第168話 用意は万端 前夜です
祭りが去った翌日。
ヒースに屋敷に旅の荷物を配達する許可をもらって、ティティとノア、そしてスヴァは下町の市場で、買い物をしまくった。食材のみならず、鍋などの調理器具、保存容器も大量に購入。出来合いの総菜、串肉、混ぜご飯、特産の米も買った。
そのほか、旅に必要なテントや寝袋、毛布などなども買った為、懐が少し寂しくなったが、初期投資としては仕方がない。まだEランクなティティだ、今回のように美味しい依頼はまずないだろうが、地道に稼いでいけば、生きていけるだろう。
買って来たものは、すべてを亜空間に収納して、持つのは、鞄1つである。
ヒースやブリアは大量の荷物を見て、どうやって運ぶのかと聞かれたが、それは国守さまからもらった収納袋に入れると言ったら、納得してくれた。
収納袋は国守様にお返しするつもりだけど、そこまで言う必要はない。
ヒースたちとはこの地でお別れなのだから。
旅のお供は、ノアとスヴァ。
身軽な旅である。
その旅立ちもいよいよ明日に迫った夜、ヒースとブリアとティティは、ティティの客室でお茶を飲んでいた。
この部屋で過ごすのも最後である。
ノアは明日も早いということで、もう就寝している。
「ヒースさん、ブリアさん、本当にお世話になりました。特にヒースさんには、こうして屋敷にも滞在させてもらって、本当に助かりました」
「小さなレディ、それはもう言わないでくれ。こちらこそだよ。聖力循環について教えてもらったのは何にも代えがたいものなのだからね。君は私たち恩人だよ」
「大げさですよ。私は知っている事をお話して、少しお手伝いしただけです」
本当にそう。最後までお手伝いできないのが、心残りである。だからせめて2人がそして魔法士のみんなが長生きできるよう祈っている。
「ティティが旅立つのはとても残念、仕方がないわ。それがティティの望みなのだから。でも、ここに戻って来るわよね」
ブリアが乞うように囁く。
「もちろんです。お2人にはまた会いたいですから。その時にはどのくらい、聖力が動かせるかとか聞かせてくださいね」
「よい報告できるように、がんばるわ」
「ああ、任せてくれたまえ。私は努力の第一人者と呼ばれる男だよ。きっと素晴らしい成果を一番に君に聞かせられる筈だ」
いや、一番には無理でしょ。私明日ここを旅立ちますから。でも、突っ込まないよ。気持ちは嬉しいからね。
「楽しみにしてますね」
この大げさな言い回しもなくなると思うと寂しい。
「ああ、そうだ小さなレディ、明日出発するにあたって、城に寄って欲しいと、ブルコワ様より伝言を受けたよ」
「ご領主さまが? なんでしょう?」
「何か渡したいものがあるとか言っていたよ」
ティティは顎に手を当て、考える。
「ああ、そういえば、紹介状を書いてくれると言ってました。それかな」
多分あってるだろう。よかった。また何かあるのかと思った。
「わかりました。明日出発する前に。登城します」
「それなら、一緒に行こう。当分一緒には登城できないからな」
「ありがたいです。では、明日よろしくお願いします」
さあ、いよいよ明日、この街をでる。
前途洋々でありますように。
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