第152話 起きろ
<起‥きろ>
んん。なんだ? うるさいな。
<起き‥ろ>
もう少し休ませてくれ。身体がだるいんだよ。
<起きろ!! 目を覚ませ!! 死にたいのか!!>
「ほわっ!!」
地を這うような低音怒鳴り声に、ティティはぱちりと目を覚ました。
ここはどこだ?
ぐるりを目を回す。ああ、カレドニア屋敷のティティにあてがわれた客間か。
<やっと目覚めたか。早く起きて、食事をしろ。でないと、身体が持たんぞ>
スヴァが目の前にぬっと顔を出した。
「わたし、どうしたんだっけ?」
<覚えておらぬのか? お主は庭で倒れたのだ>
ああ、そうか。確かカレドニア屋敷の裏庭で、ヒースの聖素を掴む練習を手伝ってて、限界ギリギリの聖力を放出したんだ。それで、倒れたと。
うーん。半端なく、身体が重い。そしてぐらぐらする。
これは早急に飯を食わないと。
ベッドの上で、もぞりと動いて気づく、右半身に僅かな重み。
見ると、そこには頬に涙の跡を多大に残し、眠る弟の姿。
「ああ、不安にさせちゃったか」
倒れた姉にしがみつく。また手からすり抜けないようにしっかりと。もう離さないというように。
「ごめんな」
そんな弟を起こさないように、慎重にベッドを抜け出す。
「うわ。真っすぐに歩けねえ」
誰かが着替えさせてくれたのか、寝巻だ。
「今、何時だ?」
いや、それよりも今は飯だ。
とても食堂まで歩けそうにない。
燃料がエンプティである。
なんとか、自室の扉に辿り着くと、音がしないようにそっと開ける。
すると、そこに丁度よくメイドがこちらに向かって来ていたところだった。
メイドはティティに気づくと、足早に近づいてきた。
「目が覚められたのですね!」
「はい。ご心配おかけしました」
「お身体は大丈夫でしょうか?」
「あの、その」
起きて早々、飯を持って来てくれとは言いづらい。
と逡巡した時、ティティの腹が大きく鳴った。
どうやら、腹は遠慮がないらしい。
「まあ! お腹がすいてらっしゃるのですね。すぐに消化のよいものをお持ちいたします」
クスクス笑いながら、メイドは踵を返した。
「あ、あの!」
その背中に、咄嗟に声がでた。
「何か」
「沢山用意して欲しいです。できれば肉も」
くっ! 顔が熱い。でも、言わねばならなかった。生きるか死ぬかだ。
メイドはそんなティティを微笑ましそうに見つめて行った。
「畏まりました。少しお待ちを」
頼むね。メイドさん。なるべく早くお願いします。
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