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第182話 センスって大事

少し長めです。

 馬に揺られて進む、私たち。

 今向かっているのは、ダウル村。

 ここはどうしても寄る。寄るの一択である。

 そう、この村はティティがどうしても寄りたい村の2つ目の村なのである。

 ダウル村。その村の傍の林で採れる芋。ギュウ芋。これが今回の目的である。

 なんでも、この芋、芋なのに、牛肉の味がするらしい。

 なんと、口にいれた感触もまさしく肉。目を瞑って食べたら、肉だと、100人中100人が思うらしいのだ。

 この情報をくれたカミオも断言していた。

 ここで一つ言いたい。誰がこの芋を名付けたのか。まあ。わかりやすくていいけれどもっ。

 それにしても、ゴルデバ冒険者ギルドの職員は食べ物の情報が半端ない。

 ギルドを運営するにあたり、魔物の動向を調べるのに加え、村の動向も詳しくないといけないのかもしれない。

 いずれにせよ、私にとってはありがたい情報である。

 カミオには自作の刺繍を刺したハンカチをプレゼントしておいた。

 決して賄賂ではない。

 気持ちである。


 ワクワクする気持ちを抱きつつ、お馬さんにゆらりゆられて、ダウル村に到着。

 ティティたち一行は、まずは宿をとって一休み。

 ノアに無理させてはいけないからね。

 そして十分休んだところで、ノアと手を繋いで、名物の芋料理を食べさせる店へと向かった。

「ねえね、たのしみね」

「そうだね! 期待しようね」

 頼むぞ。観光を我慢して食事を取ったのだ。私たちを驚かしてくれよ!

 向かっている店の名前はアッチラ亭。どういう意味なのかは不明だ。

 ただ面白い響きで、忘れられなさそうではある。その点では名前つけは成功していると言えるかもしれない。

 店に到着すると、一行は躊躇うことなく入店。

「らっしゃい!」

 店は名物料理を食べさせる人気店と聞いて来たが、それほど広くはなかった。

 大きな町へと旅する宿場町と考えれば、そうかもしれない。

 店内はほどほどに混んでいたが、問題なく席を確保することができた。

 スヴァの来店に一瞬渋い顔をされたが、ルミエールたちがお貴族様然としていたから文句はでなかった。うん、こういう時は助かるね。

 いかにも大衆向けの店に、お貴族様連れて来てよかったのかね。

 ちと心配になった。

 ちらりとルミエールを見たが、うん別に普通に座っている。ヒースはうん、好奇心に満ちた目をしてるね。問題なしっと。

「おねえさん! ギュウ芋丼6つ! 一つはこの椀に入れてください!」

 スヴァ専用の椀を差し出し、注文する。

 名物のギュウ芋丼。ここはこれ一択でしょう!

 大人ズも文句がないのでよしである。

「後、2、3品お勧めで持ってきてちょうだい」

 ブリア注文慣れしてるなあ。

 そうだよね。お金の心配ないなら、その注文で正解だよね。

 私とノアはきっと名物丼でいっぱいだろうけど、大人は足りないよね。

 そういえば、ヒースたちはお酒をこの道中飲んでないな。

 やっぱ、護衛を意識してくれてるのかもしれないな。

 一杯ぐらいいいと思うが、みな真面目である。

 そうして待つしばし。やってきました、ギュウ芋丼。

「うん。見た目減点70」

 テーブルに置かれた芋丼は、見た目はなんとも残念だった。輪切りにした芋とネギリという薬味が乗っているだけのちょっと貧相な丼だ。

 くんっと匂いを嗅いでみる。匂いはいい。

 食欲を掻き立てるニンニコが刻んで入っているようである。

 ニンニコは匂いが結構あるが、滋養強壮抜群のありがたい食べ物である。

 ブリアと目が合う。

 どうやら彼女も同じ気持ちのようだ。

 ヒースは、ああ! そんなに悲壮な顔をしなくても!

 気持ちはわかるけれども!

「ゴルデバの冒険者ギルドのカミオさんおすすめのギュウ芋丼です! 間違いないはずです!」

 皆に向かって宣言する。

 頼むよ!カミオさん。

「そうね」

「そうだな」

 ブリアとヒースもうんうんと頷いてくれる。ルミエールは、うん、いつも通りだね。

「それでは、冷めないうちに」

 勢いをつける為に、私が音頭をとる!

「「「「いただきます!」」」」

 ルミエールをのぞく、四人が手を合わせてから、スプーンを取った。

 躊躇いなくいったのは、まずはノアだった。

「ねえね! おいちっ!」

 満面の笑顔。

 おおっ! これは期待できるね!

 このところ、丼物が多いが、それは麦よりも米の方が安価で庶民に食べられているからである。昔はまずくて家畜のえさでしかなかった米だが、段々改良されて、酒になり、やがてそのままでも十分美味しく食べられるくらいになったのだ。

 改良してくれた人よ。ありがとう。

 他国でも米を食べる国はあるらしく、また米の形も違い、食べ方も違うらしい。

 ぜひとも味わってみたいものである。

 マージからきいた米話はさておき、私もメインのギュウ芋とともにご飯をスプーンですくい、ぱくりと一口。

「ふおおおお!」

 まさしく牛肉の感触、味である。ニンニコの香りもぐっと芋を引き立てている。

 なによりうまい! たれが絶妙だ! これは何が入っているのか?

 大人3人も、そう思ったのだろう、手が止まらない。

 ノアもにこにこしながら、ぱくぱくと食べている。

 うん。食欲もあり、良きかな。

 疲れていると食欲も落ちるからな。

 少しお高めだったか、これは納得である。

 あっという間に平らげてしまった。

 スヴァも黙々と食べている。

 うん。美味しいものに言葉はいらないね。

「ごちそうさまでした」

「ちた!」

 後をひく味だったが、これ以上は無理。

 見計らったかのように、店長おすすめ料理が運ばれて来た。

 ギュウ芋を使った野菜炒め。

 ヒース、一番に手を出していた。

 いいのか、ルミエールを差し置いて。

 食事では無礼講か。

 3人の食べっぷりを見つめながら、ノアと食後のお茶をする。

 山盛りの野菜炒めがみるみるなくなっていく。

「美味しかったですか?」

「ああ! 素晴らしいね! 野菜のはずなのに肉をたらふく食べた満足感がある!」

「そうね。ヘルシーでいいわね」

 ヒースとブリアも笑顔で頷いている。肉の味がしてもすべて具材は野菜だから、ヘルシーでいいよね。

「後はビジュアルを何とかしてくれれば、パーフェクトですよね」

「そうですね」

 ティティの意見に、ルミエールも頷いていた。

 でも、評判通りで、カミオ推薦もわかる味であった。

 カミオ、店の味は落ちてなかったよ。

 ありがとう。

「ありがとうございました~」

 店員の声を背中に受けつつ、店を後にする。

 途中の店で、果実水を購入しただけで、宿に向かう。

 ノアを休ませてあげないとね。

「美味しかったねえ」

 ノアと手を繋ぎつつ、ゆっくりと歩く。

「ん!」

 最低限の目的は達成した。

<最低限なのか>

 ノアと反対側を歩く、スヴァの突っ込みは無視する。

 ではではお休みなさーい。

 明日も美味しいものが食べられますように。

食レポって難しいですよね。。

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