第173話 ここに至るまでも大変だった。でも負けんぞ!
という訳で、旅立つ前に、収納袋を持っているのをルミエールに打ち明けていた。
それとともに、アイテムボックスや絶対禁句の亜空間よりは危険度は低いものの、収納袋持ちであるのは、隠したいとお願いした。
旅の同行者には知っておいてもらわなくては不便だが、周りに知られれば、盗まれたり、収納袋ごとティティが攫われたりする危険があるからである。
隣で聞いていたヒースとブリアの2人は口留めにはすんなり同意してくれた。
ルミエールは傲然とこう宣った。
「収納袋が2つ。ならば、非常時に備えて、荷物は2つに分けておきます。いいですね」
そう、彼は効率の為なら、何でも利用する男であった。
そして領主の息子、収納袋は普通に持っていた。
ルミエールは早速荷物を2つに分けて、その1つ分をティティに収納させたのである。
ちなみに収納袋は持ち主にしか使えない。ティティは知らないが、買う時に持ち主登録するらしい。国守さま特製の収納袋はどうか知らないが、ティティは問題なく使えるので、問題ない。所詮は借り物である。
それよりも、収納袋持ちであるのを秘密にしてくれるんだろうな! ルミエールさんよ! ちゃんと返事してから、話を進めてくれよ!
<大丈夫だろう。そやつとて、無駄にお主を危険にはさらすまいよ>
いつも冷静な指摘ありがとう、スヴァ。
スヴァがそういうなら、よしとするか。
ちなみにスヴァのことは全面的に秘密である。ノアにも話さない。
3人と別れた後で教えるつもりである。
ごめんな。ノア。
しかし、早くも主導権はティティにはまったくない。
わかってたけどね。
「ねえね?」
がっくりしたのがわかったのか、ノアがついと繋いでいた手を引く。
金髪に金の瞳。百人が百人認める美幼児である。くそ親父はもちろん、母親にもまるで似てない。
「ノア」
可愛い。うちの子めちゃ可愛い。心配そうに眼を潤ませているのもグッドだ。
思わず抱きしめてしまう。はあ。癒される。
「遊んでないで馬に早く乗ってください」
「は、はい」
言葉は丁寧なれど、全く丁寧さを感じない。ある種すげえな。
国守さまの愛し子とわかった上でも(ちなみに私はあまり信じていないが)、態度はあまり変わらない。
それは私にとってはありがたいけどね。
おお。ぐずぐずしてると、また何か言われそうだ。
ティティは渋々ルミエールの馬に乗ったのだった(←今、ここ)
はあ。思い返してみても、もやもやする。
それにだ。ティティはルミエールの馬に同乗することになってしまったのにも更にもや度が上がっている。
今回の視察の旅は馬3頭で行くことになったのだが。
当然この体では、ティティは1人で馬に乗る事ができない。
ジオル時代は馬に乗れたが、このティティの身体では練習してないし、チビが一人騎乗は余程慣れてないと難しいだろう。
何せ小さすぎる。したがってノアも無理。スヴァは獣の姿では論外である。
その為、ルミエール、ヒース、ブリアのそれぞれの持ち馬に便乗させてもらうことになったのだ。
だが、言いたい!
私はブリアの馬に乗りたかった! ルミエールの馬は一番避けたかった!
なのに。ルミエールが独断で決めてしまった。
ヒースは何かあった時の為に、誰も乗せない。
ノアはブリアに乗せてもらうことに。そして残ったティティとスヴァはルミエールに乗せて
もらうしかなくなった。
ブリアの馬がスヴァを怖がったのも一因である。
気配を殺したのだが、どうしても落ち着かなかったのである。
元魔王様だもんな。馬にはわかるのかもしれない。
気配を殺しているのにそれでも怖がるとはと、スヴァは妙なところでブリアの馬に関心していた。
ルミエールの馬は、主人と同じで神経が太いのかもしれない。全く動揺しなかった。
ちなみにスヴァは走ってついて行きたがったが、それでは進行が遅れるとのことで却下になった。却下したのはもちろんリーダー、ルミエールである。
美人さんとお近づきになれるのは、やぶさかではないのだけど、どうもこのお方は曲者の匂いがぷんぷんするので、あまりお近づきになりたくない。
遠くから見ているだけにしたい。なのに最接近。人生ってままならないね。
「はあ」
思わず大きなため息が出てしまう。
「おや、もう疲れたのですか? もう少し頑張ってください。休憩地まではもう少しあります」
ルミエール、労わっているようで、労わってない。
計画遵守。お堅い奴め。
しかし、私はここで宣言しよう!
この窮屈な境遇でも楽しんでみせよう!
だって、ティティになって、初めての長旅である。
負けないぞ!
おー!!
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