第155話 紹介するよ
「おい! どこへ行ってた!」
ところ変わってティティがいるのはドリムル武器屋。
その扉を開けて入った途端、デルコがどかどかと近づいてがしっと肩を掴んだ。
この反応は仕方ないかもしれない。
すぐに顔を出すような事を言っておきながら、植物スライムの件があって、ずっと顔を出せなかったのだ。
今日は、ヒースやブリアはお仕事で登城し、ティティは体力も回復し、体調も戻ったので、こうして下町に弟を連れてやって来たのである。
ノアの体調も、ティティが倒れること2回、それの回復に費やした日時で回復して来ていたので、、こうして連れてくることもできた。不幸中の幸いである。
ノアも大分回復したし、カレドニア家屋敷からのお暇するむねをヒースに申し出たのであるが、この街を出るまでは、屋敷に滞在をと願われてしまった。
ティティが倒れるほどに2人に協力したことを気にしているらしい。絶対譲らないぞと気持ちがヒースとブリアの顔全面に出ていたので、お言葉に甘えて、ヒースの屋敷に滞在続行中なティティとノア、そしてスヴァである。
今日も下町まで行くと言ったら、家の馬車を使ってくれとヒースに言われたが、お断りして、歩いて来たところである。貴族の馬車で来たら、目だって仕方がない。
それにノアのリハビリも兼ねている。
ノアはあんなに消耗していたのに、この一週間ほどでかなり回復を見せている。
子供ってこんなに回復が早いものなのか?と疑問に思うほどだ。
スヴァに聞いてみたが、わからないと答えながら、何かを考え込んでいた。
気がついたことがあるなら教えてくれと言ったのだが、まだ話す段階ではないと断られた。
ちぇっ。
「おい! なにとか言わんか!」
「ああ、ごめんデルおじ。私ももっと早くここに顔出そうと思ってたんだけど、色々立て込んじゃってさ、本当ごめん」
「ふん。お前も冒険者だからな。色々あるか」
デルコは少し機嫌を収めてくれたようだ。
よかったよかった。
「今日は、紹介したい子がいるんだよ」
「あ?」
怖いよっ。デルおじ。ノアが余計怖がるからっ。
デルコの強面の顔と大声に、ティティの後ろにひゅっと隠れてしまったノアを引っ張り出して、デルコの前に差し出す。
「紹介する。この子、私の弟のノア、よろしくね」
「弟?」
「ぴ!」
じろりとデルコに見下ろされたノアは、ティティにしがみつく。
「もう、睨まないでよ。ただでさえ怖い顔なんだからさ」
「睨んでないわい。地顔じゃ!」
「ノア、このおじさんの顔、ごっつくって怖いけど、とっても優しい人だから、大丈夫だよ」
「おまえ、言いたい放題だな」
「えへへ、でも優しいのも本当でしょ?」
「ふん」
もう、照れ屋な親父だ。
「顔出せなかったのは、この子のせいか?」
「それもあるかな。そのほかは詳しくは言えないんだけど」
それで何かを察してくれたらしい。
「そうか。まあ、元気でやっとたんなら、いいわい」
「ありがと、デルおじ! 一段落できて、真っ先にデルおじのところに来たんだよ! 冒険者ギルドにもまだ顔出してないんだから!」
「ふ。どうせ、鉄製の水筒ができてるか気になって早く来たんだろうが」
「バレた?」
だって、出来上がり早く見たいじゃないか。
久々デルコ登場。