第189話 食べて、踊って、楽しんで!
腹もこなれた。
ティティが次に狙うは、マノリ村の名産である。
マノリ村の名産、それは果物と蜂蜜だ。
甘味料は庶民にとってはめっちゃ高い。しかしここは国守さまのお陰か、蜂蜜が豊富に取れる。それも色々な種類の。その為、王都やほかで買うよりも安価だ。
加え、祭りに際して村人、主に女性陣が色々な種類のお菓子を作って、屋台で売っているのである。
当然、それらは国守さまの捧げものとして全種類奉納済みである。
国守さまも満足なさっているだろう。
うん。私もそれに追随するぞ!
なるべく多くの菓子を買って、旅のお供にするのだ!
この村のお菓子は小麦の代わりに米粉を使うお菓子が主流だ。
小麦は税として納税する為、それよりも安価な米粉を使っているらしい。
ティティとしては小麦でも米粉でも、おいしければ文句はない。
そう、まずは味を確かめなければ!
ストックするか否か、それは味見してからだ!
さて、何からいこうかと、ノアと手を繋ぎつつ、お菓子の屋台を眺める。
と、ノアがカットしたフルーツに蜜を絡めて食べる生菓子の屋台で立ち止まった。
うん、いいね! 美味しそうだね!
「ノア、どれ食べたい?」
「あのあかいの!」
すかさず、ノアが叫んだ。
ノアが指さしたのは、定番なリリンコだ。
リリンコ。赤い皮に中は黄色みをおびた白い果実。かじると甘酸っぱい。
蜂蜜や水あめと相性抜群な果実である。
「お姉さん、それを3つください」
「あいよ!」
ほっかむりをしたおねえさんは、もち米と水をこねてやいた肌色の食べられる小さい器の上に、カットしたリリンコに特製の蜜を絡めたものを乗せて、差し出してくれた。
「あまーい」
ノアが目を輝かせて、蜜がかかったリリンコをかじる。
<甘いが、すっきりとした甘さだな>
スヴァにも皿にのせてやると満足そうにかじっている。
ティティも負けじとリリンコをかじる。
「うん! おいし!」
これは全種類買いかな!
ティティはその後も、ノアの手を引きながら、米粉クッキーや 果物が練り込んだビスケット、果物に蜂蜜絡めた水菓子、そして蜂蜜の飴を特に多く購入した。
蜂蜜の飴は、主にノアのである。
病気になった時に栄養を付けさせたり、苦い薬を飲ませた後などに食べさせるために購入した。
あ、私ももちろん食べるよ! 美味しいからね!
お菓子に加工する前の果物や蜂蜜も購入。
蜂蜜は集めた花に寄って微妙に味が異なるようで、選ぶのに苦労した。
その為、かなり懐が寂しくなってしまった。
王都などで買うよりは安いとはいえ、甘味はやっぱり高いのである。
「さて、そろそろいいかな?」
はっきり言って祭りでの目的は主に屋台の食べ歩きだ。
屋台は粗方回ったから、満足だ。
ノアの体力も心配だし、このまま帰ってもといいかなと思って、ノアを見下ろすと、やぐらの周りで踊る人たちに目を向けていた。
そっか。ゴルデバでの祭りの時には踊らなかったな。私はジオル時代、祭りで謡ったり踊ったりしたことがあるけど、ノアは踊ったことないか。
踊りたいよな。
「ノア、買い物は終わったから、踊る?」
「ノア、おどいわかんない」
「だいじょうぶだよ。適当に手とか足とか動かせばいいんだから。ほら、いこう!」
ノアの手を引いて、踊りの輪に入る。
ちょうど、2人1組で踊る曲になった。
「ほら、私のまねしてごらん」
「うん!」
ノアは一生懸命手足を動かす。
「あはは! うまいうまい!」
「ねえね! たのし!」
「そっか。よかったな!」
ノアの笑顔が、提灯の明かりで輝いている。
ああ、この子をもっと楽しい思いをさせてやりたい。
一緒に楽しみたい。いや楽しむんだ。
踊りの輪の中でノアと踊りながら、ティティはそう誓った。
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