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第169話 ああっ マジ?! ありがたいけどっ けどっ

 とうとうゴルデバを出発する日がやって来た。

 デルコやマルコ、リッシュやステラさん、そして冒険者ギルドのみんなにも挨拶は済ませた。

 みんな別れを惜しんでくれたけど、笑って再会の約束をした。

「いよいよ、出発するのか。この町は十分楽しんだのか?」

「はい。それでもまだまだ見たいところは沢山ありますが、それはまたこの地に来た時の楽しみにします」

「その時には、この地ももっと今よりも回復していよう。次に来た時にも、必ず城へ寄れ」

 ティティとノア、そしてスヴァは旅支度を終え、ヒースとブリアとともに、最後のご奉公とばかりに、ゴルデバ心臓である城を訪れた。

 領主が約束してくれた紹介状を受け取る為である。

 誰か下っ端の文官さんにでも預けておいてくれるものだと思っていたティティだったが、城に到着するなり、あれよあれよと応接室に通され、領主ブルコワが待ちうけていた。

 そして今に至る。

「ありがとうございます。お世話になりました」

「したあ」

 隣に座るノアもぺこりと頭を下げる。

「元気になったようで、よかったの」

 ノアを見て、ブルコワが愛好を崩す。

「あい!」

 ノアが元気に両手を挙げて答えた。

 よし、後は紹介状をもらって退散するぞ。ブルコワが座るソファの後ろに立つ、ルミエールの格好については無視だ。無視した方がよいと直感が告げる。

「それじゃ、紹介状をもらって私はそろそろ失礼します。早く行かないと馬車に乗り遅れるので」

 そう迷ったが、結局馬は買わなかった。世話も大変だし、維持費もかかるしね。

「心配ない。馬車に乗る必要はないからの」

「え」

 嫌な予感を振り払い、そっと尋ねる。

「な、なぜですか?」

「実はな」

 ブルコワが全開の笑顔で告げる。

「ルミエールに、ティティがこれから行く西の辺境領に視察に行ってもらう事にしたのだ。この時期東西交流を兼ねて毎年行っているのよ。今年は我らがあちらに行く番なのだ。ティティの護衛も兼ねて、今日一緒に出発するのもよいだろうと、準備して待っておったのだ。移動は馬で行うから、馬車は不要じゃ」

「わ、私は1人で馬に乗れないですよ?」

 ジオルは乗れるが、ティティの身体ではまだ試してない。乗れないことにしておく。

「ルミエールに乗せてもらえばよい」

「ノ、ノアもスヴァもいますし。そこまでご迷惑はかけられませんから!」

 なんとかしても断りたい。

 気軽な旅が、緊張の旅になってしまう。

「そこも考えてある。ヒース、ブリア」

「はい」

 呼ばれた2人がルミエールの脇に立つ。

「ルミエールの補佐として、この2人も同行する。ノアとスヴァはこの2人の馬に乗ればよい」

「ええええええ!」

 聞いてないよ! 昨日のしんみりお茶会はなんだったのか。

 気になってはいた。気になってはいたんだ。ヒースとブリアが旅に行くような恰好をしていたから!

 ルミエールの格好もだ。あえて突っ込まなかったのに!

 いつもなら、文官のような服をぴしりと着ているのに、マントを付け、動きやすい恰好をしているからおかしいとは思ったんだよ。

 ヒース、ブリア! せめて2人からは早めに聞きたかった。

 じとりと2人を睨んでしまうのは仕方ないだろう。

 それに困った顔で答えたのばブリアだ。

「ごめんなさい。黙っていろとブルコワ様に言われて」

「はは。驚いたであろう?」

 驚いたどころではない。この場にひっくり返りたい。

 気楽な旅が、視察団の一員なんて、楽しみ半減だよ。

 なんとか断れないものか。

「あの、大変ありがたいお話ですが、そこまで甘えるのは流石に心苦しいです」

「ティティ」

「はい」

 笑顔を見せていたブルコワが眉に谷を作って、こちらを見る。

 ごつ怖い。

「お前はまだ小さい女の子だ。冒険者とはいえ、護衛もつけずに1人で行かせるのはやはり心配なのだ。私の憂いをなくすと思って、一緒に行って欲しい」

「う」

「それに、ノアもおる。何かあったら、1人で対処は難しかろう?」

「え、あ」

「視察はもともとする予定であったのだから、遠慮はいらぬ」

「で、」

「ルミエールの剣の腕は上の兄二人には及ばぬものの、十分に強い。勿論魔法もな。ヒース、ブリアもだ。行きの安全は保障しよう」

「でも! ルミエール様は私がお好きではないかと! 嫌いな人間と旅をするなんて、ルミエール様がご迷惑だと思います!」

 そうだ。ルミエールはティティが嫌いだった筈である。

 一縷の希望をこめて、ルミエールを見た。断ってくれ。

「いえ。私は構いません。ティティ貴女といると楽しそうですから」

 くっ。やっぱりか。でなければ、旅支度なんてしてないよね。わかってた。わかってたけど。どういう心境の変化か。いや、嫌われてないのは嬉しいけどさ。

「はは。こやつがこんな事をいうのは珍しいのだ。ぜひとも一緒に行ってくれ」

「は、はあ」

 これはだめだ。もう決定事項のようだ。

 何が目的だ。いや、目的はないのか。本当に視察の時期なのか。それに親切心がプラスしただけなのか。どちらにしてもティティはノアとスヴァとのお気楽な旅を諦めた。

「ありがとうございます。とても心強いです」

 ティティは内心のしょんぼりを隠しつつ、大人になって、頭を下げた。

気楽な旅、破綻(笑)

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