第175話 使えるものはなんでも。ひひ。
我慢、我慢。寄り道しないのはノアの為。
そう言い聞かせて我慢できたのは1日だけだった。
この面白くない旅は2日が限度だ!
ノアが、私が危険? 3人もの選りすぐりの魔法士がいて、どの口が言うか!
私は絶対に次のところで、美味しいものを食べるぞ!
土産も買うぞ!
それに備えて、ゴルデバの街で色々聞いて来たのだ。
それを無駄にしてなるものか!
子供は我儘を言ってもいいはずだ!
<お主、諦めてなかったのか>
ティティの前でちょこりと馬の背に乗りながら、呆れたようにスヴァが呟いた。
<諦めるもんかよ! 一日一日目一杯楽しまねば、人生何がおこるかわかんねえんだからな!>
その為には何でも利用してやる。ひひ。ティティとノアの境遇でさえもな!
「ルミエールさま! 再度のお願いがあります!」
ぐりんと首を後ろに回し、ルミエールに訴える。
「また街巡りをしたいとのお願いですか」
再度のでわかってしまったらしい。
頭の回転が速いからな。この若様は。
「そうです!」
「だめです。訳は先日申し上げた通りです」
取り付く島もない。
だが、諦めないぞ。諦めたらそこで終わりだ!
「それでも異議を申し上げます! 確かに子供2人で出かけるのは危険かもしれませんが、3人も選りすぐりの魔法士がいるのです。どこに危険があると言うのでしょう?!」
心配というなら、私たちについてくればよいのだ!
保証しよう! きっと楽しいよ!
「しかり! 我々がいて、どこに危険がありましょうや!」
ティティの言に真っ先に反応したのは、ヒースである。
お調子者とはいえ、魔法士としての実力は十分である。
それは自他ともに認める強さである。そして本人は過剰にそう思っている。
加え、剣の腕もかなりなものらしい。
ヒースもこの旅に不満を持っていたのだろう。わかるぞ! 同士よ!
「それに、この先何が起こるかわかりません。親に山に捨てられたり、親に食料がないから放置されて死にそうになったり。だから、私は楽しめる時は逃さず楽しみたいんです!」
ぐっと手を握り締めながら、力説する。
「ねえね? どこか行くの? ノアも一緒?」
ブリアの馬の背に揺られながら、こてっと首を傾げるノア。
ブリアがティティが告げた理由に眉をよせ、ノアの可愛さにくらりと来たようだ。
そんなブリアが控えめに口を開く。
「ルミエール様、少しはいいではないですか? 急ぎの旅ではないですし」
そうだそうだ。本来なら視察はまだ先に行う予定であったみたいだし、ティティたちと一緒な為、日程は余裕を持ってあるはずなのだ。
うひひ。2人は陥落したぞ。よしよし。後、もう一息だっ!
残りはルミエール、ただ1人!
「ダメです」
バッサリである。ルミエールにはティティの説得もノアの可愛さも、全く効いていなかった。
くう。手ごわい。
ならば、最後の印籠を渡してやろう。くくく。
「ブルコワ様も旅を楽しんで欲しいと言っていました。そしてそれを手助けしてくれると伺いましたけど?」
それに片眉をあげて、ルミエールは目を瞑ると大きなため息をついた。
「仕方がないですね」
よっしゃあああああ! 旅路の飲み食い、観光をゲットだ!
ひゃほう!!
ティティが悪い顔してます(笑)