に乗って引き上げて行く。
いや、みんな行動早いね。
まあ、この村の見どころは奉納祭だもんね。
そのお陰で、無事に宿を確保できたんだから、文句はないよ。うんうん。
「さて、森に入りますか」
と、その前に。
教会でお祈りをすることにする。
直にお会いする前に、祭りを楽しんでしまったが、国守さまの為の祭りだからよしだろう。
マノリ村には規模に似合わず、立派な教会が建っている。
それはひとえに国守さまへの信仰の大きさの度合いを表している。
グロシルバ王国のみならず、ガルマニア大陸に神が直接降臨したことがない。すべての御業は御使いを通して行われている。その為、もちろん神への信仰はあるものの御使い様への信仰が高いのであった。人は目に見えるもの、貢献度の高いものを信じるものなのである。
その御使い様へのコンタクト場所として、教会は一番身近な場所である。
コンタクトされて、リアクションするかしないかは御使いさま次第であるが、一般人がお伺いを立てる場所としては教会が適当なのである。
ちなみにマノリ村の教会に国守さまが直接降臨したと聞いた事はない。
残念。
それはさておき。
国守さまであれば、もう近くにティティたちが来てることはきっとわかっているだろうが、ルミエールたちに見えるようにパフォーマンスするのも、物事をスムーズに進めるためには重要なのである。
私って頭がいいな。と少し胸を張る。
それに呆れたような視線を向けるスヴァだ。
ノアは何やら、姉が張り切ってるのをみて、嬉しそうにしている。
「んんっ」
ティティは咳ばらいをしながら、教会にいくらかの喜捨をして、教会の中へと入る。
教会の作りは大体同じだ。
真ん中に細長い臙脂の絨毯が引いてあり、その脇に木製の長椅子が並んでいる。
その絨毯を歩いて行くと、真ん中に国守さまの像がある。
その像は、両手に神を象徴する丸い球体を持ちつつ、牛に乗っている美人な像である。
動物の像じゃないんだよな。国守さまって動物で現れること多いと思うんだけど。それって私の前だけかな? でも牛に乗ってるってことは、つまりはそういうことなんじゃないかなあ。体裁が必要なのか。
むーん。残念。
ま、いっか。お祈りお祈りっと。
ティティはスッチャっと片膝をつくと、両手を組む。
「ノアも、お膝ついて」
「はい!」
うーん! 元気でよろしい!
2人して像に祈る。
<国守さま、今から参りますので、よろしくお願いします>
これでよし!
お祈りして、準備万端!
いざ森へ。レッツゴー!
今日はもう一話投稿します。