第187話 祭りだっ! 楽しむぞっ!
ともあれ、スヴァに異議があろうとも、秋の奉納祭の期間中に村に着いたのだ。
僥倖である。
しかしそれによる弊害もある訳で。
予想はつく。そう、村の宿屋はすべて満室だったのだ。
その為、村の宿屋には泊まることができず、村から少し離れた空き地で、野宿する事になった。
「仕方ありませんね」
ルミエールも奉納祭の日程までは知らなかったらしい。
ルミエール、祭りとか興味なさそうだもんね。
「幸い、3日続く祭りの今日が最終日らしいから、明日は宿に泊まれるでしょう」
ブリアが肩をすくめてみせた。
「野宿もよいものだよ! それよりも奉納祭に参加できることをラッキーに思うべきではないかな!」
うん。ポジティブ、そしてお祭り大好きそうなヒースが、付け加えた。
なにをのんきなことをと、言いたげなルミエールの顔。
けれど、それを口に出すことはなかった。
そりゃ言えないよね。
国守さまのお膝元の村の奉納祭だものね。
このマノリ村の奉納祭、は国守さまの加護がある村として、結構有名だ。
季節ごとに行われる奉納祭目当てで、観光客が定期的に訪れる村でもあった為、村の規模の割に宿は結構多い。観光客はマノリ村の重要な資金源でもある。
この祭りでは首に色付きの布を巻くのが通例である。
その布の色は、季節ごとの奉納祭によって変わる。
その布を買って、祭りの間身に着けておくと、その季節は健康で過ごせるというご利益があると言われている。
その為、奉納祭に訪れる人はもれなくこの布を買うことになっている。
それほどは高くない。
大銅貨3枚ほどで買える。
これも村の重要な資金源だろう。
半分だか、3分の1だか、知らないが、教会へ寄付はするんだろうけども。
「祭りの屋台で、夕飯だね!」
馬だけは明日から泊まる宿屋に預かってもらった後に、ルミエールに確認する。
「そうですね。ここまで来て、お祭りに参加するなとは言いませんよ」
「やったあ!」
「ねえね、おまつりってなに?」
そうか。村では祭りなどなかったからな。ノアはお祭り知らないか。
これは真髄を教えねば!
「おいしいものを一杯食べて、楽しく踊ることだよ!」
「おお!そうだね! その教えは間違ってないぞ!」
ヒースが賛同してくれる。だよねっ。
「そうね。でも本来の目的はね、神様と御使い様にありがとうって気持ちを込めて、自分たちが作った食べものをお供えして祈るのよ。それが踊りだったりするの」
ブリアがまとめてくれた。ありがとう。
「ノアたちもおどるの?」
「そうだね! 踊ろうか?」
「ん! ノア、おどる!」
「あまりはしゃぎすぎてはだめよ?」
ブリアから注意が入る。
「「はーい!」」
ブリアの優しい注意にノアと2人手を挙げる。
さあ、祭りだ!
今の季節は秋。
そう、秋の奉納祭である。
教会主催で行われる厳かな国守への奉納は1日目の昼間に済んでいるらしく、後は夕方から夜にかけて広場に組まれたやぐらを囲んで、みんなで踊るのだそうだ。
昼間はどうしているかって?
それは夜に踊り疲れて、みんな昼に寝ているんのだよ。はは。
村の中央広場の真ん中にやぐらが組まれていて、そこから四方に紐を渡し、提灯がたくさん釣り下がっている。
うん。お祭りって雰囲気が出ている。夜でもかなり明るい。
今年の秋の奉納祭のカラーは黄色をおびた赤色である。
この季節に採れるかきかと呼ばれる果物の色である。
村の中央広場の入り口で、布を5枚買う。
ルミエールが代金を払おうとしたが、ティティは断る。
「この村までお付き合いいただいているので、これくらいは出させてください」
うん。みんなの健康を祈らせて欲しい。
せめてものお礼だよっ。
「わかりました」
ルミエールは不承不承に頷いた。
ふう。よかったよ。ここに来るまでの費用、全部出してもらっちゃってるからね。
こんな機会でないと、この美人さんはなかなか払わせてくれないからね。
「みんながこの秋の季節、健康にすごせますように」
そう願いながら、みんなの首に巻いて行く。
「ありがとう」
おう。ブリアの笑顔が眩しいね!
「小さなレディ。最高の贈り物だね!」
うん。ヒース、いつもありがとうね。
「ありがとうございます」
ルミエール、少し照れてるように見えるのは気のせいかな。
「ねえね!あいあと!」
うん! ノアの笑顔が眩しい!
<スヴァ、ごめんな。お前には長すぎるから、後で私の布を加工してあげるから>
<いらぬ>
また。スヴァたら、ツンデレなんだら。
最後に自分も首に巻いて準備完了だ。
さて、まずは腹ごしらえだ!
お腹が減った!
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